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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<<2004年7月22日掲載>>

マラリア:解決策は「家」にあった−蚊帳
<シエラレオネ>

クルーベイを流れる川で遊ぶ子どもたち

 ザイナブ・セサイはシエラレオネの首都、フリータウンにある大きなスラム、クルーベイを歩きながら、排水路を指差しました。「大雨が降ると、この水路はあふれてたくさんのゴミが流されてくるの。そして汚物が家の中に入ってきて、多くの問題が起こるの」と彼女は言います。

 スラムの道はとても狭くて滑りやすく、いつも腐ったゴミの臭いとキャッサバの葉を料理する香りが立ち込めています。子どもたちはこの汚い川の中で、トリガイの殻や他の「価値のあるもの」を探します。目の前の豚を追い払いながら、ザイナブは7200人が住むコミュニティが直面している問題について話してくれました。

 クルーベイは、汚れた空気と水がもたらす病気によって深刻な危険にさらされています。フリータウンにある2つの水路は街の上流から汚物を運んできます。「ここには蚊がとってもたくさんいるの。川の水が人や動物のうんちや動物の死骸を運んでくるからよ」とザイナブは言います。

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エディスの家。ベッドの上にかかっているのが防虫剤処理済みの蚊帳

 ザイナブは14ヶ月の赤ちゃんがいる妹のためにわずかなたくわえを使って防虫剤処理された蚊帳を買いました。「私の分を買う余裕はないわ。妹と彼女の赤ちゃんは私がいないと生きていけないの。少なくとも、ふたりは蚊に刺されないようにしないと。妹にはいつも言っているの。蚊に刺されないようにしなさい。刺されたら死んでしまうのよ、と」

 地域の保健員、チャールス・ケムベと保健所のスタッフは、クルーベイでマラリアの発生を抑える活動に力を尽くしています。しかし容易な仕事ではありません。「クルーベイには保健センターがありますが、定期的に医療ケアを受ける人は多くありません。それは子どものいる女性も同じです。高い治療費を払わなければならないのでは、と思っているの」シエラネオネの保健施設の多くには、政府が薬と治療にかかる費用に助成金を出しています。「問題はこれらの人々は政府がすべてのものをただで配るべきだと信じていることです」

 保健教室が開かれた後でさえ、保健センターを訪れる住民はほんのわずかです。「でもマラリア対策は家庭でできるのです。防虫剤処理された蚊帳の中で眠ればいいだけなんです。でも、クルーベイの住民全員に配るだけのネットがないのです」とチャールスはなげきます。

 10代のお母さん、エディス・コールは、ネットを手に入れることができた幸運な女性のひとりです。保健センターで無料でもらいました。エディスの赤ちゃんはマラリアから回復しつつあります。当初は、命を落としかけたそうです。「マラリアだってわかっても、夫にも私にも、娘を病院に連れて行くお金は無かったの」

 しかしエディスは希望を失いませんでした。何をやってもらえるのか、何か出来るのか知らないまま、彼女はコミュニティの診療所に行きました。「治療費がいらないことを知って、私は恥ずかしさでいっぱいになったの。診療所では薬までくれたのよ。あれから、私はセンターに定期的に行くようになったわ」

 彼女も、他の多くのお母さんと同じように、センターではお金が無ければ治療が受けられないと思っていました。「赤ちゃんがマラリアにかかっていることは分かってたの。でも診療所が何をしてくれるのかわからなかったから、行きたくなかったの。センターがなかったら、この子は死んでいたかも」

 シエラレオネでは、毎年、1000人中316人の子どもたちが5歳の誕生日を迎える前に亡くなっています。マラリアは、子どもがかかる病気の主要な原因(50%)であり、死亡原因(33%)でもあり、子どもたちの成長にも重大な影響を与えています。妊娠中のお母さんにも貧血、栄養失調、出産前後の死亡などの深刻な影響を与えます。妊娠中にマラリアにかかると未熟児が生まれたり、流産や死産の危険性が高くなります。

 今年、ユニセフは4万の防虫剤処理済の蚊帳をシエラレオネの女性と子どもたちに配りました。

 チャールス・ケムベは、エディスを地域での活動に巻き込んでいきたいと思っています。投薬治療と防虫剤処理済の蚊帳が、マラリア対策に有効なことを知っているからです。

 エディスの言葉です。「保健員の皆さんには本当に感謝しているの。ここにいるすべての人に、もし赤ちゃんが病気になったら診療所に行くように言いたいわ。もし私たちが自分で自分のことをちゃんとすることができたら、多くの子どもたちが死なずに済むのだから。彼らは私の赤ちゃんの命を救ってくれたわ。だからは私も、より多くの子どもたちの命を救うお手伝いをしたいの」

2004年7月9日
ユニセフ・シエラレオネ事務所
アレキサンドラ・ウェスタービーク

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