公益財団法人日本ユニセフ協会
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アフリカ干ばつ緊急募金 第48報
“十分に食べられない時期”の到来

【2012年2月22日 チャド・ンジャメナ発】

© UNICEF Chad/2012/Tidey
チャドのボル近く。ユニセフの支援で開かれている診療所で、重度の急性栄養不良だと診断されたアブドゥウちゃん(3歳)。アブドゥウちゃんの体重は、母乳を飲んでいる生後9ヵ月の弟とほぼ同じ8キロしかなかった。

チャドのラク州ボル町の郊外にある診療所では、アダマ・アブドゥライさん(30歳)の6人の子どもの一人のアブドゥウちゃん(3歳)が、重度の急性栄養不良で治療を受けていました。アブドゥウちゃんの体重はわずか8キロ。生後9ヵ月の弟の体重とほとんど変わりませんでした。

アブドゥライさんは、幼い弟には母乳を与えられましたが、アブドゥウちゃんやもっと大きな子どもたちを十分に食べさせるだけの金銭的な余裕はなかったと語ります。

「とうもろこしはとても高くて、食べものを毎日買うことができません。ですから、何か食べられる時もあるし、何も食べられない時もあるんです。」「今年、私たちの農地では、収穫がありませんでした。どこにも収入源がありません。」アブドゥライさんはこう話し、昨年、食糧価格が高騰し始めてから、夫が仕事を探しに出て行ってしまい、問題をさらに複雑にしていると話しました。それ以来、アブトゥライさんは、夫に会っていません。

“十分に食べられない時期”の到来

多くの専門家や各国の政府高官が、アフリカ西部・中部のサヘル地域に広がりつつある食糧危機や栄養危機に警鐘を鳴らしています。2011年の雨不足と不作の影響で、今年の“飢えに苦しむ時期”−食糧備蓄が減少し、人々が十分に食べられない時期−が、過去数年間で最も深刻な状態になることが予測されています。通常、4月から9月が、飢えや作物の不作に苦しむ時期ですが、今年は、多くの地域が、既に深刻な状況に陥っています。

多くの世帯が、作物を十分に育てられず、自分たちが食べる量でさえ十分に確保できない状況です。元々人口の62パーセントが、国際的な“貧困線”の1日1.25米ドル未満で生活しているチャドでは、こうした状況は、数千世帯の人々、特に、おとなに比べて、栄養不良に関連する重度の合併症を引き起こす可能性が高い子どもたちが、命の危険に脅かされていることになります。

栄養不良は、それ自体、命を脅かすものですが、子どもたちが下痢性疾患や皮膚感染症、呼吸器感染症といった疾患に陥るリスクを高める要因でもあります。ユニセフは、今年、チャドだけで、12万7,000人以上の子どもたちが、重度の急性栄養不良に対する治療が必要な状態に陥ると推定しています。また、慢性的に栄養上の“危険域”の状態にあるチャド国内のサヘル地域に住む人々の間の全急性栄養不良率(GAM)が、今年、さらに悪化することが懸念されています。

ユニセフ・チャド事務所のマーセル・オウアタッラ副代表は、最も大きな被害が、チャドの最も弱い立場の子どもたちに及んでいると強調します。「食料備蓄が不足し、市場の食糧価格が2〜3倍に跳ね上がってしまうような現在の状況は、貧しい人々の生活に、深刻で破壊的な影響を与えています。」「この影響を受けている人々は、かつてから、基礎的な医療・保健サービスの恩恵をあまり受けられず、慢性的な栄養不良に陥っている人々なのです。ですから、食料供給の問題は、ほんのわずかなことでも、人々の命に関わる問題なのです。」

“食べさせなければならない人”の増加

© UNICEF Chad/2012/Tidey
食糧価格が高騰したため、チャド・マオの市場には、買えるようなものがないと説明するミリアム・モウスタファさんと娘のゼナバちゃん(2歳)。

また、リビアで働いていた何万人もの人々が、内戦を期にチャドに帰還。既に金銭的に困窮していた多くの人々が、さらに深刻な事態に追い込まれています。人々の帰還とそれに伴う(リビアからチャドへの)送金の停止。お金は減る一方なのに、食べさせなくてはならない人の数が増えている状況です。

重度の急性栄養不良の治療を受けているゼナバちゃん(2歳)のお母さんのミリアム・モウスタファさんも、市場の食料価格は上昇し続けていると話します。世界食料計画(WFP)によると、多くの人々が借金を増やす一方、リビアからの送金が無くなったために、身の回りの物を売る人も出始めているとのことです。

ユニセフは、チャドの子どもたちの支援ニーズの高まりに応え続けるために、1,880万米ドルの支援を国際社会に求めています。ユニセフは、重度の急性栄養不良に陥っている12万7千人以上の5歳未満児の治療のほか、栄養状態の監視システムの強化、微量栄養素欠乏症への対応、適切な乳幼児の食事習慣の促進などの活動を展開しています。また、200万人の子どもたちに、命を守る予防接種とビタミンA補給剤提供するべく、支援の拡大を目指しています。

事態は深刻です。しかし、今行動することで、守られる命があります。