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ライブラリー 報告会レポート

子ども買春の根絶に向けて〜日本の旅行業界の取り組み

  • ■日時:2013年3月14日(火)
  • ■場所:東京・港区高輪ユニセフハウス
  • ■主催:一般社団法人日本旅行業協会(JATA)
  • ■CSRセミナープログラム
  1. 主催者挨拶
    一般社団法人 日本旅行業協会 総合企画部長 米谷寛美
  2. 講演(1)「知らぬ間に犯罪に巻き込まれないために」
    原 幸太郎 警察庁生活安全局少年課 児童ポルノ対策官
  3. 講演(2)「企業視点での活動の意味、社会の課題解決に向けて」
    吉田 奨 ヤフー株式会社 制作企画本部ネットセーフティ企画室 室長
  4. 講演(3)「子どもの権利と企業活動の原則—コードプロジェクトを事例に」
    公益財団法人 日本ユニセフ協会 アドボカシー推進室
  5. 質疑応答
  6. 閉会挨拶
    早水 研 公益財団法人 日本ユニセフ協会 業務執行理事 専務理事
(C)日本ユニセフ協会
© 日本ユニセフ協会

2005年に日本国内で発足して以来、東日本大震災などを挟み、その活動がやや停滞していた「子ども買春防止のための旅行・観光業界行動倫理規範(コードプロジェクト)」の再活性化を目指し、2013年3月14日(火)、東京都港区のユニセフハウスで、一般社団法人日本旅行業協会(JATA)主催のセミナーが開催されました。

約3年ぶりとなる今回のセミナーでは、近年JATAが、「グローバル視点」の重要性と「新たな価値創造」を呼びかけていることを踏まえ、『持続的な企業発展のために旅行会社が取り組むべきCSRとは』というテーマを設定。旅行会社約30社のほか、内閣府、観光庁、NGOから50名を超える方々に、児童ポルノ問題に取り組む日本のIT企業の事例などの紹介を通じて、日本国内では“慈善活動”として捉えられがちなCSR(企業の社会貢献)活動を、持続的な企業発展そして産業全体の発展の好機やツールとして捉え直すことが提起されました。

「お客様を守るために」

JATA総合企画部長の米谷寛美氏は、「お客様の旅行先地において子ども買春が行われているという現実を前に、旅行会社やそのお客様が直接関与していないから“関係ない”と放っておいて良いのだろうか?」と、冒頭の挨拶の中で参加者に問いかけられました。

米谷氏はまた、「旅行先地で子どもの権利侵害が実際に起きている、また、もしかしたらお客様も子ども買春という犯罪に知らずと巻き込まれてしまうかもしれない。社会の宝である子どもを守るためにも、また旅行業を阻害する要因やリスクを除外するためにも、旅行業にしかできない方法で積極的に子ども買春防止に取り組み、その活動をしっかり国内外で発信していくことが大事だ」と説明。「日本の旅行業は子どもを守る活動に取り組んでいるのだと世界に誇れるようにしたい、そのためにすべてのJATA正会員が参加するように全業界を挙げて取り組んでいきたい」と、活動の強化への決意を述べられました。

児童ポルノ〜日本企業の取り組み

(C)日本ユニセフ協会
© 日本ユニセフ協会

今回のセミナーでは、“慈善”としてではなく、事業を通じて事業の舞台となるコミュニティの経済や社会状況の改善に寄与し競争力も高める経営・事業戦略としてのCSRの事例として、日本国内でも深刻化する児童ポルノに対する日本のIT企業の取り組みが紹介されました。

児童ポルノの現状や対策に関する警察庁の原幸太郎氏の説明を受け、インターネット上の児童ポルノ画像・映像の“ブロッキング”に必要なアドレスリストを作成・提供するインターネットコンテンツセーフティ協会(ICSA)事務局長でもあるヤフー株式会社の吉田奨氏は、自社のサービスが青少年も安心して利用できるものとなるよう悪用防止対策などを行っている点や、児童ポルノ流通対策としてのブロッキングが、民間企業のイニシアティブで実施・運用されていることを説明。「こうした活動は、CSRとしてやっているのではありません。“良いことをしている”という自社アピールのためでもなく、自社の持続的な成長のためにやっているのです」と、“本業を通して本業領域で”取り組むことの重要性を訴えられました。

また、警察庁の原氏も、児童ポルノ撮影のための国内外の移動には「旅行」が関わっていること、あるいは旅行ツアー客が旅行先地で子ども買春に関与し捜査当局に身柄を拘束された場合は、現地や日本国内での報道、国内外からの非難により企業イメージが低下する恐れがあることも説明。「旅行会社も児童ポルノや児童買春と無縁ではなく、これらの子どもに対する犯罪防止に配慮する必要がある」と訴えられました。

子どもたちも顧客

日本ユニセフ協会からは、アドボカシー推進室担当者が、昨年3月にユニセフなどがまとめたレポート*から、「本業を通じて子どもの権利実現をはかる」ことこそが長期的な企業の価値を創造すると説明。同レポートの発表会に参加していた欧米の投資会社代表の「企業にとって子どもは顧客であり、社員の家族であり、年少の従業員であり、将来の社員であり、将来のリーダーである。子どもを搾取することが企業にとって将来にわたるリスクとなるので、投資先を選ぶ時は、その企業が子どもたち(の問題)にどのように向き合っているのかが重要な情報になる」というメッセージや、“子どもへの投資は未来への投資”という視点に立ったドイツでの官民一体となったコードプロジェクトの取り組みを紹介。早水研専務理事が、子どもの権利の実現を企業の本業の理念に位置付けたコードプロジェクトの更なる発展のために、旅行業関係者のお力添えをお願いしました。

*‘Children’s Rights and Business Principles’ (ユニセフ本部HPより)

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