メニューをスキップ
財団法人日本ユニセフ協会

シンポジウム

子どもポルノサイトの根絶に向けて 〜スウェーデンのブロッキングの 取り組みと日本の課題〜

日本ユニセフ協会、駐日スウェーデン大使館、ECPAT/ストップ子ども買春の会、ECPATスウェーデンは、3月29日(木)、駐日スウェーデン大使館(東京)にて、シンポジウム「子どもポルノサイトの根絶に向けて〜スウェーデンのブロッキングの取り組みと日本の課題〜」を開催しました。
被害を訴えられない子どもたち
© 日本ユニセフ協会
ヘレナ・カーレン
ECPATスウェーデン代表
1996年にスウェーデンで開催された第1回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議。日本は、子どもの買春・ポルノ・人身売買問題の加害国として批判されました。これらの問題を解決するため、本シンポジウム共催4者は、5回にわたるフォローアップ会議を開催。 いわゆる「児童買春・ポルノ等禁止法」の制定(1999年)などの働き掛けを続けてきました。

第2回世界会議が横浜で開催されてから6年。国際的に様々な取り組みがなされてきました。しかし、インターネット技術の急速な発達と普及を背景に、 子どもポルノ問題への対策の遅れが懸念されています。今回のシンポジウムは、サイバースペースにおける子どもポルノサイトの問題に対し、 すでに官民をあげて先進的な取組みを始めているスウェーデンの事例を紹介し、日本国内における問題への国民的関心と官民による一層の取組みを喚起することを目的に開催されました。

各国大使館や省庁、IT企業、NGO、メディアなど、定員を超える方々で埋め尽くされた会場には、シルビア・スウェーデン国王妃陛下が臨席され、同じく、 長年にわたりこの問題に取り組まれていらっしゃる日本の国会議員の方々とともに、世界の子どもたちを取り巻きつつある新たな脅威への取組みを訴えられました。

パネルディスカッションでは、スウェーデン・日本の警察、大手IT企業の代表らがパネリストとして参加。スウェーデン側からは、ホットラインの開設や インターネットサービスプロバイダー(ISP)による子どもポルノサイトのブロッキングといった、被害者の特定や保護の取り組み、そして、 子どもポルノサイトの需給関係を絶つ取り組みが紹介されました。

日本からも、民間企業によるフィルタリングソフトの提供やインターネットホットラインの設置など、官民による子どもの保護のための試みが発表されました。 また、提供目的のない児童ポルノの所持や、アニメや漫画など実在しない児童を描写した児童ポルノの問題についても言及され、日本の法制度の見直しの必要性も議論されました。

最後に、この問題の解決のため、両国の協力関係をさらに強化し、今回提示された取り組みを日本で具体的に推し進めることができるよう官民が連携して行動することを約束し、閉会しました。

メッセージ:シルビア スウェーデン国王妃

© 日本ユニセフ協会
シルビア・スウェーデン国王妃

1996年に第1回世界会議がストックホルムにおいて開かれ、それ以降、複数のセミナーがECPAT、日本ユニセフ協会との協力のもと、このスウェーデン大使館で開催されました。そして、これらの取り組みがもたらした大事な成果を高く評価しております。一連の取り組みによりまして、スウェーデンと日本の関係もまた深まっていったと思っております。

日本のこの問題に対する取り組みの成果の例としては、1999年の児童買春・児童ポルノ等禁止法の成立です。この法律の制定にあたり、日本の女性議員の皆様が見事なイニシアチブをとり、そして、努力を払って超党派で子どもたちを守る措置をとってくださったことに敬意を表します。

私は光栄にもストックホルム会議で名誉議長を務めました。子どもの商業的性的搾取をテーマに 122カ国の政府代表者が一堂に会し、初めてこの問題について討議いたしました。子どもの権利に対する重大な侵害、つまり性目的のための未成年の人身売買、子ども買春、子どもポルノについての議論が重ねられ、共同宣言と行動計画がその場で採択されました。

2001年の第2回世界会議では136カ国が参加し、各国の取り組みと成果を報告するとともに、コミットメントを再確認し、社会で最も弱い立場に置かれた者たちへの責任を示したのです。結果、著しい進歩が各国政府、政府組織、そしてうれしいことに企業レベルによっても遂げられました。

最も重要な貢献をした企業の一つに、スウェーデンの企業であるネットクリーン・テクノロジー社が挙げられます。この会社は子どもポルノの撃退ソフトを製作するためだけにつくられました。このソフトウエアは今では多くの職場で有効に使われ、もし社員が子どもポルノの画像をダウンロードすれば警察に即通報される仕組みになっています。

こうした犯罪に立ち向かうには、インターネットサービスプロバイダ(ISP)企業と法執行機関(警察)の連携が欠かせません。バーチャル(仮想)の世界で起こっている性的搾取の被害から子どもたちを守るために新たな技術を開発し、活用してゆくための世界的な基準を作り、各国での導入を求めてゆくには、まだまだやらなければならないことがあります。

最近、児童ポルノのネット流通がオーストリアで摘発され、子どもによる性犯罪の範囲の広さと度合いが露呈されました。子どもが虐待されている画像の中には、下は五歳の子どもを性犯罪の対象とし、極度な性的虐待を加えている画像が77カ国に流通していたことが判明いたしました。このケースでは、24時間のうちに世界中の何千もの人が画像を購入し、子どものレイプと拷問行為を積極的に見ていたことがわかりました。

この事件では、容疑者の数、関わった国、どういう方法で画像が転送され、アクセスされていたかについての情報が明らかになってきております。ただ、ショッキングな事実として報道され、(被害者を)救う努力についてはあまり言及されておりません。つまり、苦しみが画像に映り、声として聞こえた子どもたちを救う努力については表に出てきていないのです。この世界はどうなっているのでしょう。私たちが何かしなければなりません。そして、私たちが自分たちの世界をどうしていきたいのか考えなければいけません。

本シンポジウムでは、ISPが、巨大な規模で流通する子どもに対する性的暴力の形態である「児童ポルノ」の阻止において果たせる役割について議論します。今日、複数のISP企業がこの分野において責任ある行動をとっています。本日の発表、議論により、一層多くの企業が子どもの命を守るための行動するよう、切に願います。

政府機関、NGOを含め、多くの人が努力をしている一方、子どもが今日世界で直面している危機は、予測不可能な方向で増大しているように思います。これは、国内のみならず、グローバルな取り組みや解決策が必要です。

ストックホルムと横浜で開かれた世界会議は非常に重要な意味合いを持っておりました。ぜひ第三回の世界会議が子どもの商業的性的搾取根絶に向けて開催されるように願っております。世界の良識を近いうちに実現していただきたいと思います。

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る