子どもポルノ  問題に関する緊急請願 [全文]

我が国が与野党一致をもって「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(以下「児童買春・児童ポルノ等禁止法」または「現行法」と呼ぶ)を成立させてから9年が経ちました。しかし、日本国内外の子どもポルノ問題は、一向に解決される気配が見られません。

「児童買春・児童ポルノ等禁止法」では、「児童ポルノ」の単純所持(販売・流布を目的としない入手・保有)は禁止されず、罰則の対象から除外されています。しかし、誰かが「所持」するということは、児童ポルノを「製造」し「流布(販売)」する者がどこかに存在することすなわちそうした行為を許容していることに他なりません。現在、子どもポルノの「単純所持」を許容しているのは、主要8か国(G8)中、ロシアと日本だけです。また、米国とカナダでは、日本の現行法では「児童ポルノ」として規定されていない子どもポルノー子どもの性的虐待を描いた漫画やアニメの所持により、実刑が下された例も報告されています。

さらに、「児童買春・児童ポルノ等禁止法」違反による逮捕・検挙数は増加の傾向にある一方、現行法で最高刑とされる3年の科料に処せられるケースはほぼ皆無に等しいばかりか、非常に多くのケースに対し執行猶予付きの判決が下されています。子どもポルノの現状を鑑みるとき、著しい子どもの人権侵害行為である「児童ポルノ」犯に対する法執行として、見過ごせないのではないでしょうか?

私たちは、「児童買春・児童ポルノ等禁止法」の制定と、2004年の第一次改正の後も、「法律や制度の次に来るもの」として、インターネット上での子どもの保護を進めるIT業界をはじめ、関係する団体による様々な取り組みを応援しています。一昨年6月に開始されたインターネットホットラインセンターの活動や、プロバイダー、ベンダーなどによる有害サイトのフィルタリングやブロッキングサービスの提供、昨年12月に発表された携帯電話・PHS事業者による未成年ユーザーを対象としたフィルタリング設定のデフォルト化などの試みは、子どもの権利を守る取り組みとして歓迎するところです。

今年11月、ブラジルで第3回「子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」が開催されます。1996年、スウェーデンで開催された第1回世界会議で、日本は、子どもポルノの一大生産国・輸出国であるばかりでなく、そうした状況になんら取り組んでいない「加害国」として非難されました。その後、政府・市民一丸となって取り組んだ反子ども買春・ポルノ・人身売買キャンペーンの成果として、「児童買春・児童ポルノ等禁止法」が成立し、2001年、第2回世界会議が横浜で開催され、その取り組みと成果が国際的に評価されました。

しかしながら2000年代に入って、インターネットや携帯電話の驚異的な発達や普及など、子どもポルノの問題を取り巻く環境は激変しました。IT大国であり、コンテンツ(漫画・アニメ・ゲームソフト作品の生産)大国でもある日本国内のこうした深刻化の現状によって日本の子どもたちのみならず、世界の子どもたちも「子どもポルノ」という名の「子どもの性的虐待」の被害に晒され続けています。

私たちは、以下の4点を訴えます

  1. 児童ポルノの「単純所持」を禁止し罰則対象とするよう、児童買春・児童ポルノ等禁止法の早急な改正を求めます。
  2. 子どもに対する性的虐待を表現する写真、動画、漫画、アニメーションなどについては、その内容が児童買春・児童 ポルノ等禁止法の処罰対象となるか否かを問わず、その製造、販売、流布、ならびに入手・保有の各行為に反対します。
  3. 上記(2)に示す著作物等の流布・販売を自主的に規制・コントロールする各種通信事業、IT事業、ソフト・コンテンツ製造・制作・販売等の各業者、業界、ならびに関連団体による官民を挙げた取り組みを応援するとともに、より一層の取り組みを求めます。
  4. 検察・裁判所はじめ全ての法曹・司法関係者に、子どもポルノが重大な子どもの福祉ならびに人権侵害行為であるとの視点を持ち、児童買春・児童ポルノ等禁止法犯に対し厳格に同法を適用・執行されるよう求めます。

※「子どもポルノ」と「児童ポルノ」
本文では、現行法が触法物として規定し一般に「児童ポルノ」と称される写真・動画等以外に、子どもの性を「商品」として取引するもの(漫画、アニメ、児童ポルノ広告など)が存在することの問題点を指摘するため、現行法が規定するものを含めた総称として「子どもポルノ」という表現も使用しています。

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