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≪2001年6月18日信濃毎日新聞掲載分≫ 学校外教育 生活に役立つ知識を
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サンゲは11歳。のどかな農村地帯が広がるブータンのプナカ県ラク村で、両親が営む農業を手伝っています。小学校がとても遠く、家の手伝いをしなければならないため小学校へは通っていません。ブータンは国土のほとんどが山岳地帯。5000メートル以上の山が多数あり、非常に険しい地形の中で人々は暮らしています。
ブータンは鎖国政策をとっていたため、国の近代化が始まってまだ50年あまり。「すべての子どもに教育を」という目標をかかげ、教育事業に力を注いでいます。学校へ通う子どもは増えてきているものの、学校へは山をいくつも越えなければならない、家の手伝いをしなければならない、貧しくてわずかな経費が負担できないなどの理由で、学校へいけない子どももたくさんいます。
ブータンはユニセフと協力し、目標達成のために二つの教育制度−「正規の教育」と「学校外の教育」を行っています。「学校外の教育」は正規の小学校で教育を受けられない人のために実施されるもので、新聞やお経が読めるようになる、収穫を数え、計算できるようになるなど、生活に役立つ知識や技能を身につけることが目的です。
サンゲの通う「学校外教育」は、ラク村の村長宅のひと部屋を借りて開かれています。教科書は30課程で、授業は公用語のゾンカ語が使われ、約1年間で終了します。それぞれ地域に適した時間に授業が行われており、サンゲの通うクラスは土日曜日以外の、農作業が終わる夕方5時半−7時半に行われます。
「勉強は難しい?」と聞くと「字も読めるようになってきたし、計算もできるようになってきた。いろいろなことを覚えて楽しいよ。仕事が終わってから勉強するのは疲れるけど、歩いて通えるんだ」とサンゲははにかみながら話してくれました。今日は16課の「養鶏」を勉強します。
「すべての子どもが教育を受けること」。ブータンでは、子どもたちがよりよい将来のために基礎的な力をつけることは非常に大切なことだと、強く認識されているのです。