|
|
<2002年5月27日 信濃毎日新聞掲載> 国連特別総会
|
2002年5月7日、国連子ども特別総会開会の前日、ニューヨークの国連本部一帯は「平和」一色となりました。歌となり、踊りとなり、祈りとなって「地球を平和で覆い尽くそう」というメッセージが波のように伝わっていきます。
この日は、特別総会に先立って行われていた「子どもフォーラム」の最終日でした。世界中から集まったおよそ400人の子どもたちが、それぞれの問題や未来について意見を交換し、交流を深め、体験を共有し、そして世界に向けた子どもからのメッセージを一緒につくりあげたのです。
「子どもフォーラム」の閉会式では、特別総会に向けて世界中で行われていた「セイ・イエス・フォー・チルドレン」キャンペーンで集まった署名数が発表されました。その数、9400万以上。署名は「子どもを一人として差別しない」「子どもへの虐待や搾取をやめさせる」など子どもにかかわる10の約束に賛成することを示したものです。世界のおよそ60人に1人は子どもたちとの約束を守りたいという思いを表したことになります。
世界中からの声に後押しされるように、子どもたちの声は生き生きと飛び出しました。英国から来たエレン(18)は「子どもフォーラムは終わるけれど、子どもの暮らしを良くするための仕事は始まったばかり。今度は私たちの願いを現実にしなくては」と話します。
「私たちはこのフォーラムで多くのことを解決しました。HIV/エイズの問題や子どもの搾取の問題を十分取り上げたし、前進するためには政府が何かしなくてはならないということもはっきりさせることができました」。南アフリカから来たモニク(13)はフォーラムをこう評価しました。
フィリピンのカーラ(17)は理想を語ります。「私たちそれぞれが村に出かけていって、子どもたちに家族ともっと自由に話をしなさいと広めれば、10年もの行動計画なんて必要ない。2年もあれば世界を変えられる。理想主義と言われるかもしれないけど、変化は理想から始まるもの」
8日、国連子ども特別総会初日の本会議場には、スピーチをする子どもの姿がありました。国連で子どもたちが正式に演説するのは初めてのことです。
「私たちは世界の子どもです。私たちは子どもにふさわしい世界がほしいのです。子どもにふさわしい世界はすべての人にふさわしい世界でしょう」。スピーチは、こう結ばれました。「あなたがたは私たちを未来と呼ぶけれど、私たちは今ここにいる現在でもあるのです」
10日、世界各国のリーダーたちは3日間にわたる議論を経て「子どもにふさわしい世界」という名前の最終文書を採択し、国連子ども特別総会は閉幕しました。本当に子どもにふさわしい世界をつくれるか、どのように約束を果たすのか、9400万の人びとと子どもたちが真剣に見守っています。