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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ジャマイカ: 若者たちの人生を変えたHIV/エイズ予防“バシェイ・バス”のメッセージ

【2008年7月25日 ジャマイカ発】

“バシェイ・バス”の前に立つアンドレ・レンノンさん。
© UNICEF Jamaica/2008/Niles
ジャマイカ全土でHIV/エイズの啓発活動を行っている“バシェイ・バス”の前に立つアンドレ・レンノンさん。このバスが、アンドレさんの人生を変えました。

アンドレ・レンノンさん(20歳)は、自信に溢れ、優しい笑顔で穏やかに話をする青年です。彼は、自身が手入れをしている庭に囲まれた小さな家で、母親と祖母とともに暮らしています。この家での生活は、さ程離れていないジャマイカの最も治安の悪い地区での以前の暮らしとは大きく異なります。

「数え切れない程の犯罪や暴力を経験してきました」。アンドレアさんは、彼の父や叔父、親友が殺された話、以前住んでいた家が焼き討ちされたことなどを語ります。銃が支配する環境の中で過ごした少年時代、アンドレさんは、自らが進むべき道を見つけようともがいていました。そのような環境の中で、彼が「悪人」と呼ばれるようになることは、それ程難しい話ではありませんでした。しかし、ユニセフやユニセフとともに活動する市民団体「Children First—子ども最優先」などの支援のお陰で、彼の人生は180度変ったのです。

若者に直接訴える“バシェイ・バス”

「“バシェイ・バス”が私を救ってくれました。若者が考えるべきことを、考えさせられました。」アンドレさんはこのように振り返ります。“バシェイ”は、ジャマイカ語で“仲間”を表す言葉。ジャマイカ国中を走り、HIV/エイズや暴力、そして、性体験の低年齢化を促す社会的環境など、子どもや若者を脅かす諸問題を劇や歌にして表現します。

「そこで演じられる劇や歌はとても刺激的で、若者を引きつけます。HIV /エイズ予防などの保健サービスを受けるために、若者が列をなすようなイベントなど、そうそうありません。」 ユニセフ中南米地域事務所のHIV/エイズ担当官のマーク・コナリーは話します。

保健サービスの一部として

“バシェイ・バス”が何故、子どもや若者向けの活動として成果を上げているのでしょう?それは、子どもや若者自身が、そのメッセージを発信しているからに他なりません。 「彼らは、同年代の仲間の言うことには、耳を傾けやすいのです。自分たちが経験したことを親に話すことなど、殆どないでしょう?」 アンドレさんはこのように話しました。

“バシェイ・バス”のパフォーマンスを見に来た地元の高校生たち
© UNICEF Jamaica/2008/Niles
“バシェイ・バス”のパフォーマンスを見に来た地元の高校生たち。

“バシェイ・バス”のパフォーマンスは、派手で楽しいものです。しかし、その華やかな雰囲気は、あくまでこの重要な活動の一部に過ぎません。このバスは、ジャマイカの保健サービスに不可欠な存在になっています。若者たちに、産前検診やHIV検査のようなサービスを紹介しているのです。 「“バシェイ・バス”は、単独のプロジェクトとして活動しているわけではありません。国内で提供される様々な保健サービスを補完しているのです。“バシェイ・バス”が、若者たちが生きるのに必要な様々な情報を発信します。そうした情報に対する人々の反応が、やがて国の保健施策のさらなる整備に反映されます。また、(HIV検査などの)個別の保健サービスに、人々を誘導する役割も果たしているのです。」(ユニセフ・ジャマイカ事務所代表バートランド・バインベル)

生きる力を与える「起爆剤」

“バシェイ・バス”が発信したメッセージに心を動かされ、アンドレさんはカウンセリングを受け、HIV検査を受けました。
「私は、本当にいらだっていました。HIV陽性かもしれませんでしたし、そのことで気が弱くなっていましたから」。アンドレさんのテストの結果は陰性。そして、このことが、アンドレさんの人生を変える起動力となりました。彼はいま、大学へ通いエンターテイナーになりたいと希望を抱いています。 「今は、とてもとてもハッピーです。もう絶対、避妊用具を使わずに性交渉はしないって自分に言い聞かせているんです」。

「子どもとエイズ世界キャンペーン」

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