≪2004年9月27日掲載≫
バトケン州で有名なもの—石ころだらけの土壌、アプリコット、そしてラジオ局サラム
<キルギス>
泥と岩、そして水が入り混じった、人の背丈ほどもある不気味な濁流が時おり道をふさぎます。どしゃぶりの雨やヒョウのためにワイパーは使い物にならず、車はきしみ音をあげて止まってしまいます。道路をきれいにするため、運転手が慌てて車から出でくることも。キルギスの首都、ビシュケクから南部のバトケン州まで、通常は3時間で行ける道のり。天候が荒れた2004年の夏には7時間もかかりました。
バトケン州はキルギスで最も貧しい州で、生活するにも訪れるにも大変な場所です。自然災害や悪天候は人々の生活を苦しめるばかり。ですが、土壌は山々に囲まれた平坦な土地に広がる青々としたアプリコット果樹園に栄養を与えてくれます。地元住民は、バトケン州と聞くと、石ころだらけの土壌、アプリコット、そしてラジオ局サラムを思い浮かべます。バトケン州で最も尊敬されている人は誰だと思いますか? 地元住民は、彫刻家のトグンバイ・シディコク、州知事のアスカー・シャディエフ、そしてラジオ局サラムのディレクターのマクスダ・アイティバの名前を挙げます。
学校に通う子どもたちにとって、バトケン州の歴史はラジオ番組サラムが放送される以前と以後とで2つの時代に分かれます。青少年問題に取り組むラジオ局サラムは、ユニセフ、そしてユニセフと提携したインターニュースと国際寛容基金の支援によって、2001年の4月12日に誕生しました。ユニセフは今もこのラジオ局への支援を続けています。
ラジオ局サラムの歴史はまだ浅いものの、多くの聴視者からの熱烈な支持を受けて発展し、支援が必要な何千もの人々の心に灯りをともしてきました。サラムは若者たちが互いに意見を述べ合い、一緒に勉強し、楽しむことができる場所と時間を作りだしました。
30人ほどの学生ボランティアが情報を集めたり、番組の台本を書いたりします。「数日前、児童養護施設へ行ってきました」とバトケン大学の3年生で、ラジオ局サラムのボランティアのアイダイは言います。「ほとんどの子どもたちは生みの親や親戚がいるにもかかわらず、施設に収容されています。そのため子どもたちは親や親戚を恋しがっています。私たちのグループは今、子どもたちが抱えるいかなる問題に対しても、施設が解決策とはなりえないことを人々に伝えようと、デイリー・ストーリー・プログラムの台本に取り組んでいます。子どもたちは家族と一緒に暮らすべきです。番組制作に真剣に取り組んでいるので、人々はラジオが伝えるメッセージに耳を傾けてくれます」
ラジオ局サラムは、ユニセフが支援する“HAFY”プロジェクトの一環です。HAFYとは「青少年のための健康電波」という意味。このプロジェクトはキルギスの各地に点在する5つの地方ラジオ放送局を束ねています。コミュニティにおける保健や教育の最重要問題に答えるべく、青少年も参加した双方向型番組を制作しようと、記者や青少年ボランティアが一緒に取り組んでいるのです。例えば、HIV/エイズや性感染症の予防、衛生、世代間ギャップに関する問題。またHAFYプロジェクトはラジオ放送局が創造的なアイディアを交換したり、地域のニーズにより合致した番組を制作する手腕を高めたりするための場も提供しています。バトケン州では経済が発展していないため、ラジオ局サラムは地域の問題を提起したり、解決を手助けしたりする一方で、地元住民の支援を求めています。またバトケン州の教育設備が荒廃しつつあるため、ラジオ局サラムの存在は教育格差を埋める上でも重要になっています。
ラジオ局のスタッフは、社会に影響を与え、社会を動かすリーダーであるという評判を得ています。熱心に仕事に取り組んだ後、その努力に対して反応が返ってくることが一番のねぎらいです。16歳の女生徒アイヌラはラジオ局へ手紙を書きました。「サラムが好きなのは、ここにある唯一のラジオ局だからというわけではありません。サラムは私たちにとって、先生、助言者、親友なんです。役に立たない番組はひとつもありません。特にお話しておきたいのは、この地域の歴史や健康問題を取り上げている番組です。HIV/エイズの危険性を教えてくれたり、妊娠や出産、家族計画などの難しい質問に答えてくれたのはサラムです。生水が病気の原因になることは学校で教わりましたが、家族が水を沸かすようになったのはラジオで炭素菌のことを聞いてからです」18歳の作詞家の卵、アイダイは、歌詞を書いてラジオ局サラムに送りました。アイダイはラジオ局を砂漠に咲く花や、蒸し暑い一日を潤す恵みの雨にたとえました。
熱心で献身的な若いボランティアや情熱的なスタッフを擁し、保健と教育に関するプログラムで実績を積んでいるラジオ局サラムは、青年団や地元当局、マスメディアにとっては魅力的なパートナーです。サラムで働く人々の愛と気遣いが、局の最も大きな財産だとユニセフは考えています。いつの日か、このラジオ局がユニセフの支援なしで自立すること−ユニセフはそんな日が来ることを願っています。
2004年9月10日
ユニセフ・キルギス事務所
ガリナ・ソロドゥノバ
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