貧困の影 7割に満たぬ就学率
<マダガスカル>
2001年1月29日 信濃毎日新聞掲載
町の中心から土ぼこりをあげ、四輪駆動車で走りぬけること約30分。右に左にバオバブの大樹が現れる。高さ10メートルを優に超えるバオバブの群生する道に降り立つと、遠くからボールをけりながらやってくる兄弟が見えた。焼けるように熱い太陽の下、青い空をバックにのびのびと駆ける姿がまぶしい。
ここは、マダガスカルの南西部に位置する海岸沿の町ムロンダバ。美しいビーチとバオバブの街道で知られる観光地である。マダガスカルは、アフリカ大陸の南東、インド洋に浮かぶ世界で4番目に大きな島で、面積は日本の約1.6倍ある。人口1千549万人の約半数は20歳以下が占めており、子どもの数が多い。
雄大な自然とあちこちで出会う珍しい動植物に、この国を訪ねる人々は魅了される。しかし、そんな大自然のゆったりとした時間の中で暮らす人びとに、貧困は黒い影を落としている。
バオバブの木の下で出会った兄弟は、バオバブの実をかじりながら屈託なく笑い、小さく「サラーマ(こんにちは)」と言った。町から離れたこの辺りでは、人々は、ヤシの葉を屋根にした土壁の簡素な家に住んでいる。
子どもたちは、学校まで何キロも歩かなくてはならず、貧しい家庭では、子どもたちは家の手伝いをして、牛を追ったり、マンゴーなどをマーケットに売りに行くため、学校に行く時間がなくなってしまう。しかも、学校のない村も多い。旅行者が通る道沿いに、店を広げている少女たちもいる。乾燥したバオバブの実を拾い、ひとつ500マダガスカルフラン、日本円にして約10円で売っている。
マダガスカルの初等教育は11歳まで。しかし、就学率は70%に満たず、入学しても6割は途中で辞めてしまう。成人の識字率は男性50%、女性44%と低い。
ユニセフは、町から離れた村でも、子どもたちが教育を受けられるように先生を町から派遣したり、子どもたちに学用品を提供するなど、教育の支援をしている。
貧しくても、大自然に囲まれ大きな太陽の下で元気に生きるマダガスカルの子どもたち。そんな子どもたちが、家庭の貧しさに縛られることなく、学校に通い、遊び、子どもらしく生きられるよう、ユニセフは支援を続けている。
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