メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<2004年6月21日>

HIV/エイズとともに力強く生きる
<ナミビア>


ネラオはHIVに感染していますが、ユニセフの支援を受けながら力強く生きています。 2000年11月、ネラオ・マーティン(当時17歳)は、生後10カ月になる息子を病院に連れて行きました。あまりにも病弱だったからです。病院では3種類の検査を受けました。最初はマラリア、そして結核。息子はどちらの病気にもかかっていませんでした。そして11月6日、ネラオは赤ちゃんと共にHIV/エイズの検査を受けたのです。1カ月後、検査結果が知らされました。ネラオと赤ちゃんは、2人ともHIVに感染していました。
 「なぜ私なの?って自分に問いかけたわ」とネラオは言います。「専門家のカウンセリングを受けて気持ちは落ち着いたけど、息子のことは今でもかわいそうだと思うんです。あの子は何も悪いことはしてないのに」

 ネラオはナミビアの首都ヴィントックで全寮制の学校に通っていたときに、赤ちゃんのお父さんである男性から感染しました。家から遠く離れ、彼女は10代の若者にありがちな行動に走りました。無鉄砲な自由を享受していたのです。ユニセフがサポートするキャンペーンの一環で、学校では自ら安全なセックスを呼びかけていたにもかかわらず、いざ自分のことになると、嫌われてしまうことが恐くて、ボーイフレンドにコンドームの使用を求めることができなかったのです。

 事の重大さに気づいた今、ネラオはそのことを恥ずかしく思っています。「安全でないセックスに反対するキャンペーンに自ら取り組んで、他の人たちにはコンドームやその他の予防策を勧めていたのに。その私自身が病気になってしまったのです」

 ネラオの親戚の中には、エイズで亡くなった人たちがいます。「親戚の人たちは、何もいわず、静かに死んでいきました。でも私は違う」 兄弟や姉妹、友人たち、そして祖国ナミビア。急速に拡大を続けるHIV/エイズに、誰もが苦しんでいました。同じ過ちを繰り返してほしくない。こんな運命にさらされるのは、自分と自分の子どもで終わりにしたい。そのために、何かをしたい——ネラオは自分がHIV感染者であることを公表することにしました。

 感染の事実を知ってからまもなく、子育てのため1年間の休学を終えて、ネラオは学校に戻りました。その後1年半の間、クラスメイトは彼女がHIVに感染しているということを知りませんでした。「つらい時期でした」ネラオは当時を振り返ります。「事実を知っているのは私だけだったけど、本当はみんなに知ってもらいたかった」 休み時間やお昼休みの時、学校の寮で。自分の感染の事実をふせながら、ネラオはあらゆる機会を捉えて、HIV/エイズのことを友だちと話しました。「私が話したかったのはそのことだけだったんです」

 2002年、ネラオはついにビデオを作ることにしました。自分がHIV感染者であることを公表するビデオです。タイトルは“悪いことは最初に、よいことは後からやってくる——ネラオとHIVの闘い”。エイズに関する意識を啓発し、この病気に対する偏見をなくすためにHIV/エイズとともに生きる人々自身による活動を支援していたユニセフは、ネラオのビデオ制作にも資金援助を行いました。

 ビデオを作ることはネラオにとって癒しの機会でもありました。つらい秘密を隠し続けるという負担から解き放たれ、自分の過ちと家族の悲劇を、良いことをもたらす力へと転換することができたからです。メッセージははっきりしています。ネラオは普通の女の子です。学校に行ってよい成績を納め、友だちと笑いあいます。それでも彼女は間違いを犯し、その間違いがもたらした結果は悲惨なものでした。彼女は妊娠し、学校を辞めなければなりませんでした。さらにネラオはもうひとつの間違いを犯しました。妊娠中にHIVの検査に行かなかったことです。もし検査に行っていたら、投薬によって赤ちゃんへの感染を防げたかもしれません。今、ネラオも赤ちゃんもともにHIVに感染しています。それでもネラオには、他の人々が見習うべきところがあります。自らの状況に押しつぶされることなく、他の人々が同じ過ちを繰り返すことを防ごうと、自分の経験を自ら進んで伝え続けているからです。HIVの問題が、より深刻な形でナミビアの若者たちに伝わる物語——ネラオの物語こそ、ユニセフが求めているものでした。

 ネラオは自分のビデオを誇りに思っています。「このビデオはアメリカにも届けられたんです。私が一度も行ったことがないたくさんの場所で、私のビデオが見られているんです。たくさんの人々が私のビデオから影響を受けている。たとえ私がその場にいなくても、ビデオの中に私がいるの」

 「私は…、HIVに感染しているナミビアの人たちを励ましてあげたい」ネラオは世界に向けて語りかけました。「友だちや家族に感染のことを話すことを恥ずかしがってはいけません。HIV/エイズは国中に広がっています。私たちが闘わなければ、HIV/エイズはなくなりません」

 ネラオの息子は4歳になり、幼稚園に通いながらふつうに友だちと遊んでいます。今までのところ、2人の免疫システムはウイルスに打ち勝っています。まだ抗HIV薬をとる必要もありません。ネラオはこれからもHIV感染者をサポートし、人々が健康的な選択をできるよう活動を続けていくつもりです。

 こうしたすべての困難を乗り越えて、家族や友だち、国やユニセフから受けたサポートのことを思うとき、彼女は自分のことを幸せだと感じています。「ユニセフが取り組んでいる仕事は、コミュニティやHIVに感染した子どもやおとなたちにとって本当に効果的なものです」「ユニセフが行っている1つひとつのことに感謝しています」

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る