洪水 親と離れ記憶喪失—母と再会
<ベネズエラ>
昨年12月、降り続く大雨により引き起こされた大洪水がベネズエラを襲いました。この洪水によって少なくとも2万人が命を落とし、15万人から20万が帰る家を失い、多くの人々はいまだ行方不明のままです。このように何らかの形で洪水の被害に遭った人々は、30万人を超えると言われています。経済的な損害やインフラストラクチャーへの被害に加え、災害を経験した人々、とりわけ子どもたちへの精神的ダメージは深刻です。
11歳のエンリケは、洪水の時に家族と離ればなれになり、災害で受けたトラウマ(精神的外傷)のために記憶を失ってしまいました。自分の名前も、どこに住んでいたかも、両親のことも何も覚えていません。地方のテレビニュースでエンリケの写真を繰り返し放送してもらい、それを見た両親が迎えに来てくれることを祈ることしかなすすべはありません。
今回の洪水で家族と離ればなれになった子どもは約千人。このような子どもたちが一日も早く家族と再会できるよう、ユニセフは他のNGOと協力して、生存している家族や親類を探したり、身分証明書を発行したり、必要な場合には里親を探したりといった活動を行っています。
また、災害によってトラウマを受けた子どもたちに精神的リハビリテーションを行うため、コロンビアの大地震やハリケーン・ミッチの時の経験を生かしながら、カウンセラーの訓練や派遣を行っています。その際にはエンリケのように親と離ればなれになった子どもを優先してケアしているということです。
そんなある日、うれしい出来事が起こりました。エンリケの母親のカルメン・アントニアがやっとのことで息子の居場所を探しだし、施設を訪ねてきたのです。カルメン・アントニアは信じられないといった様子でエンリケを抱きしめました。想像を超える感動的な瞬間を沈黙が包みました。
その時です。エンリケはお母さんのほおにキスをしました。何も言葉は発しませんでしたが、エンリケはお母さんのことを思い出したのだと皆は思いました。
エンリケのように大きなショックを受けた子どもたちには精神的リハビリテーションを行うだけでは不十分です。惜しみなく愛情をそそぐことが何よりも大切なのです。
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