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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

失われた文化を取り戻すために
<ベネズエラ>

【2007年1月8日 ベネズエラ発】

ベネズエラに多数存在する少数民族のひとつで、国の北西部を居とするアヌ族。「アヌ」とは「水辺に住む人」。
しかし、今。人口3500人のアヌ族が住む場所の水は汚染され、固有の文化も言葉も存亡の危機に瀕しています。
ユニセフは、ベネズエラの人々と協力し、アヌ族をはじめとする少数民族の人々の固有の文化の再生のお手伝いを始めています。

失われた文化を取り戻すために

© UNICEF Venezuela/2006/Markisz
ベネズエラの少数民族、アヌ族のアンドレス・コンラド君(5歳)と母親のザイダ・ベニファさん

フォアン・アンドレス・コンラド君(5歳)は、この国の多くの子どもたちと同じように、彼の先祖がかつて話していた言葉を理解できません。彼も彼の友人も、みんなスペイン語を話します。フォアン君の母、ザイダ・ベニファ・グェラさんは、この状況を非常に危惧しています。
「私たちは、自分たちの文化を、特に言葉を失っているんです」とグェラさんは言います。
ユニセフが支援する文化再生プロジェクト「PROANDES」。ベネズエラの教育省や国内各地のコミュニティーの人々が主導するこのプロジェクトによって、フォアン君とグェラさんは、生まれてはじめて、アヌ語を学ぶ機会を得ることができました。

一語一語

アヌ語を再び生活の中に取り戻すにはどうしたら良いのか? グェラさんは、一緒に言葉を学んでいる仲間と繰り返し議論しています。
「毎日教室を開いています。アヌ語を知っている高齢者の方々や、国立大学の研究者の方々が、一語一語教えてくれています。これまでに360の言葉を学び、それで小さな辞書を作りました。」
グェラさんは、家に帰るとその日に覚えた言葉を息子のファン君に教えます。「学校で覚えた言葉は、すべて息子に教えています。彼がアヌ族の一員であることを恥と感じることがないように。そして、将来、アヌ語を話せるようにね。」

二ヶ国語教育

© UNICEF Venezuela/2006/Markisz
フェリックス・マルシアル・グェレロさんは、ユニセフのトレーニングを受け、現在、500人あまりの子どもたちに、アヌ語を教えています。

フェリックス・マルシアル・グェレロさんは、ユニセフのトレーニングを受け、子どもたちに、アヌ語を教えています。フォアン君も、彼の授業を受けている500人程の子どもの一人。社会的・経済的に最も弱い立場におかれている子どもたちもアヌ語を学べるよう、こうした授業は、教室だけではなく、各家庭でも行われています。
ユニセフは、文化再生プロジェクトを更に充実させるため、教科書や教材の開発の支援も始めました。子どもたちの熱意に加え、こうした教材が教室に届き始めたことで、先生方の教え方にも、より一層の熱意が入るようになりました。
「最初、学校はとても驚いていましたよ。」 グェレロさんは、教室でアヌ語を教え始めた頃を思い出して、こう語ります。「でも、今、状況は変わりました。学校は私たちの活動を理解してくれています。そして何よりも、子どもたち自身がこの活動を支持してくれているんです。毎回毎回、『明日も来てね!絶対だよ!』って言ってくれるんですよ。」

知識と誇り

© UNICEF Venezuela/2006/Markisz
アヌ族の言葉を学ぶ教室に集まった子どもたち。

アヌ族の人々にとって、アヌ語を守る事は「待った無し」の課題です。そして、その成否は、3500人のアヌ族一人一人、特に若者の参加が不可欠です。
フォァン君はまだ5歳ですが、すでにこのことに気づいているようです。そして、自分もその力になれることも分かっています。「僕も大きくなったら、子どもたちにアヌ語を教えてあげるんだ。」 フォアン君が言っています。
お母さんも、そんなフォアン君を頼もしく思っています。子どもたちに自らに固有の文化遺産を知り、また誇りに思ってほしい。グェラさんは、「子どもたちには、身体の中を流れる血液のように、私たちの文化を自ら一部にして欲しい。そして、世界中どこに行っても、私たちの文化を忘れないで欲しいのです」と語ります。

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