氏名:坂井 馨月
派遣先:南アフリカ事務所(Education Section)
派遣期間:2008年5月〜8月
南アフリカには、世界最多のHIV感染者・エイズ患者(570万人)が暮らし、女子(15歳から24歳)は世界で2番目に高いHIV感染率(18.3%)を記録しています。南アフリカ教育省と保健省はこれまで、UNICEFやUNAIDSと共同で、数々のエイズ予防プログラムを、教育を通して思春期の子供たちに教えてきました。しかしながら、これらの効果は過去10年ほど、ほとんど見られていないといっても過言ではありません。
私は3ヶ月半のインターンシップを通じて、現在南アフリカの学校で実施されている思春期の子どもたち(特に女子)を対象にしたエイズ予防プログラムの分析をしました。
南アフリカの一般教育では、ライフオリエンテーションという道徳に似た科目が高校まで必修になっています。HIV感染や男女のコミュニケーションスキルなどを学び、エイズに対する差別や男女の平等について討論するものです。私は教育省ジェンダー部門の指導のもと、 高校生たちのHIV感染知識、エイズ予防プログラムの効果、そして知識とプログラムで学んだ新しいスキルの持続性の3点の質に関する分析を行いました。2回のフィールドトリップでは、リンポポ州とノースウェスト州で小規模グループの論議(フォーカスグループデスカッション)とインタビューを実施しました。結果、高校生たちのエイズに対する基礎知識は高いものの、知識から実際に自分の体を守るための行動へは移っていないことが分かりました。コンドームに対する汚名や低使用率、飲酒や麻薬の使用、低年齢での性行為などが問題として浮かび上がりました。これらの行為がHIV感染率を高めることは過去の研究でも立証されています。
そこで、この結果をもとに、南アフリカの思春期の子供たちに向けたHIV感染防止プログラムの新たな構成を提示しました。第1にUNICEF南アフリカオフィスでのエイズ防止、処置、介護のプログラム作成(このような総合プログラムが教育現場だけでなく、HIV感染リスクの高い、学校に行けない子供たちに対しても実施されることは必要不可欠です。)、第2に行動変化モデルを促進させるプログラムの導入、そして第3に社会疫学( ポピュレーションアプローチ )を使用した研究のサポートです。
インターンシップ中には東南アフリカ教育ネットワーキング会議、2010年サッカーワールドカップに向けてのエイズ予防会議、JICA Health sectionとの会議などにも参加させていただき、広範囲でUNICEFの仕事を体験することができました。
思春期の子どもたちのエイズ予防教育については、様々な公共機関、国連機関、そして非営利団体が協力して、統合的に対策を講じていくことが大事です。私自身、今回の経験を活かして、この対策に貢献できるように、公衆衛生・国際保健という広範な分野における専門性をもっと身につけて、将来、また子どもたちのために仕事がしたいと思っています。最後になりますが、南アフリカオフィス、東南アフリカ地域事務所の方々、そして日本ユニセフ協会のみなさまに、このような素晴らしい機会を与えてくださったことを心より感謝いたします。世界中の子どもたちがいつまでも笑顔で元気に暮らせる日が来ることを願って。
(Sala kahle - 南アフリカ・ズールー語で、皆が元気でいられますように) |