アフリカ南部諸国に食糧危機
食糧危機がもたらす子どもの悲劇
アフリカ南部の6カ国(ジンバブエ、マラウィ、ザンビア、モザンビーク、スワジランド)では1400万人以上の人々が、厳しい気候、たび重なる干ばつ、慢性的な栄養不良、政治的不安定、貧弱な社会基盤によって危機的状況にさらされています。1400万人の約半数は18歳未満の子どもで、うち230万人が5歳未満の子どもです。
干ばつによる食糧不足という事態に加え、この地域ではHIV/エイズの脅威が深刻化しており、働き盛りとなる年齢層(15‐49歳)の約25%がすでにHIV/エイズに感染しています。特に感染率の高いジンバブエでは、人口の約33.7%がHIV/エイズに感染しており、13%もの子どもたちがエイズによって両親あるいは片親を失い、エイズ孤児となっています。食糧や生活必需品の不足が、多くの女性を性産業などHIV感染の危険性の高い環境に追い込んでいます。
HIV/エイズは、感染者の免疫力低下を招き、干ばつによる過酷な条件での生活をより困難にするだけでなく、感染者のケア・治療のために、食糧や衣類などの生活必需品、子どもの教育に使う資金をも奪っていきます。ジンバブエでは、農村部の家族が穀物を得るために、幼い娘を結婚させるケースも報告されています。感染した家族を看護するために、子どもたちは学校を中退して家事労働に従事したり、収入を求めて都市部で路上生活者となることもあります。その結果、もともと栄養状態の悪い子どもたちの体力がさらに奪われ、感染症などの病気の危険にさらされています。このような状況の中、小学校は単に子どもたちに教育を提供するだけでなく、暴力や虐待、性的搾取やHIVから子どもたちの安全を保証する場としての役割を求められています。
ユニセフの支援活動
こうした事態を受けて、ユニセフは10月3日、アフリカ南部地域にある現地事務所の緊急援助スタッフを招集し、今回の危機に対する支援について協議しました。その結果、ユニセフは政府やNGO、他の国連機関と協力し、保健、栄養、教育、水と衛生、保護などの分野での子ども支援の強化が確認されました。今後強化される活動は、孤児や児童労働に従事する子どもの保護と人道支援、はしかの予防接種の実施とビタミンAの提供、貧血の原因とされる腸内寄生虫の駆除、コレラのコントロール、HIV/エイズに関する知識を高めるための教育活動、学校での給食や菜園・トイレの整備、安全な飲み水の提供などです。また、深刻な栄養不足に苦む子どもと女性に対する食糧支援、女性の暴力からの保護、子どもの栄養状態と小学校出席率のモニタリングを通じた状況分析も引き続き行われます。
援助資金の74%が不足
2002年6月18日、ユニセフは南部アフリカ6カ国の子どもと女性を支援するため、2億6800万米ドルの資金提供を国際社会に要請しました。10月23日現在、ユニセフは7100万ドルを確保しましたが、まだ必要資金の74%、1億9700万ドルが不足しています。
日本ユニセフ協会では、このようなユニセフの活動を支援するため、アフリカ緊急募金の受付を行っています。皆様のご協力をお願い致します。
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