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ハイチ地震緊急・復興支援募金 第63報
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© UNICEF/NYHQ2010-2279/Dormino |
ハイチの首都ポルトープランスにある保健センターに設置された、コレラ治療のための仮設病棟。 |
ハイチに接近しつつある熱帯低気圧「トーマス」は、現地時間5日(金)にもハリケーンに発達して上陸する可能性があり、1月に大地震に見舞われ、現在も再建・復興支援活動が続けられているハイチは、新たな脅威に脅かされています。ハイチでは、今も100万人以上の被災者が避難テントでの生活を余儀なくされ、北部ではコレラも流行しています。この熱帯低気圧の影響で、既に疲弊しているハイチの状況のさらなる悪化が懸念されています。
そうした中、ハリケーン上陸の可能性を受け、被害を最小限に食い止めるための対策が講じられています。
イゲニス・メルセダさんは、医師が点滴を交換すると、息子のゴッドソン・ノエルちゃんの手を握り締めて、心配そうに病院のベッドに座りました。
テントの中は暑く、人で溢れかえっています。ゴッドソンちゃんの隣に横たわる女の子は、意識がもうろうとなり、熱にうなされながら何か呟いています。
「息子が下痢になって嘔吐し始めたので、今日ここに来ました。」「バイク・タクシーに乗ってきました。病院に着いた時には、息子の意識は既にもうろうとしていたんです。」(メルセダさん)
© UNICEF/NYHQ2010-2277/Dormino |
コレラ予防キャンペーンの一環として展開している、適切な手洗いの啓発活動。 |
コレラの流行が報告されてから、現地保健当局を支援し、コレラに苦しんでいる人々の治療に当たっているキューバ人医師たちによって、テントによる仮設病棟が3箇所に設置されました。ゴッドソンちゃんと母親のメルセダさんは、そのうちのひとつのテントに収容されています。ユニセフは、首都ポルトープランスから北に2時間ほど離れた病院に現在設置されているコレラ専門治療センター(CTC)の機能を、これらのテントに移す作業を進めています。
「毎日、コレラを発症したと見られる80人ほどの患者がやってきますが、対応できる病室が不足している状況です。」ナルシソ・オルティス医師はこのように話します。「コレラは、感染が非常に強い疾患です。」「コレラの感染者を他の疾患の患者から隔離できる体制を整えることが必要不可欠です。」
この病院の小さな病棟だけでは、コレラ患者を隔離することができません。
「コレラの感染者を仮設のテント病棟に隔離する方法が、最も適切であると判断しました。しかし、この対策も十分ではありません。病院にいる他の患者さんのみならず、スタッフも、コレラに院内感染してしまう危険性が非常に高くなっています。」
© UNICEF/NYHQ2010-2277/Dormino |
ハイチのポルトープランスで、コレラ対策キャンペーンの一環として実施されている啓発活動の中で、適切な手洗い等のコレラ予防対策を学ぶ子どもたち。 |
こうした困難な状況に対応するべく、ユニセフは、先週末までに、医師と物流の専門家のチームをこの病院に派遣しました。ハイチ教育省と、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)のボリビアの代表団は、新たなCTCの設置にあたって安定した地盤をつくるために、ぬかるんだ土地に、トラック5台分もの土を運び込みました。
「これで、この場所に1室40平方メートルの仮設病棟(テント)が10室(基)設置できます。これが完成すれば、今、毎日病院で確認されているコレラの感染が疑われている患者を全員隔離収容することができます。」ユニセフのフランク・カシャンド調整官はこう話します。
「テント10基を設置することは、さほど難しいことではありません。しかし、それぞれのテントに、必要な医療機器を設置するのは、容易い作業ではないのです。」(カシャンド調整官) 医療器材や上下水設備も完備したテントには、コレラ治療のために必要不可欠な基本的な装備品も整えられる予定です。
「上水道の確保は、CTC設置にあたって私達が直面している最も大きな課題のひとつです。」カシャンド調整官はこう指摘します。「スペイン赤十字の協力を得て、水は、病院内で浄化され、各テントに供給されるような体制を整える予定です。ユニセフは、水の配布のためのポリ容器なども提供する予定です。」
10室の仮設病棟には、衛生的な環境で最大約100人の患者の治療を施せる病室が備えられる他、医師と看護師のための休憩用のスペースも設けられる予定です。
この小さな病院の外では、未だに大勢の患者が、屋外で治療を受けています。木の枝からぶら下がった点滴が投与され、マットの上で意識不明になっている人々もいます。
「最悪な状況です。人々を助けるための施設が十分にありません。CTCが新たに設置されれば、院内感染のリスクは大幅に低くなるでしょう。」「これは、コレラの感染拡大を食い止めるための大きな一歩です。」
しかしながら、こうした努力がいくらなされても、現地の人々自身がコレラの危険を熟知し、感染予防のための取り組みを実行しなければ、いくら支援が続けられてもその効果はあまり期待できません。ユニセフは、パートナー団体とともに、啓発活動を強化しています。新たなコレラの感染を防ぎ、すでに感染した人々の治療に、医療専門家が集中できるようにするためにも。