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水の汚染で懸念される感染症の流行:フィリピン・ビコール地域

【2006年12月22日、マニラ発】

© UNICEF Philippines/2006/Ruiz

アルバイ州にある避難所では、ユニセフの貯水タンクによる給水が、安全な飲み水を手に入れるための唯一の手段です。

ドラガにある公立病院は人で溢れています。ここ数年でフィリピンを直撃した台風の中でも最悪の被害をもたらした台風21号が去った後、この病院は収容人数を超える数の患者を受け入れています。現在、病院には収容人数より40人ほど多い、290人近くの子どもと大人が収容されています。

「もっとも深刻な問題は水です。」と医師のエリック・レイボラ−氏はいいます。レイボラ−氏は、大きな被害を受けたアルバイ州ドラガのこの病院で緊急保健管理スタッフの調整役を担っています。

台風21号のビコール地域直撃から約1ヶ月がたちましたが、台風によって損傷した配水管システムの修復が進まないため、ドラガの病院には依然として水が通っていない状態です。

この病院で安全な飲み水を手に入れることが出来る唯一の手段は、ユニセフの3つの貯水タンクによる給水です。1つあたり450リットルの水を貯めることのできるこのタンクは、被災後わずか数日で届けられ、病院施設の入り口を入ったところに設置されています。

「このタンクのおかげで本当に助かっています。このタンクは病院で唯一の飲み水の供給源です。」と話すレイボラ−氏は大きな責任を背負っています。タンクはこれまでのところ日に一回水が補給されていますが、このペースでの水補給がこれからも続くという保証はなく、特にクリスマスの時期には水補給の回数が減るのではないかと懸念されています。

貯水タンクに水が補給されるとすぐに、入院患者の親族や病院職員、女性や子どもがプラスチック容器を抱えて貴重な水を手に入れようと駆け寄ります。

「病院の給水システムがいつ復旧するのか見当もつきません。しかし、修復には時間がかると聞いており、早い時期の復旧は難しいと思います。」と、レイボラ−氏はいいます。

台風21号と9月と10月の2ヶ月間に上陸した他の2つの台風によって、村や僻地の衛生環境もまた悪化しています。レガスピを拠点とする州の災害支援調整委員会によれば、村の多くの井戸が洪水で溢れた水で汚染されている可能性があります。

汚染された水は感染症流行の原因となります。レイボラ−氏によると、ドラガの病院だけでこれまでにコレラの発生が6件あり、そのすべてが子どもであるということです。「発生件数はこれから増えていくと予想されます。」とレイボラ−氏は言います。また、レプトスピラ症という、動物の尿を媒介して拡がる細菌性の感染症の発生もみられます。洪水で溢れた水の中を長い間移動していた人々は特にこのような不衛生な水を介して感染する病気にかかりやすくなっている、と彼は言います。

ドラガの病院には下痢が原因で運び込まれる患者が1番多くなっており、その多くは子ども達です。レイボラ−氏によれば、下痢と診断された患者は点滴を受けるのですが、病院では患者数が多いために注射器や他の医療物資が不足しています。

ユニセフはアルバイ州に20リットル容量の水容器と浄水剤パックを各数千個、大型貯水タンクを30個供給しています。また、復興を支援するために、ユニセフはパートナー組織と協力して、破損した町の給水システムを修復したり、被災地の掘り井戸を清掃する活動を行う予定です。

水の問題はアルバイ州で各地に設置された避難所でも悩みの種です。避難所では家を失った数万人が避難生活を送っています。主に小学校に設置された避難所の衛生環境は、もっと多くの子どもが病気になっても決しておかしくないほど悪いものです。

© UNICEF Philippines/2006/Carreon

かつては自分の村があった場所をみつめる男の子、アルバイ州にて。後方には、静かに煙をあげるマヨン火山が見える。

アルバイ州の州都レガスピにあるゴゴン避難所では、約3,000人がたった14のトイレと8つの水道を共同で使用しています。しかも、これらのトイレの中にはひびがはいったり、辛うじて使用可能なものもあります。断続的な雨により地面が水浸しになり、地表に落ちた雨はなかなか順番の回ってこないトイレを我慢することが出来なかった子ども達の排泄物と混ざって汚染されてしまいます。

ゴゴン避難所の近郊、139世帯が生活するブサイ村に設置された避難所の状況も同じくらい悲惨なものです。ここには、トイレが5つと学校の裏に洗濯用の井戸がひとつしかありません。ペットボトルに入った水の配給も行われています。

「トイレが混雑するのは本当に大変です。トイレを使うためにすごく早起きしなくてはならないからです。」15歳のハゼル・ミラフェンテスはいいます。彼女の家族は小さな部屋を他16人と共有しています。しかし、ハゼルと両親や2人の兄弟は、生きているだけでも幸運だったと思っています。ハゼルの家族は、台風によって緩くなった泥とマヨン山の火山灰が山肌を滑り落ち家を丸ごと飲み込んでしまう寸前に避難してきたのです。

現在、避難所で生活している人々のためのテント村をレガスピとドラガに建設する計画が進行中です。ユニセフはテント建設前に給水及び衛生設備がきちんと整備されるよう、建設予定地の視察に参加することにしています。

フィリピンでも特に貧しいビコール地域では、台風21号による災害以前でも、清潔な水を手に入れたり、衛生環境を良好に保つことは非常に難しいことでした。特に農村地域では、多くの家族が災害に弱いつくりの家屋に住んでおり、ビコール地域を頻繁に襲う自然災害によって何回も破壊され、住民達はそのたびに避難と再建を繰り返してきました。子どもたちはトイレの使い方を教わらずに成長します。そのために、多くの子どもや大人が小川や湖、海などで用を足してしまうのです。

「水と衛生はこの地域の大きな課題です。」とユニセフのコリン・デービス氏がいいます。「しかし、水と衛生の問題は貧困と密接に関係しています。貧困は洪水と台風の悪循環によって悪化していくのです。台風21号は近年まれに見る勢力でフィリピンを直撃し大きな被害をもたらしましたが、この危機をさらなる発展のための機会にすることも可能です。しかし、そのためにはより多くの資金が必要となります。」

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