世界のニュース(2)
静かな緊急事態
〜清潔な水と基礎的な衛生設備を利用できない数十億人にのぼる人びと
水道の蛇口をきゅっとひねればきれいな水がすぐに手に入る日本。プールやお風呂、シャワーや洗濯など、日常生活の中で、水が汚れていて困るということはほとんどありません。でも日本に暮らす私たちにとってはごく普通のこんなことが、世界中のたくさんの人たちにとって夢のような現実であることを知ってますか?
現在世界の人口は約62億人ですが、そのうち、約6人に1人、10億人を超える人びとが、安全でない、汚れた水源からくんだ水を今も使っているのです。また、世界全体で26億人、世界総人口の40%を超える人びとが基礎的な衛生サービスを受けられずにいます。ユニセフと世界保健機関(WHO)が、8月に発表した報告書の中で警鐘を鳴らしました。
2000年に開催された「国連ミレニアム・サミット」で、国連加盟国は2015年までにきれいな水や、適切な衛生設備を利用できない人びとの割合を1990年のときの半分に減らすことで合意しました。この報告書では、目標達成までの中間点となる2002年までの進展状況に基づいて、2015年までの目標達成にかんして2つの重要な予測を立てています。
まず、衛生分野に関する世界目標の達成は難しく、5億人もの人びとが目標達成から取り残される恐れがあります。その5億人のほとんどはアフリカ、およびアジアの農村部に暮らす人びとです。これらの地域では廃棄物や病気が広がり、何百万人もの子どもが命を落とし、さらに何百万人もの人びとが死の危機に瀕する可能性があります。飲料水については、世界は目標達成に向けて着実に前進しつつあります。ですが、人口増加のスピードが改善の速度を上回り、2015年の時点で8億人を超える人びとが安全でない水を飲んでいる可能性があります。
「今日も世界中の各地で何百万人もの子どもたちが、生きるうえで必要不可欠なものがないという静かな緊急事態の中で、生まれつつあるのです」と、ユニセフ事務局長のキャロル・ベラミーは言いました。基礎的な社会サービスにアクセスできる人とできない人の間で、格差がますます広がりつつあり、このため毎日4,000人の子どもが命を落とし、さらに間接的に毎年1,000万人の子どもたちの死に結びついています。
今行動を起こさなければ深刻な結果をまねくことになると、ユニセフとWHOは警告しています。下痢性の病気が原因で毎年180万人もの人びとが命を失っていますが、その大部分は5歳未満の子どもです。さらに数百万人の人びとが生涯にわたって続く衰弱体質におちいっています。アフリカでは、たくさんの人たちが気の遠くなるほど長い時間を飲み水を運ぶためについやしています。また、多くの子どもたち、特に女の子たちがトイレがないために学校へ通うことができずにいるのです。
都市部と農村部のギャップを縮めたり、基礎的な衛生教育を行うことによって、このような深刻な被害は予防することができるとユニセフとWHOは報告しています。
基礎的なサービスでの格差を取り除くために、すべての国でまだまだ努力が必要です。ですがまた同時に、非常に勇気づけられるきざしも見られます。政府が積極的に水と衛生問題解決に優先的に取り組んだり、地域にあった対応策をさがした結果、多くの国ぐにで、非常に困難な状況にもかかわらず、水と衛生の分野で大きな改善が見られました。最も貧しい国ぐにでさえ、短期間の間に大きな改善を実現することが可能だということが、今回の報告書で明らかになっています。
資金的な援助だけではなく、国と地方の両方のレベルで、目標にむけた政策を立て、実行すること。民間からの協力を得ること。そして、「一部の人びとにすべてを」ではなく、むしろ「すべての人びとに少しずつ」という原則に基づいて、政策を実行していくこと。
すべての人びとの手に、生きるために最も必要なもの—清潔な水と適切な衛生設備—を2015年までにいきわたらせる—今日の傾向を明らかにし、対策を見直すことによって、多くの人びとにとって今は夢のような物語を現実のものにすることができます。
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