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世界のニュース(2)

アフガニスタンの子どもの命を守るために
〜ユニセフ支援予防接種事業の今〜

—「予防接種をすれば子どもは死なないとラジオで聞きました」

 「この子はもう助からないと思うので、お葬式のための白い布を買いました。もうお乳も飲まないんです。子どもを亡くすのは2人目です」と、水色のブルカ(頭から足まで隠す女性用のかぶり物)から顔を出したリアルマ(写真1)は、カンダハル市の外来医療センターで、青白い小さな赤ちゃんを抱きしめて座っていました。26歳なのに、もう6人の子どもがいます。アフガニスタンでは、7人に1人は1歳の誕生日を迎えることができません。5歳になるまでに、5人のうち1人が亡くなってしまうのです。

 「今日は、子どもたちを予防接種に連れて来ました。ラジオで予防接種をすれば子どもが死なないと聞いたので」とリアルマは話します。

 外来医療センターで、予防接種員として働くアジザ(写真2)によると、一日に50人から80人の子どもたちが予防接種にやってくると言います。「教育を受けていない母親にも分かるように、予防接種のことを説明しています。でも、一カ月後に戻ってくるように言っても、パキスタンの難民キャンプに戻る人もいるし、田舎に行く人もいるし…来なかった人をこちらから探すような仕組みはないんです」

 はしかや百日咳(ひゃくにちぜき)、結核、ジフテリアなどの予防接種は、一定の間隔をあけて、何回か受けなければ免疫効果がありませんが、アフガニスタンの予防接種未完率※は非常に高く(約50%)まだ課題が残ります。

※予防接種未完率:予防接種を1回うけただけで、2回目をうけていない人たちの割合のこと(2回受けないと効果がありません)

—喜ばれる予防接種ボランティア

「タリバン後の一番の大きな変化は、ユニセフと相談の結果、女性を予防接種のボランティアとして採用したことで、今ではカンダハル市内や近郊の552人いる予防接種員の95%は女性です」と言って、ハジナザーモハメッドさんは、ボランティアの一人ファティマを紹介してくれました。

 16歳のファティマ(写真3)は、イランで難民生活を送っていましたが、3年前にアフガニスタンに帰って来ました。「ポリオ・ワクチン全国一斉投与の3日間は、ひとつのバスに、12人の女性とひとりの男性のマネージャーが乗って、郊外へ行きます。場所についたら、教育のある人とあまりない人を組み合わせて、2人でひとつのチームを作って、家をまわるんです。文字を書けるほうの人が予防接種のカードを書きます。朝8時から12時まで、午後は2時から4時までです。治安が心配だから、ブルカをかぶってまわります(写真4)。「この予防接種の仕事で、ポリオを撲滅することに私も協力できてうれしいです。アフガニスタンの将来のためになることだと思うし」とファティマは言います。

—ポリオ撲滅まであと一歩。さらにすべての予防接種へ向けたユニセフの支援

 2004年にアフガニスタンで発生した4件のポリオのうち3件はアフガニスタン南部地域でした。治安が不安定な山岳地帯にまばらに点在する人家をひとつひとつ回るのはとても困難です。このため、南部はユニセフが支援するポリオのワクチン一斉投与の重点地域に指定されています。アフガニスタンで4年前には20件も発生したポリオは、多くの人々の努力の結果、撲滅まであと一歩のところまで来ています。

 次のステップとして、ユニセフは、ポリオ以外の病気も含む予防接種を日常的に行えるようなしくみの強化・支援に力を入れ始めています。ワクチンを低温で保管するための施設や低温で運搬するための手段も、少しずつ整い始めました。2005年の1月5日に、南部地域にワクチンセンターが開設され、100万人分のワクチンをカンダハルで常時保管できるようになりました。南部地域の子どもたちには十分な量です(写真5)。2005年前半にはアフガニスタンのほかの4つの地域でも、同様の支援で、ワクチンセンターが次々にオープンする予定です。

 長い間の戦争の後遺症で、今も深刻な状況が続くアフガニスタンでは、多くの人が悲しみや苦しみを抱えながら、少しずつ前に向かって歩き出しています。

≪記事・写真≫
ユニセフ・アフガニスタン事務所広報官
三谷 純子(みたに・じゅんこ)さん

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