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世界のニュース(1)

絶滅の危機にさらされる民族を救え!
−アマゾン奥地でつづく予防接種キャンペーン

妹をだきかかえる、カンドシ族の女の子。

カンドシ族とシャプラ族。聞きなれない名前ですよね? 周囲の世界から隔絶(かくぜつ)された南米アマゾンの奥地にくらし、豊かな伝統文化を今にひきついでいる民族です。

この2つの民族は、人知れず絶滅の危機にさらされていました。その原因はB型肝炎※というウイルス性の病気。2003年の時点で、B型肝炎は2つの部族の49のコミュニティすべてに広まり、3,000人以上の人たちが肝炎ウイルスに感染していたのです。適切な対応をとらなければ、この2つの民族は、やがて地球上から完全に姿を消してしまうところでした。

この病気の流行や発生をおさえるのにもっとも良い方法のひとつは、生まれたばかりの赤ちゃんに出産後24時間以内に予防接種を行い、生後6カ月になるまでにひきつづきワクチンを与えることです。

ワクチンを受けるカンドシ族の赤ちゃん。

ユニセフはこの2つの民族を絶滅から救うために立ち上がりました。南米の国、ペルーの保健省とともに、アマゾン奥地での予防接種キャンペーンに取り組み始めたのです。民族が暮らす地域までたどり着くのは簡単なことではありません。ペルーの首都、リマから2日半かけてサン・ロレンゾという町まで行き、さらにそこからアマゾンの中を何時間もかけて移動しなければならないのです。キャンペーンをさらに困難にしているのは、民族の“生活”習慣です。彼らは、日本のように産婦人科の病院ではなく、自分の家で赤ちゃんを産むのですが、その家は、地理的に遠く離れているのです。

ユニセフ・ペルー事務所は、民族の中からひとりの男性を選び、トレーニングを行いました。現地の人びとのことをよく知っていて、民族の言葉を話すことができる人。そして何よりも、予防接種を行うことによって、民族を絶滅の危機から救うことができるという信念を持っている人です。

アマゾンの中の遠く離れた場所へは、ワクチンを運ぶには、船をつかわなくてはなりません。
ユニセフはまた、予防接種ネットワークを整備しました。ワクチンは暑さに弱いため、実際に使われるまでの運搬(うんぱん)途中も、一定温度以下に保たれるように管理しなければなりません。そこでユニセフは、7カ所の拠点に太陽電池で動く冷蔵庫を備え付けるとともに、ワクチンと保健員を運ぶためのボートを9せき準備しました。

ユニセフとペルー政府のさまざまな努力の結果、93年のキャンペーン開始以来、298人の新生児のうち245人、82%の赤ちゃんが生まれてから24時間以内に予防接種を受けることができています。キャンペーンでは取り組みをさらに広げて、83人の保健員をトレーニングし、コミュニティの人々に感染予防の知識を伝えるなどの活動にも取り組んでいます。

目標は、B型肝炎を根絶して2つの民族の子どもたちの命と健康を守ること。そして、この地球の片すみで、人知れず豊かに栄える民族の伝統を未来に引き継ぐこと。そのために、ユニセフのスタッフは今日もアマゾンの奥地で活動を続けています。

※ B型肝炎(かんえん)ってなに?

B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によって起こる肝臓の病気です。この肝炎になると、肝臓の細胞がこわれて、肝臓の働きが悪くなります。肝臓の働きには、栄養分をつくりだして貯めておいたり、血液から毒をとりのぞいたり、体に入ってきたウイルスや細菌の感染をふせぐ働きなどがあります。私たちが健康でいるには、肝臓が元気でなくてはいけないんですね。

(参考:厚生労働省ホームページ)

 

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