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No.19
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世界の子ども物語

子どものために、エイズと闘おう

 今から10年前の1995年、“My Friend Forever(マイフレンド・フォーエヴァー)” という映画が放映されました。この映画の主人公は、エリックという少年と、彼の家の隣に越してきたデクスターという少年。そして、この映画のテーマは、「HIV/エイズ」と「二人の少年の友情」でした。エイズという病気を抱えながらも懸命に生きるデクスター少年とエリック少年の、エイズの特効薬を探した一夏の冒険旅行は、世界中の多くの人に感動を与えました。

 しかし、この映画が放映されてから10年経った今、エイズは世界にその被害を拡大し、今では多くの子どもたちを苦しい目にあわせています。世界では、毎分ひとり、15歳未満の子どもがエイズで命を落としています。このエイズという病気に対して、今、世界が一緒になって行動を始めました。『Unite For Children, Unite Against AIDS(子どものために、エイズと闘おう)』という合言葉と共に。

 12月号「世界の子ども物語」では、エイズと世界の子どもたちについて見てみます。

◆ もくじ ◆

  1. .エイズという病気
  2. 広がるHIV/エイズの問題
  3. HIV/エイズが引き起こす問題
  4. 世界の子どもたちは今
  5. ユニセフの取り組み

※本文中の資料は、2005年8月に行われた「ユニセフ子どもセミナー」の講師、橋本さん(エイズ予防財団)が作成したものを一部使用しています。最新の数字については、エイズ予防情報ネットhttp://api-net.jfap.or.jp/を見てください。

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Ⅰ. エイズという病気

「エイズって何?」と聞かれたら、みなさんはどのように答えますか?「恐い病気」、「治らない病気」、それとも、「自分には関係のない病気」と答える人もいるかもしれません。

1.エイズとHIV

「エイズ」とは、インフルエンザなどと同じ、「病気」の一つです。そして、エイズという病気は、「HIV(エイチ・アイ・ブイ)」というウイルスによって発症します。ですので、

エイズ≠HIV

ということを確認しておきましょう。

エイズという病気の正式な病名は、

Acquired ・・・後天性:生まれた後にかかる
mmuno ・・・免疫:めんえきが
Deficiency ・・・不全:うまく働かなくなって
Syndrome ・・・症候群:生じるいろいろな病気の症状のあつまり

これを日本語にすると、「後天性免疫不全症候群(AIDS:エイズ)」となります。

HIVというウイルスの正式名称は、

Human ・・・ヒト:人間の
Immunodeficiency ・・・免疫不全:めんえきが、うまく働かないようにする
Virus ・・・ウイルス

これを日本語にすると、「ヒト免疫不全ウイルス(HIV:エイチ・アイ・ブイ)」となります。

 

2.エイズになると危険なの?

エイズは病気ですから、エイズを発症したら適切な治療を受ける必要があります。

HIVというウイルスが体内に入ると、エイズを発症する恐れがあります。薬を飲むと、HIVというウイルスの働きを遅らせることができますが、エイズが発症する恐れは一生続きます。薬を手に入れることができない人は、HIVが体内に入ってから約8年後に、エイズであると診断できる重い病気にかかります。適切な治療を受けられない人たちの多くは、エイズが発症してから長くても2年しか生きることができません。

薬があるから心配ない、と考える人もいるかもしれませんが、その薬は完全ではなく、病気にかかる恐れはなくなりません。HIVの働きを抑える薬は、医学が進歩した現在でも、完成させることができないのです。ですから、エイズという病気にかからないように、注意する必要があります。

 

3.HIVというウイルスは人をどのようにエイズ(病気)にするか

人は、日常生活で様々なウイルスに接触しています。みなさんもインフルエンザという病気にかかった経験があると思います。インフルエンザも、インフルエンザウイルスによって病気になってしまうのです。

そのようなウイルスから自分の体を守るために、人間が体内に持っているのが「免疫(めんえき):自分で自分の身体を守る仕組み」です。免疫は病気の原因である微生物(ウイルス・カビ・細菌・原虫等)が身体の中に入ってくると、この微生物を殺すか、病気を起こさないように抑え付けます。この免疫という仕組みの中で、重要な働きをするのが、「CD4リンパ球」です。

HIVというウイルスは、このCD4リンパ球を徐々に破壊していくのです。CD4リンパ球は、血液1ml(ミリリットル)中に700〜1500個あります。しかし、HIVウイルスによってCD4リンパ球が破壊されていき、200個以下まで減ってしまったとき、エイズという病気にかかってしまうといわれています。

健康なとき

 

 

免疫機能が弱ったとき
図1:HIVが働いていないときは、CD4リンパ球が身体を健康に保つように一生懸命指示を出します。   図2:HIVがCD4リンパ球を破壊していくと、CD4リンパ球は、人の身体を守るように働くことができなくなります。

このようにして、人の身体を守る免疫という仕組みが弱まり、様々な重い病気(エイズ)にかかるようになっていくのです。

 

4.エイズの病状は?

HIVが人の免疫を弱めることで、身体に23種類の病気(日和見感染症あるいはエイズ指標疾患)のどれか1つの症状が出てきた場合にエイズになる(エイズを発症する)と言います。
HIVが人間の血液中にあるCD4リンパ球を破壊していくにつれ、人がこの23種類の病気にかかる可能性が高くなります。

CD4低下と日和見感染症の図

 

ウイルスは、その種類によって、人間の体の中に存在している場所が異なっています。

例えば、
インフルエンザウイルスの場合:鼻、のど、肺の粘膜に存在している

そして、

HIVの場合: 血液、精液、膣分泌液、母乳 に存在しています。  
  (他の体液にもHIVは存在することがあるが、量が少なすぎて感染しない)

つまり、HIVを体内に入れないためには、HIVに感染している人の「血液、精液、膣分泌液、母乳」に気をつける必要があるということになります。
言い換えると、たとえHIVに感染している人が周りにいたとしても、その人の「血液、精液、膣分泌液、母乳」に気をつけてさえいれば、普段通りに接していても全く問題ないということになります。

次のことに気をつけることで、私たちはHIV/エイズと共に生きる人々と一緒に生活していくことができるのです。

HIVの主な感染経路(うつり方)は次の3つです。

感染経路 感染源
1.セックス(コンドーム等を使用しない) 精液・膣分泌液・血液
2.母子感染 血液・母乳
3.注射器の共用 血液
 

「セックスによる感染」
日本で一番多いうつりかた(90%以上)。


セックスによるHIV感染を防ぐためには、コンドームを使い感染予防対策を。

 

「母子感染」

予防措置を取らない場合 :10〜30%の確率
または、予防措置を取った場合 :2%以下

 

「同じ注射器を使うことによる感染」
(麻薬の打ちまわし)
HIVウイルスを直接血管に入れてしまう可能性があるので、非常に感染の確率が高い。

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Ⅱ. 広がるHIV/エイズの問題

エイズについていろいろ学んできましたが、ここではエイズが世界にどの程度広がっているか地図を使って見てみることにしましょう。

<HIV感染者推計総数 2004年末現在>


 

<2004年におけるAIDSによる死亡者(成人・子供)推計総数>

2004年におけるAIDSによる死亡者(成人・子供)推計総数

 

<アフリカ大陸におけるHIV/エイズ蔓延の推移>


エイズで親を失った兄と妹(ザンビア)。

エイズへの認識を高めようと訴える人々。

 

<南部アフリカ諸国の成人(15〜49歳)のHIVの感染率 (2001年末)>


 

<アジアにおけるHIV/エイズ蔓延の推移>


母子感染のためのセミナーを受ける人々(インド)。

エイズが拡大している地域に住む子どもたち

このように、世界に広がっているHIV/エイズは、多くの問題を発生させています。

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Ⅲ. HIV/エイズが引き起こす問題

1.治療を受ける困難

エイズ治療用の薬と少女

エイズ(日和見感染症23種類)は重い病気です。ですから、HIVに感染してしまったときから、長い治療が必要になります。
しかし、世界にはHIV/エイズの治療を受けられない人たちが大変多いです。

抗レトロウイルス薬(エイズの発症を遅らせることができる薬、しかし根本的な治療にはなりません)を飲むことにより長期間、AIDSの発症を抑えられます。この薬でエイズの発症を遅らせることで、HIVに感染しても、いままで通りの生活を続けることができます。

しかし、

  • 一般的に薬代が一カ月で20万円
  • 決まった時間に決まった飲み方でのまなければならない。
  • 飲み忘れたら、すぐに薬がきかなくなる。
  • さまざまな副作用がある。

などの理由により、抗レトロウイスル薬を手に入れることができない多くの人々がいます。

全世界で薬が必要な人(600万人)のうち、薬が手に入るのは、6人に1人(100万人)だけ。そして、

  • 全世界で薬の必要なHIV感染者の中で、薬を買うことができるのはほんの一部だけ
  • 1日1ドル(120円)でも、貧しい人々には高くて薬が買えない!
  • 薬を飲むサポートをする病院・医師・看護師等が不足している

などの状況は未だに残っているのです。

 

2.子どもへの被害

 HIV/エイズは、おとなの病気として考えられ、そのように対策が取られてきました。しかし、エイズ関連の病気で死亡する6人に1人、そして、新たに感染する7人に1人は15歳未満の子どもたちであるということによって、HIV/エイズがおとなだけの病気ではないという認識が広がってきたのです。

『毎分ひとり、15歳未満の子どもがエイズで命を落としている』

このことを聞いて、どのように感じますか?

『毎日、15歳未満の子ども1400人が、エイズに関係のある病気で命を失っています。』

『毎日、15歳から24歳までの6000人以上の若者が、新たにHIVに感染しています。』

『全世界で1500万人以上の子どもたちが、親(一方または両方)をエイズ関連の病気で失っています。』

 アフリカのみならずアジアでも猛威をふるい始めているHIV/エイズ。世界では毎日14,000人が新たに感染していると言われていますが、その半数以上が青少年、そして、ほとんどが女子であるという事実はあまり知られていません。
また、エイズで親を亡くした子どもが世界で1,500万人、アジアでも150万人を超えています。現在220万人とも言われるHIV/エイズにかかった子ども。HIV/エイズが流行し始めてから20年の間に、支援の手は病気にかかった子どもたちのわずか5%にしか届きませんでした。そして、エイズにより親を失う子どもが増え、エイズ治療が進まない限り、孤児になる子どもの数は増加するばかりです。

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Ⅳ. 世界の子どもたちは今

世界には、エイズによって被害を受けている子どもたちがたくさいんいます。エイズ被害が広がっている地域では、どのような問題が起こっているのでしょうか。世界の子どもたちの今を見てみましょう。

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Ⅴ. ユニセフの取り組み

『Unite For Children, Unite Against AIDS(子どもたちのために、エイズと闘おう)』

この合言葉のもとに、ユニセフは国連エイズ合同計画等のパートナーと力を合わせ、「子どもとエイズ」世界キャンペーンを推進します。

1. 母子感染の予防

ユニセフのボランティアカウンセラー(中央)のケアを受ける母と子

毎年エイズに関係する病気で亡くなる15歳未満の子どもはおよそ50万人。その大半は、母子感染によって生まれながらにしてHIVに感染しています。予防手段があるにも関わらず、そうした支援やサービスを利用できるのは、母子感染のリスクを持つ女性の1割にも満たないのが現状です。

キャンペーンの目標:
2010年までに、HIVの母子感染を防止するためのサービスを、必要とする女性の80%に提供する。

 

2. エイズに感染してしまった子どもの治療

おとな向けのエイズ治療薬による治療法の普及が進む一方、子ども向けの同様の治療を受けられる子どもは、わずか5%以下にとどまっています。

HIVに感染したり、エイズを発症している子どもたちも、日和見感染症の予防薬や抗レトロウイルス薬による治療無しでは生きていけません。子ども向けの治療法の普及がなければ、母子感染が原因でHIVに感染して生まれてくる赤ちゃんの半分が5歳になる前に命を失っている現状が良くなることはありません。

キャンペーンの目標:
2010年までに、エイズ治療に必要な薬を、必要とする子どもの80%に提供する。

 

3. 若者の新たな感染の予防

キャンペーン開始のイベントでスピーチする少女たち

HIV感染の拡大を防ぐ唯一の確かな方法は、新たなHIV感染そのものを防ぐことです。しかし、エイズが世界的に流行してから20年以上経つにも関わらず、世界中で、非常に多くの若者が、HIVがどのように感染するのか、どうしたらHIVの脅威から自分を守れるのかという基本的な知識を持っていないことが、最近の調査で明らかになっています。

若者たちは、具体的な支援を必要としています。感染予防の知識やコンドーム、性感染症の治療、カウンセリングなどが気軽に受けられる場や機会を与える必要があります。

キャンペーンの目標:
2010年までに、HIV/エイズと共に生きる若者の割合を25%減らす。

 

4. 孤児をはじめ、エイズにより困難な状況にある子どもの保護・サポート

南アフリカの子どもが描いた絵。お父さんとお母さんが亡くなり、孤児となってしまいました。

エイズによって両親をはじめ、愛する人を失う子どもが後を絶ちません。大切な人たちの死や、そこまでに至る過程を目の当たりにした子どもたちの心には、深い傷が残ります。更に、特に女の子の場合は、病人や幼い兄弟姉妹の世話、治療・薬代を得るための仕事、農作業など、本来はおとなが担う大変な「おとなの仕事」を担わなくてはなりません。おとながHIV/エイズで苦しんでいる家庭の子どもは、実はすでに親を失ってしまった子どもたちよりも、往々にしてより社会的に弱い立場に置かれます。こうした子どもたちの多くが、食事も満足に摂れず、学校にもいけない状況に置かれます。

キャンペーンの目標:
2010年までに、最も困難な状況に置かれている子どもたちの80%に支援を提供する。

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HIV/エイズは、未だに世界中で多くの人々を苦しい目にあわせているみたいだね。そして、今では、エイズによって親や家族を失うことで、学校に行けなくなったり、大変な思いをしている子どもたちがどんどん増えてきているみたいだね。

 

HIV/エイズは、私たちにも身近な問題になってきているみたいだよ。日本でも、およそ6,000人〜7,000人がHIVに感染していて、年間のHIV感染の報告数も増えつづけているらしいよ。HIV/エイズは開発途上国だけの問題ではなくなってきているんだね。

 

HIV/エイズ被害の拡大を防ぐためには、まず自分が感染しないことが大切なんだね。
そしてこれから、HIV/エイズと共に生きる人と出会うことがあるかもしれないよね。でも普通に生活する分には、HIV/エイズは恐がる必要のない病気なんだよ。

 

HIV/エイズは次のことでは感染しないから、普通に生活するだけでは、HIV/エイズを恐がることはないんだ。

これらのことでは
HIV/エイズは感染しないよ

プール 抱きついたりして
虫や蚊 咳やくしゃみ となりに座って トイレ
文房具 握手して 飲み水 食べ物を分け合って
 

HIV/エイズについて子どもたちがまずできることの一つには、「HIV/エイズについて正しい知識を身に付けること」があるのかもしれないね。

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