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No.23
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世界のニュース(2)

ペルー
〜コカの葉を栽培する地域で、貧しさとたたかう子どもたち

ユニセフは2006年2月に、ペルーで※コカの葉を栽培する地域にすむ、きびしい状況にある子どもたちにスポットをあてた、調査報告書を発表しました。

ペルー中部から南部のある地域に、ペルーでもっともコカの木が育つ場所があります。その地域はおもに農村で、とても貧しい人びとが住んでいます。そのような貧しい地域で、人びとはどのように暮らしているのか、どのくらい子どもたちの権利がおかされているのか、発展への可能性がうばわれているのかが、調査報告されています。

地元の人たちは、基本的な設備を必要としています。たとえば、きれいで安全な水、下水道の設備、医療施設と学校などです。

この調査報告の発表の場で、ペルーのペドロ・パブロ・クチンスキー首相は、子どもたちが命をさずかった最初の頃から、栄養不良や学校教育(とくに子どもたちが最初に通う小学校)の質を改善するために、大変な努力を必要とすることをうったえました。

ユニセフ・米州とカリブ海諸国地域事務所長のニルズ・カストバーグさんは次のように話しました。「私たちは、コカの葉を栽培する地域にすむ子どもたちにかわって困難な状況を伝え、そして子どもたちにきちんとした生活を送ることができるチャンスをあたえてくれたペルー政府へ、感謝をのべたいと思います。村での状況は、子どもたちにとって、とてもかこくなものです。基本的な教育を受けつづけることですら、とても難しい状況です。子どもたちはとても幼いときから働きだし、10代での妊娠はごく普通で、中学への進学率は首都が50パーセントなのに、この地域では24.5パーセントです。わたしたちはより努力をして、子どもたちの生活を変えなければなりません」。

そして、ユニセフ・ペルー事務所長のアンドレス・フランコさんは「私たちは子どもたちが、もっとも貧しく、存在をわすれられた、特に先住民の子どもたちの権利をまもるため、効果的なしくみをつくりあげることをのぞんでいます」と話したあと、「このことでほかのコカの葉を栽培している地域の人たちが、子どもたちの状況を考えることができるきっかけになるだろう」ということもつけたしました。

教育はより良い生活を送るようにするために必要だと考えられていますが、調査によると、進学率が年齢とともに低くなっていっているのがわかります。たとえば、13歳未満の子どもたちの99パーセントが学校に進学していますが、14〜17歳になると、87パーセントの若者しか進学していません。それは、子どもたちを学校に通いつづけさせるためのお金の問題なのです。そこには、働く子どもと若者たちの問題もあります。この地域にすむ90パーセント近くの子どもたちが、家事や家族がもつ畑の仕事をしています。

さらに不幸なことに、地元の人たちの多くは、子どもたちが働くことに賛成しています。子どもたちによる収入が家計のたしになることはもちろん、将来にそなえての経験をつむ機会として考えられているからです。調査報告によると、おとなだけではなく、若者たちも、仕事が教育のさまたげになっているとは考えていません。また、子どもたちは、コカの葉は人の体に毒であるということも信じていないのです。

ある若者はこう言いました。「働けば、もっとかせげる。もし朝6時から仕事をはじめれば、2時か3時には仕事を終えられるから、そんなにつらくはない。コカの葉を運ぶのが疲れても、ほかの仕事より働く時間も少ないし、かんたんだよ」。

調査報告は、この地域での10代の妊娠についても、よくあることと示しています。15〜19歳の女の子のうち、21パーセントが、子どもをもっているか、初めての妊娠をしています。この事実もまた、女の子が妊娠をしたら、学校をやめるという心配の原因にもなっています。そういった子どもたちは教育を受ける権利を否定されています。ほかの子どもたちへの悪いお手本になっていると考えられているからです。

この地域では、女性が妊娠したときに、ちゃんとしたケアをうけることができません。25パーセント以上の母親たちは、この調査で、妊娠中に何も治療をうけることができなかったと話しています。67パーセントの母親たちは鉄分を含む栄養剤をとっておらず、20パーセントは赤ちゃんの※破傷風の予防接種をうけていないのです。この地域の衛生状態は危険なので、破傷風の予防接種はなくてはならないものです。

子どもたちの健康にかかわる問題としては、5歳以上の子どもたちのなかで、下痢になっている子が26パーセント、35パーセントの子どもがひどい咳をしています。呼吸器官の感染症は、雨が多く湿気があるためにおこります。しかし、下痢は、きれいな水がないことや、下水道がととのっていない、衛生状態が悪いということが原因でおこります。公共の水道設備をつなげている家は、35パーセントで、下水道を利用しているのは、わずか5.5パーセントの家だけです。この数字は、おどろくほど低いものです。また、トイレや汚水を処理するタンクをもっている家は、60パーセントです。

子どもたちの成長や発展は、環境に影響されます。子どもたちは健康である権利、教育を受ける権利、ちゃんとした生活を送る権利をうばわれています。このような状況は子どもたちの将来をおびやかすだけではなく、将来まで影響をおよぼすでしょう。

※ コカの葉:コカの木からとれる葉は、「コカイン」の原料になります。幻覚などをおこし、死にいたる場合もある麻薬です。アメリカやヨーロッパ、日本をはじめ、多くの国ぐにで厳しく規制されています。貧しい地域には、コカの葉をかくれて栽培し、密輸しているところも存在します。
破傷風(はしょうふう):土や水などにいる破傷風菌が、傷口からはいって、体のなかでふえてしまう病気。抵抗力のない赤ちゃんにとっては、命とりになります。日本では、赤ちゃんのころに三種(ジフテリア・百日せき・破傷風)混合ワクチンをうけることで、予防します。


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