世界の子ども物語
〜子どもたちが社会的に排除される4つの原因〜
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前回・前々回の記事で、社会からまるで存在しなくなったような子どもたちのストーリーを紹介しました。世界には、社会から排除(はいじょ)されている子どもたちがたくさんいるということが、ユニセフの調査でも分かっています。
そこで今回の第3弾の記事では、世界の、特に開発途上国の子どもたちが社会的に排除される原因について、その主なものを紹介します。日本ではあまり考えられないような原因もあれば、日本においてもけっして軽視できない原因もあるようです。この問題を解決するためにも、まずは問題を生む原因を知ることからはじめてみましょう。
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1. 貧困と不平等
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家で料理用の火を起こす女性と子ども(カンボジア) |
貧しい国ぐにでは、豊かな国よりも多く若い人口を抱えていることが多いです。そして、貧困国でも富裕国でも、貧しい人々の方がより多くの子どもを抱えていることが多いことが知られています。これは言い換えると、世界では、数多くの子どもたちが貧困の中で生活しているということになります。
社会の中で、一部の人々は、いくつもの違った原因によって貧しくなります。地方に住んでいる人々のほうが、都市部に住む人々よりも、より貧しくなる確率が高いと言われています。また、都市部の中でも、スラム(不良住宅が密集し、水道や下水設備などのインフラ整備の不足で、生活状況が悪い地区)の中に住む人々もまた、地方から来た人のように貧しい生活を送っています。
裕福な国に住もうと貧しい国に住もうと、貧しい家庭に生まれた子どもたちは、おとなのように働かなければならないことが多く(児童労働)、また教育を受けることができないことも多いようです。そうすると、将来子どもたちは、社会生活の中でより良い機会を得たり貧困から抜け出すことが難しくなります。教育や情報、ライフスキル、適切な生活水準へのアクセスの欠如は、子どもたちがおとなに成長したときに、虐待や搾取の被害にあいやすくなる原因の一つなのです。
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- 10億人以上の子どもたちが、十分な栄養や安全な飲料水、適切な衛生設備、保健ケアサービス、保護施設、教育、そして情報の欠如により被害を受けています。
- 9億人以上の人たちが、スラムに住んでいます。そして、それらの多くの人たちが、安全な飲料水や改善された衛生設備、十分な居住スペースを利用することができていません。
- 2004年、推定1,050万人の子どもたちが5歳の誕生日を迎える前に、予防できるはずの病気でなくなっています。ワクチンによって予防できるはずの病気で、毎年200万人以上の子どもたちがなくなっています。
- 2003年末、93の開発途上国内で、推定1億4300万人の18歳未満の子どもたちが孤児となっています。
- ストリートチルドレンの正確な数は把握できませんが、世界には数千万人はいると推定されています。
- 国際労働機関によると、2億4,600万人の5歳から17歳の子どもたちが、児童労働に従事していると推定されています。これらのうち、70パーセント近い子どもたちが、鉱山、化学薬品や殺虫剤を使用する農業、危ない機械労働などの危険に満ちた労働状況の中で働いています。そのような子どもたちの中のおよそ7,300万人が、10歳以下の子どもたちです。
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2. 紛争と不安定な国の統治
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元子ども兵だった18歳のラキブ(アフガニスタン)。現在は、国の発展に貢献しようと努めている。
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武力紛争は、子どもたちから一度しかない子ども時代を奪ってしまいます。兵士となった子どもたちは、教育を受けられず、保護されることもなく、また良質な保健サービスを受けることもできません。紛争によって住むところを追われ、難民になったり家族と離れ離れになった人たちも、同じような問題に直面します。
紛争は、子どもたちを虐待や暴力、そして搾取により多くさらすようにしてしまいます。例えば子どもに対する性的暴力は、戦争の道具としてよく使われるのです。
家に家族と一緒に住める子どもたちでさえ、紛争の犠牲者になることがあります。なぜなら、例えば物理的インフラの破壊、保健ケアや教育システム等への負担、地雷による危険の増加などがあるからです。こういったことによって、例え紛争が終った後でも、政府が国民を十分に扶養することができなくなることがあります。
しかし、武力紛争は国家の機能が破綻する唯一の原因ではありません。紛争のない国にも、時として、ひどい政治腐敗や、政情不安定、整備されていない法律や規制などもその原因になっています。これらの国ぐには、「脆弱な国家」と呼ばれ、基礎サービスを子どもたちにさえ供給することができないのです。
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- 推定4,800万人の子どもたち(2003年の世界の全出生数の36パーセント)が、正式に出生登録されていません。
- 推定100万人以上の子どもたちが、紛争に参加した結果、刑務所で生活しています。
- 信頼できる世界統計を作るのは不可能ですが、毎年およそ120万人の子どもたちが人身売買の被害にあっています。
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3. HIV/エイズ
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HIVに感染している母親とベッドの上で遊ぶジョアオ6歳とジェシカ4歳(ブラジル)
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HIV/エイズの被害にあっている、HIV/エイズに感染している、またはHIV/エイズの感染率の高い国に住んでいる子どもたちは、親や教員、保健ケアワーカー、その他のおとなたちが病気になったり亡くなったりすることで、基礎サービスやケアや保護を受けられなくなる極端に高いリスクに直面しています。HIV/エイズの流行は、子どもたちの保護における最初のとりでである家族を壊滅させます。およそ1,500万人の子どもたちが、もうすでに少なくとも1人の親をなくし、数百万人かそれ以上の子どもたちが、HIVによって被害を受けた家族、地域、地方、国ぐににおいて脆弱な存在となっていると言われています。
親や養育者の死は、子どもたちに、小さいのにおとなのように働いたり、それにより教育や基礎サービスを受けられなくなるなどの大きな負担を与えています。これらの子どもたちは、コミュニティにおいて偏見と差別に直面し、暴力や虐待、そして搾取によりさらされるようになるのです。
全世界で、今HIV/エイズとともに生きる人々のおよそ3分の1は、15歳から24歳の間の若い人たちなのです。
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- HIV/エイズによって親をなくし孤児となった子どもたちは1,500万人おり、そのうちの80パーセント以上がサブサハラ以南のアフリカに住んでいます。
- 毎日、15歳未満の1,800人の子どもたちがHIVに新たに感染しています。世界のHIV感染者の13パーセントは15歳未満の子どもたちです。そして、毎年のHIV/エイズによってなくなる人たちの17パーセントも、15歳未満の子どもたちです。
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4. 差別
子どもたちか彼らの養育者のどちらかが貧困地域にすんでいるか、文化や言語の壁に直
面していると、子どもたちは重要な社会サービスを受けられないことがよくあります。しばしばジェンダーや民族的原因、そして障害を理由とする差別によって、子どもたちの保健、生存率、学校への参加における不平等が生じています。
(1) ジェンダーによる差別
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アルメニアにある子どものための施設で、ベッドの上に横たわる女の子と鏡をみる女性。女の子たちは、家庭内暴力や性的虐待、人身売買などの被害を受けやすい。
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教育におけるジェンダーの不平等は、100人の初等学校に行かない男の子に対し、女の子では117人が初等学校に行かないという結果として現れています。中等教育におけるこのジェンダーギャップは、さらに拡大します。女の子たちは、社会の中で男性と同じような地位を獲得することに資する知識や技術、考え方、価値観を身に付ける機会をより失いやすいのです。ジェンダーにおける不平等は、最終的に子どもたちが重要なサービス、例えば保健サービスから疎外されることにつながり、またそれは、妊産婦死亡率や乳幼児死亡率を高めることにもなります。
(2) 民族性による差別
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アマゾンの先住民族出身のアルビナ12歳。病気の家族にあげる薬を手に入れるために、鶏を売ろうとしている。
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世界には、5,000の異なった民族が存在し、200国以上に、相当規模の少数民族や宗教グループが存在しています。悲しいことに、一部の民族は、しばしば差別に直面します。9億人ほどが、偏見をもたれたことのある民族に属しており、その中の3億5,900万人の人々が彼らの宗教に何らかの制限を加えられています。
世界中で、3億3,400万人が言語によって差別を受けています。例えばサブサハラ以南のアフリカの30カ国以上の公用語は、その国で最も良く使用されている言語以外の言葉 となっています。そして、こういった国の13パーセントの子どもたちが、公用語ではない母国語による教育を受けているのです。そのような子どもたちが通常の学校教育を受けることがどのくらい難しいかは簡単に予想できます。独自の文化や言語の権利をしばしば主張する先住民族コミュニティの子どもたちもまた、差別に悩まされることがあります。彼らは、出生登録されることがより少なく、健康上の問題や虐待、暴力、搾取、教育の欠如などにより直面しやすいのです。偏見は、民族や先住民族のメンバーの政治参加の機会やその他の機会を制限し、究極的には、武力紛争や民族間での暴力を引き起こす原因となっています。
(3)障害
開発途上国に住む障害を持っている子どもたちの多くは、保健ケアや支援サービスを利用することができず、多くの子どもたちが正規の教育を受けることができていません。障害児は、しばしば地域での生活から離脱します。
開発途上国に住む多くの障害児たちは、乳幼児期または母親のお腹の中で、適切な栄養や保健ケアが十分でなかったために障害を負うことになりました。しかしながら、原因は何にせよ、障害児が人生の中であらゆる機会を確実に持てるために、注目される必要があります。
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- 70以上の国ぐににおよそ3億人の先住民族が住んでおり、その内の半数近くがアジアに住んでいます。先住民族の多くは、社会からの疎外に直面しています。
- 世界には1億5,000万人の障害を持った子どもたちがおり、障害児の多くが、いろいろな形態の差別を受けています。
- 2004年末の時点で、世界の難民のおよそ48パーセントが子どもたちでした。同じ年、およそ2,500万人が、紛争や人権侵害によって住んでいた国を追われました。
- 2005年、15歳から24歳の南アジアの女性たちの48パーセントが、18歳になる前に結婚しました。
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さまざまな原因によって、被害を受けている子どもたちが世界にはまだたくさんいるんだね。
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きっと、今回紹介された原因がいくつも重なって、簡単には問題を解決できないのかもしれないね。でも、少しでも早く解決できるように、同じ子どもとして、私たちにもできることを考えてみましょう。
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