世界の子ども物語(2)
FGM/C撲滅へむけて
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みなさん、2月6日は、何の日だったか知っていますか?2月6日は、The
International Day of Zero Tolerance
of Female Genital Mutilation=FGM(エフ・ジー・エム)に対するゼロ・トレランス(断固とした措置、いかなる違反も許さない)国際デーです。FGMを撲滅(ぼくめつ)しようという目的で定められた国際デー、女性と子どもの権利を促進しようという日です。皆さんは、FGMとは何か、知っていますか?毎年300万人の少女たちがFGMの危機にさらされています。今月は、みなさんとFGMについて考えてみたいと思います。
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1. FGM/Cとは?
FGM/Cについて聞いたことがありますか?FGM/C(時に、FGM)とは、Female Genital
Mutilation/Cutting、つまり女性器の暴力的な切除・縫合を意味します。この卑劣な行為により、少女たち、女性たちが、取り返しのつかない一生涯にわたる健康の危険にさらされています。
今日、アフリカで性器を切除された女性たちは、驚くべきことに、1億人から1億3千万人いると推定されています。FGM/Cを経験した少女たち、女性たちの大半は、アフリカ28カ国に住んでおり、また中東、アジアの一部にもいるといわれています。最も広くFGM/Cが行われているのが、ギニア(アフリカ)で、女性の99%に対し、FGM/Cが行われています。また、近年は、ヨーロッパ、オーストラリア、カナダ、アメリカにいるアフリカやアジア南西部からの移住者の中でもFGM/Cが行われていると報告されています。
なぜ、FGM/Cが行われるのでしょうか?
主に以下の理由があります。
性的理由:
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女性の性行為、性欲を抑えたり、減らしたりするため。 |
社会学的理由:
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女性になるための儀式(成人になるための通過儀礼)、社会的一 体性を維持するため。 |
衛生と美的理由:
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女性器は、不潔で醜いと信じられているため。 |
健康的理由:
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FGM/Cが多産と子どもの生存を高めると信じられているため。 |
宗教的理由:
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宗教上、FGM/Cが必要条件であると信じられているため。 |
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FGM/Cの主な犠牲者は、まだ幼児である4歳から14歳の子どもたちです。ある国々では、FGM/Cの半分が1歳未満の乳児に対し行われています。例えば、エリトリア(アフリカ)では、FGM/Cを受ける人の44%が、マリ(アフリカ)では29%が1歳未満の乳児です。
FGM/Cは、少女たちの権利を無視し、侵害しています。FGM/Cは、残酷で差別的な行為であり、基本的人権を侵害しています。例えば、機会均等、健康、暴力からの自由、有害で伝統的風習からの保護など、これらはみな、国際法で保護されています。
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2.FGM/Cの引き起こす危険 FGM/Cは、女性たちに回復できないほど大きな損害を与えます。一般的に、切除はその土地の助産婦たちによって行われ、麻酔も使用せず、不衛生な刃物や縫い針などが使われます。
切除時の大量出血や出血のショック、苦痛、トラウマによる神経性ショック、激しい感染症をまねいて、最悪の場合には死に至ることもあります。
FGM/Cは、通常心に傷が残ることが多くあります。多くの少女たちが、激痛や心理的トラウマ、絶叫による疲労からショック状態に陥ります。
他にも多大な健康被害を与え、尿路感染症(尿の通り道に細菌が感染して炎症を起こす病気)、HIV/エイズ、肝炎、不妊症になりやすく、尿失禁、苦痛な性交や月経、分娩時の大量出血などの後遺症に悩まされます。
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3.ニジェールの子どものお話
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11歳のアイチャは5歳の時に、彼女の妹は7歳のときにFGM/Cをうけました。彼女たちは、今ニジェールの農村の学校でFGM/Cのもたらす健康危機について学んでいます。 |
11歳のアイチャは、ニジェールのコンバ村出身です。彼女は、5歳の時にFGM/Cを経験しました。「その時のことについてはあまりよく覚えていません。だけど、私たちの村で行われたというのは、覚えています。」と彼女は振り返りました。
「私の小さい妹、ファティマがFGM/Cをうけた時のことは、覚えています。3年前のことでした。彼女は、放課後、村から遠い森の中へ行くように騙されました。彼女が戻ってきたときは、彼女は泣いていました。彼女の足から血が流れ落ちていました。私は、とても悲しかったです。何が起きたか分かりました。お母さんになぜ彼女がと聞きました。私は、それは女の子にとって良くないことだと言いました。」
アイチャは、お母さんがFGM/Cは伝統だからと説明したのを覚えています。アイチャが7歳だった頃、いとこのアリマの順番がやってきました。「何をされるのかわかっていました。アリマは逃げようとしましたが、結局捕まりました。彼女は一日中、出血が止まりませんでした。その夜、アリマは意識不明になりました。アリマは病院へ連れて行かれて5日間入院しました。今でも病院に度々行かなければならなくて、今でもアリマは痛みを感じています。」
このような少女たちが若い時にこのような悲惨な経験をすることにより、身体的にはもちろんのこと精神的にも一生傷が残ってしまいます。
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4.エジプトの母親のお話
エジプトも、広くFGMが行われている国の一つです。エジプトでは通常、9歳から12歳の少女たちにFGM/Cが行われます。母親たちは、そんな経験を子どもたちに絶対させたくないと願っています。
「女性たちが早朝、私の家に来て、私を抱き上げ、横たわるように命令しました。私の手と脚は、しっかり押さえつけられ、ほとんど動くことができませんでした。彼女たちは、私の脚を広げてダヤ(村の助産婦のこと)が性器を切除し始めました。その痛みは、非常に耐え難いもので、私は抑えきれず、泣き叫んでいました。」とナグラは、語りました。「ダヤは、永遠と思えるほど長い間、切除を続けました。それがどのくらい続いたかは覚えていません。だけど、こんなに苦しい痛みを経験するとは、想像していませんでした。」
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ナグラとモナ。「娘モナには、私のような経験を絶対にさせません。」 |
ナグラは、11歳の時に性器を切除されました。ナグラは、自ら進んでFGM/Cをうけることを申し出ていたのです。エジプトの社会では、FGM/Cは文化的に受け入れられていて、またうけるようにすすめられます。ナグラの家族も、性器切除は道徳的義務で、真の女性となるための唯一の方法であると言いました。ナグラは、灰が傷を治すと聞き、オーブンから灰を集め試してみましたが、逆に感染症にかかってしまいました。
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絵を見せるモナ |
今、ナグラは、26歳。結婚して8歳になる娘、モナがいます。ナグラは、去年の7月までは自分が経験したのと同じ辛い苦痛なFGM/Cをモナに経験させる他、仕方ないと思っていました。彼女は、汚名を着せられることなく、結婚の時に相手に受け入れられるためには、少女にとってFGM/Cが必要条件だと思っていました。ナグラのお母さんは、FGM/Cについての研修会に出席するよう、ナグラを説得しました。彼女は、研修会で宗教指導者、医者、NGOからの専門家らが、FGM/Cが引き起こす複雑な身体的結果について話し合っているのを聞きました。宗教指導者たちは、FGM/Cのような慣行に正当な理由はないと参加者たちに確信させました。「これから私は人々がFGM/Cを受けていない娘に関してとやかく言おうとも気にしません。」とナグラは堅く心に決めて言いました。「私のこの決定によってモナは、一生涯の苦しみを避けられます。そして私や私の母親よりも健やかな生活を送ることができるでしょう。」「もし、男性がモナがFGM/Cを受けていないことを理由にモナを拒否したとしても、私はモナの味方です。」「もし、母親が娘を愛しているならば、何よりも教育や健康を優先してあげなければいけません。これが、私がFGM/C撲滅プログラムに参加した理由です。」
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5.スーダンの宗教指導者のお話
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シャイフ、アリ・ハシム・アル・スィラージとその姪たち |
スーダンでは、多くの宗教指導者たちが、FGM/Cに関する深く根ざした信念に疑問を抱き、そのような慣行を終わらせようと活動しています。
シャイフ、アリ・ハシム・アル・スィラージは、そのような宗教指導者たちのうちの一人です。「1985年の夏でした。小屋から大きな泣き叫ぶ声が聞こえてきました。その家には、夫婦と娘が住んでいました。娘が8歳になり、慣習でありお清めであるFGM/Cを娘に経験させなければいけないと妻が夫を説得していたのです。」「助産婦が来て切除に取り掛かりました。娘は、『お母さん、助けて。お願い!』『お父さん、助けて!』と助けを求めました。しかし、突然その娘は、静かになり、泣き止みました。母親は娘の名前を呼びました。『アムナ、アムナ、私と話してちょうだい!』でもアムナは、答えませんでした。そして彼女は亡くなりました。」
「アムナの話は、村中に知れ渡り、葬式の日に哀悼の意を表した村人たちが私に聞きました。『この慣行は、私たちの宗教で教えていることなのでしょうか?』アムナの出来事がきっかけとなり、イスラムの教えについて深く掘り下げて調べてみました。そしてこの慣行はイスラム教とは何の関係もなかったという結論に達しました。」
1992年に政府はFGM/Cに注目し始め、アリ・ハシムは保健省、一次医療部門での特別プログラム委員会のメンバーに選ばれました。2002年にはユニセフ・スーダンの支援を受けてFGM/Cのルーツと宗教の役割について書いた本を出版しました。20年間にわたり、彼はFGM/Cを終わらせるための活動に努めています。
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6.FGM/C撲滅へ向けて
FGM/C撲滅へ向けて各地で様々な活動、キャンペーンが行われ、良い影響を与えています。
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ニジェールでは
ニジェールのアリマは、コンバ村でFGM/Cを受けた最後の少女となりました。FGM/Cはそれ以来、コンバやその周辺の村と4つの地域で廃絶されました。かつてFGM/Cは禁止された話題でしたが、FGM/Cの危険性は、政府からも認知されており、村の学校でも話し合われています。2003年、ニジェール政府は、FGM/Cを行うことへ対して罰金や実刑判決を求める法律を制定しました。
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ブルキナファソでは
ブルキナファソ(アフリカ)では、1990年代にFGM/Cを撲滅するキャンペーンを始め、1996年には正式に違法と定められました。FGM/Cが違法になる前は、少女たちの3分の2がFGM/Cを受けていました。法律は、FGM/Cを遂行しようとするものは誰でも、3年の刑、もし被害者がFGM/Cにより死亡した場合は、10年の刑に処されると定められました。人々が法の違反を報告したり、少女たちがFGM/Cを受けるように脅迫された場合に匿名で電話できるよう、ホットラインが設立されました。ユニセフの最新の統計によると、アドボカシー活動と法律の制定により、少女たちのFGM/Cの発生率を32%まで削減することに成功しました。
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セネガルでは
セネガルではNGOが教育プログラムを通してFGM/Cについてコミュニティの中で対話を築き上げるために活動しています。人権や人間の尊厳について教え、多くの人々がそのような慣行の廃絶を宣言しています。その結果、1600の村は共同でFGM/Cを止め、その数は、FGM/Cが行われていた全体数の30%以上となりました。
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FGM/C撲滅は、大変難しい課題ですね。私たちの文化から見て残酷なことであっても他の文化では、当たり前のように行われていたりする風習があるんですね。
もし家族や周りの人たちみんながそうしていれば、子どもたちもそれに従うのは普通のことかもしれないね。特にFGM/Cが女性になるための有益な儀式だと信じられていたら、少女たちはFGM/Cを受けるかもしれないね。それにFGM/Cが、宗教上必要条件だと言われたら、どうするでしょう?
FGM/Cのもたらす危険、正しい知識を持つことが大切ですね。
FGM/Cは慢性的に根付いている文化的風習です。タブーな話題として避けられがちで、他の国々のメディアに劇的に注目されたり、取り上げられることもないのです。
日本には、FGM/Cのような慣習はありませんが、同様に子どもの人権を無視した児童買春、児童虐待などといった問題にも取り組む必要性があると認識させられます。
きっと、今回紹介された原因がいくつも重なって、簡単には問題を解決できないのかもしれないね。でも、少しでも早く解決できるように、同じ子どもとして、私たちにもできることを考えてみましょう。
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