世界の子ども物語
「栄養と世界の子どもたち」
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今では、日本は着るものにも食べるものにも困らず、世界でも大変豊かな国のうちの一つですが、第二次世界大戦後の1949年から15年間、脱脂粉乳や衣類を作るための原綿、医薬品などユニセフから65億円相当の援助を受けていました。食べるものが豊富になく、お腹がすいても我慢することが普通の時代でした。それでも今よりもずっと質素な食事を喜んで食べていました。
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みなさんは、学校で出される給食や家族の人が作ってくれるお食事を感謝して食べていますか?物があふれ、食べものがあることが当たり前になってしまった日本人の私たちにとって、食べるものがなく、栄養不良で亡くなっていく人たちが世界にはたくさんいるということを忘れがちではないでしょうか?
今回は、栄養と世界の子どもたちについての報告です。
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ジンバブエの小学校で昼食に並ぶ子どもたち。 |
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ケニアの施設で子どもたちが昼食のウガリ(トウモロコシ紛の粥)と豆の皿を分ける様子。 |
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ソマリアでトウモロコシの実を手でふるい分ける女性。 |
1.ユニセフの栄養問題における優先課題
子どもの健康促進は、ユニセフの取り組みにおける優先課題のうちの一つです。安全な飲み水が与えられること、病気を防ぐために予防接種を受けることなどと同様に適切な食糧が供給され、良い栄養状態を保つことは、子どもたちにとって大変重要なことです。
栄養不良は、貧困や子どもたちの発育不良など悪循環の要素の一つです。ユニセフは、母親と子どもの栄養状態、特に妊婦のケア、母乳育児、3歳までの脆弱な子どもたちのケアに焦点をあてて活動しています。
ユニセフは、栄養問題の優先課題に以下の7項目を挙げています。
(1)栄養の安全性と非常時の栄養を確保する
幼い子どもたちや妊娠中、授乳中の母親たちは非常事態に極めて危険にさらされやすくなります。ユニセフの重要な課題は、飢餓や病気による死を防ぎ、母乳育児や治療用の補助的授乳の促進を支援することにより栄養不良を減らし、また微量栄養素を提供し、孤児たちに食糧を供給することです。
バングラデシュでは、大洪水の災害で子どもたちの栄養状態が深刻化しています。
★バングラデシュ:洪水に見舞われた子どもたちへビタミンを!
(2)乳幼児成長率を視察する
発育不良は、全体的な体の健康状態と密接に関わり、世界の3分の1の子どもたちは発育不良であるといわれています。ユニセフは、政府やNGOと連携し、乳幼児の成長を観察することや子どもたちを病気から保護することなど様々な問題に取り組んでいます。
★ニジェール:コミュニティーガーデンプロジェクト
(3)コミュニティに根ざしたプログラムを支援する
家族やコミュニティは子どもたちの栄養不良との闘いにおいて重要な役割を果たします。家族とコミュニティは、問題を解決するために共に分析し、評価し、行動していかなければいけません。ユニセフはこの方法でコミュニティのメンバーが自分たちで行動していけるよう、支援しています。ユニセフの役割は、政府と共同でコミュニティに根ざした参加型のプログラムを支援し、子どもたちの生存と発育に力を入れることです。
南インドの“タミール・ナデュ栄養プログラム”とタンザニアの“イリンガプログラム”は、最も大きな栄養プログラムです。タイ、カンボジア、インドネシア、スリランカ、バングラデシュ、ウガンダ、ケニア、マダガスカル、ガーナ、ニジェール、オマーン、ブラジルなどで同じようなプログラムが実施されています。
ニジェールの村では、ユニセフからヤギが配給され、家族の栄養と家計を支えています。
★ニジェール:ヤギが村の食糧危機を救う!
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赤ん坊に授乳するバングラデシュの母親。 |
(4)幼児と子どもの授乳とケア
ユニセフは、出産直後から6ヵ月間の完全な母乳育児と継続的な母乳育児を促進するとともに、2歳くらいまでの子どもには年齢に適した離乳食を与えるようすすめています。また、ケアや授乳方法について家族を教育しています。最終的な目標は、すべての女性が子どもたちの発達を最大限に促進できるような授乳や食事の与え方を身につけることです。
(5)必要不可欠な微量栄養素を供給する
微量栄養素は、食事の栄養価を高め、子どもたちの発育と母親の健康に大変良い影響を与えます。ユニセフは、政府と協力し、補助食品や栄養素の高い食品の利用促進などを通して必須のミネラルやビタミン(ヨウ素、鉄分、ビタミンA、葉酸塩)を供給しています。ビタミンAとヨウ素不足をなくすという目標を達成するために、ユニセフは様々なグループと共同で“ビタミンAグローバルイニシアティブ”といった同盟を結んでいます。
★子どもたちの視力と健康を守る!
(6)栄養とHIV
ユニセフの中心的な取り組みの一つは、HIV/エイズとの闘いです。母乳育児などによる母子感染を削減したり、HIV陽性の患者やHIV/エイズによって影響を受ける孤児たちやHIVとともに生きる家族がいる家庭に住む子どもたちの栄養のニーズに応えています。この栄養とHIV/エイズへの取り組みでは、検査を希望する人に対して他の人に知られることのないようにHIV検査を実施し、妊婦へ母乳育児についてのカウンセリングを提供したり、政府がHIVのガイドラインを利用して幼児や子どもたちへの授乳方法を改善するのを支援し、病院でも幼児への最善の授乳方法を促進しています。
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ナイロビのキベラ・デイケア・センターで食事をもらうエイズで親を亡くした子どもたち |
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深刻な栄養不良を治療した後、自分で食べられるようになったニジェールの男の子。 |
(7)栄養と関連性のある問題と対策
栄養不良や食糧危機の問題は、食べ物の供給だけで解決できる問題ではなく、水と衛生施設、予防接種の実施、基礎教育、子どもたちの保護など多様な問題を見直すことによってはじめて解決できるものです。そういった様々な分野におけるプログラムが一体となって、子どもたちの栄養不良の削減に貢献することができるのです。
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食糧危機、栄養不良と闘う子どもたち
2.バングラデシュ:洪水に見舞われた子どもたちへビタミンを!
2004年に起きた大洪水の後、バングラデシュの1800万人の子どもたちが生命を救うためにビタミンAを受け取りました。しかし、いまだに100万人の子どもたちが厳しい栄養不良に直面しており、この危機はさらに続くものと思われます。
多くの子どもたちは洪水の前から栄養不良でしたが、今はもっと危険な状態にさらされているため、全国的にビタミンA摂取キャンペーンが始まりました。「子どもたちの栄養状態はとても深刻です。」とバングラデシュのユニセフ、フィールドオペレーションのチーフは言います。「ビタミンAをとると、子どもたちの体力が高まり、病気に抵抗する力がつき、子どもたちが健やかに成長することができます。」
洪水は2004年7月から9月にかけてバングラデシュに打撃を与え、数十万人の家族の生活を破壊しました。今でも子どもたちは栄養不良の危機とビタミンA不足と闘っています。
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ビタミンAをもらうバングラデシュの子ども。 |
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ビタミンAの錠剤をもらうために列に並ぶバングラデシュの子どもたち。 |
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ユニセフが支援するコミュニティーガーデンで食物を栽培する子ども。 |
3.ニジェール:コミュニティガーデンプロジェクト
ニジェールの人々は今、栄養危機と闘っています。ある村では、コミュニティガーデンが食べ物の源となり、子どもたちが栄養危機の影響を受けるのを回避するのに役立っています。ユニセフは、50の“コミュニティガーデンプロジェクト”を支援し、井戸を掘ったり、種や肥料、殺虫剤、用具を提供しています。最終的な目標は、村の子どもたちが栄養のある食物を食べることができるようにすることです。庭では、トマトや玉ねぎ、にんじん、豆、キャベツ、じゃがいもなどを栽培しています。
「収穫された野菜は、まず村の子どもたちに優先的に与えられます。」ユニセフのアシスタントプロジェクトオフィサー、アバ・アイサタ・シディは言います。「収穫が多くあるときは、市場で野菜を売り、お金を貯めることもでき、彼らの生活に大いに役立ちます。」
“コミュニティガーデンプロジェクト”を支援するために、ユニセフはコミュニティの中で子どもたちの成長を観察するグループを訓練しています。彼らは、栄養不良を妨げるため、子どもたちの身長や体重を記録し、成長を定期的にチェックしています。グループは、女性たちにも参加してもらい、ニジェールに栄養のオアシスをつくろうと呼びかけています。
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ヤギは、マラディの子どもたちに食糧を与え、家族に収入をもたらします。 |
4.ニジェール:
ヤギが村の食糧危機を救う!
ユニセフは、ニジェールの食糧危機が最も深刻なマラディ地域で150の村にヤギを提供し、このヤギは食糧危機を回避するために役立っています。ヤギは、ミルクやチーズ、お肉、その上家族に収入をもたらしてくれます。
「子どもたちを見てください。健康で幸せいっぱいです。」サフォナサラワ村に住むサフィアトウは言います。「メスのヤギを2頭もらいました。当時子どもたちは、栄養不良でしたが、ヤギのミルクが子どもたちのために大変役立ち、お金がかからずミルクを子どもたちにあげることができます。」「私は、チーズを作って売っています。ヤギが何頭もいるときは、食肉として売ることもできます。そしてそのお金で穀物を買い、子どもたちが病気になったときのための薬を買います。」
ユニセフは、各村にヤギを繁殖させるために何頭かのオスのヤギも提供しています。お母さんヤギは、年に2回平均3頭のヤギを生みます。今では、サフォナサラワ村に700頭のヤギがいます。
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サフォナサラワ村のお母さん、サフィアトウはユニセフから2頭のヤギを受け取りました。 |
サフォナサラワ村では、ユニセフの訓練を受けたモニタリンググループが子どもたちの成長を観察し、家族がヤギを受け取ることにより十分な利益を得られているかどうか経過を見ています。モニタリンググループは、女性たちに子どもが生まれてから6ヵ月間は母乳育児を徹底するなど、子どもたちにとってもっとも望ましい栄養摂取方法についてアドバイスをしています。
ユニセフ・ニジェールは、ニジェールのコミュニティに12000頭のヤギを提供し、何千もの家族たちを食糧危機から救っています。この方法は子どもたちを栄養不良から保護するのに大変効果的です。またコミュニティの機能が活性化し、将来同じような危機が起こることを妨げるステップとなります。
2005年8月11日
マラディ、ニジェール
ケント・ページ、クン・リー
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ビタミンAをもらうミャンマーの子ども。ユニセフ・ミャンマーは500万人の子どもたちにビタミンAを提供しました。 |
5.子どもたちの視力と健康を守る
数年前、ミャンマーでは、何千人もの子どもたちがビタミンA不足で視力障害になったり、失明したりしました。ユニセフは子どもたちを治療し、視力をそこなうことなく成長できるよう取り組んでいます。
ミャンマーの大半の子どもたちの食事は、バランスがとれていません。医療従事者たちは、遠くへんぴな村へ足を運び、子どもたちを訪問し、ビタミンAを配っています。またどのように子どもたちに健康でバランスの取れた食事を与えたらよいかを両親たちに教えています。
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ビタミンAをもらうミャンマーの子ども。 |
わずか数粒のビタミンAをもらうだけで子どもの生活は、大きく変わります。「ビタミンAは私の子どもを病気から守ってくれます。病気になったとしてもすぐに回復できるようになります。」と息子を持つ母親は言います。「ビタミンAは子どもの視力を保ち、視力障害や夜盲症になるのを防いでくれます。」
ユニセフは、ほとんどのビタミンAカプセルを供給し終わってしまいました。次の世代の子どもたちが健やかに成長できるようこの活動を続けていくためには、さらに15万ドルが必要だと言われています。
2005年10月27日
オッカラパ、ミャンマー
ジェイソン・ラッシュ
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6.東ティモール:発育不良の子どもたち
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ダイアナは、ディリ国立病院に3週間入院し、栄養不良から回復しました。 |
ダイアナ・ダ・コスタの大きな輝いた瞳は、家の外でほこりにまみれながら鳥たちと遊ぶ子どもたちをおっています。もうすぐ彼女は2歳の誕生日を迎えます。小さなダイアナは、6.5キロしかなく、生後6ヵ月ほどの赤ちゃんと同じ体重です。
ダイアナは病院に3週間入院し、徐々に体力を取り戻しました。彼女はユニセフから供給された栄養価の高い飲み物である治療用のミルクと食事を与えられ、体重は徐々に増えました。
東ティモールでは、5歳未満の子どもたちの約半数が栄養不良、低体重、発育不全で苦しんでいます。ダイアナの状態は改善しましたが、ミルクは病院でしかもらえないため、今は家族が買えるだけの食べ物しかありません。それでも彼女の食欲は前に比べるとだいぶ良くなりました。
ダイアナの家は、大家族で15人の子どもたちがいます。そのうちの5人はすでに亡くなりました。お父さんは、それは運命だと考えていて医療従事者たちはよくあることだとも言います。「大家族の中では、いつも下の子たちの方が苦しむのです。」と東ティモールの幼児プログラムのプロジェクトオフィサーは言います。「ダイアナのように、幼い子どもたちの声は弱く、両親が日々生存のために闘っている中で彼らの叫びは失われてしまうのです。」
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