世界のニュース(1)
紛争下に生きる子どもたちの声 〜中東でおこっていること
中東のイスラエルとレバノンでおこった紛争のことを、みなさんもよく知っていると思います。2006年7月12日にイスラエルとヒズボラの衝突(しょうとつ)が始まってから、レバノンで命をうしなった人の数は1,187人、けが人は4,000人以上にものぼっています。犠牲者のほとんどは一般市民で、30%は子どもと推定されています。8月14日に停戦したものの、被害を受けたレバノンの子どもたちの状況は深刻で、ユニセフは支援活動をつづけています。今回の中東での紛争下で生きる子どもたちの声をみなさんにお伝えします。
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© UNICEF/HQ06-1061/Brooks |
レバノンの首都ベイルートに煙があがっているのを、丘からみつめている男の子。 |
イスラエルのガザ地区にすむヤスミンさんは13歳。ヤスミンさんは、これまでの自分のくらしが、今のような毎日とちがって恐怖におそわれることなく、どんなにすばらしかったかを話してくれました。「今は泳ぎに行くこともできないし、どこに行くこともできないの。電気不足でインターネットだってつかえないわ。水不足でシャワーだってあびることさえできないんだもの」。
14歳のシュキ君は、イスラエル北部にあるキリヤト・シモナという街にくらしています。「これまでは自由に歩き回ることができた。おだやかな街だったんだ」。両親はシュキ君をこの街よりも安全なエルサレムの親戚にあずけました。エルサレムに来た今でもこう言います。「どんな小さな音でもビックリしてしまうんだ。たとえここが安全な場所だとわかっていてもね…」。
中東に住む子どもたちは、日ごろから恐怖にさらされています。20歳のマーゼンさんは大学生で、レバノンの首都ベイルートにある、住むところを失った人びとがくらす避難所でボランティア活動をしています。マーゼンさんは、長期にわたる紛争が子どもたちに与える影響を心配しています。
「子どもたちが描いている絵を見てください。銃や爆弾をうけて、血を流している人びとのすがたを描いているでしょう?これは子どもたちのとりまく日常を描いているのです。ふだん子どもたちが花や家を描くようにね」。
■状況はきっと変わる…
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© UNICEF/HQ06-1092/Jadallah |
パレスチナに住む少年ゾハール君。ガザ地区北部にあるベイト・ハノンの街にある家で、きょうだいと一緒にいるところの写真です。 |
停戦がレバノンの子どもたちに生きる希望を与えています。何週間も続いたこの紛争によって、中東にすむ若者たちの生活は混乱しました。若者のなかには、自由をうしなった人、家をうしなった人、家族や親戚をうしなった人もいます。
16歳のモナさんは、シリアに住んでいます。モナさんが住む街には、この紛争がはじまったあとに、レバノンから多くの避難民が流れこんできました。「多くの学校がレバノンの人たちでいっぱいになってしまったの。学生寮だって、いつもは夏にはからっぽになってしまうのに、今はレバノンから来た人たちでいっぱいよ」。
モナさんには、レバノンに親戚がいて、休暇に遊びに行ったこともありました。「私たちはレバノンが活気にあふれたところだと思っていたけど…今は違うの。子どもたちは紛争のなかで育っているの。でもこの状況はきっと変わるはずよ」。
ガザ地区でくらす16歳のバセムは、「夜眠っていたとき、胸がどきどきして目をさましたんだ。ぼくの家のそばのサッカー場に、F-16戦闘機が爆弾を落としたからなんだ」。
■子どもたちが心の傷を回復させるとき
ここでみなさんにしょうかいした子どもたちや若者の声が、かれらの国ぐにの未来のすがたなのです。
マーゼンさんは言います。「私の大学では多くの教授がいなくなってしまった。優秀な人たちがレバノンから立ち去っていくのを見たよ。これからこの国をたてなおしていくのは誰?そして誰がこの国の子どもたちを教育してくれるんだろう?」
マーゼンさんは、人びとが紛争による経験によって、その状況になれてしまうことも心配しています。「もっと多くの人が命をうしなえば、人の死に衝撃をうけることが少なくなってくるのです。もっとも大切なことは、尊い人の命がうしなわれることに、悲しむ気持ちを持ちつづけることです」。
イスラエル北部のハイファにすむ16歳のシャーさんは、将来の夢を話してくれました。「私は、シリア、エジプト、ヨルダン、レバノンを旅してまわりたいの。この国ぐにを自分の目でみて、たくさんの人たちに会いたい。私のおばあちゃんはシリアで生まれたの。国境のすぐそばよ。おばあちゃんが生まれたその場所に行ってみたいわ。だけど今は無理ね。だってシリアの人たちにとっては、私たちは敵なんだもの」。
ガザ地区、イスラエルやレバノンにすむ若者たちは恐怖にさらされています。この恐怖が、若者自身の生活や、かがやかしい未来をつくっていく可能性をこわそうとしています。少しでも早くこの紛争が終結して、子どもたちや若者の心が回復されることを祈るばかりです。
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