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No.28
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世界の子どもたち(2)

「HIVから人びとを守りたい!」
ケニアからの留学生リリーさんのお話

© UNICEF/HQ05-1992/Shehzad Noorani

昨年1年間に世界で約430万人の人がエイズウイルス(HIV)に感染しました。現在、HIVとともに生きている人は世界でおよそ4,000万人。特にこのHIV/エイズの問題が深刻なのはアフリカのサハラ砂漠より南の地域で、全世界のHIV感染者の約60%がこの地域に集中しています。

今日は、私のケニア人の友だちリリーさん(本当の名前ではありません)のお話をします。

リリーさんと私はアメリカの大学院で出会いました。彼女は現在HIV予防教育の方法について研究しています。彼女は長い間ケニアの大学で病気の予防を教えていました。しかし、ケニアでHIVが蔓延しているためHIV感染予防の研究が進んでいるアメリカでもっと学びたいと考え、4年前に家族とともにアメリカにやってきました。

ケニアには約130万人の人がHIVとともに生きており、15歳〜49歳の全人口のうち約6%がHIVに感染していると推定されています。女性の感染率が男性よりも高いことが特徴的です。

© UNICEF/HQ02-0310/Giacomo Pirozzi

5人いるリリーさんの兄弟のうち2人がHIVに感染しています。リリーさんは、HIVに感染したお兄さんにお医者さんから薬をもらうように何度も話しましたが、お兄さんは病院に行こうとはしません。お兄さんのおよめさんも、自分がHIVに感染しているか確かめるための検査を受けようとせず、子どもたちも検査を受けていません。リリーさんはその原因として、HIV感染者に対する差別がまだまだあること、治療費を払うお金がないこと、そして女性の社会的地位の低さなどをあげています。

ケニアでは、HIVに関する間違った知識のために自分が感染していることが村の人に知られてしまうと仲間はずれにされたり、ひどいことを言われたりされたりして村を出て行かなければならなくなることが少なくありません。また、干ばつが続くなど毎日の食料を得るのも大変な家庭が多く、HIVに感染しているとわかっても薬を買えない人がたくさんいます。

昔から続く男性優位な社会も、HIV感染を拡大させている原因になっています。一人の男性が複数のお嫁さんをもらう風習が残っている地域もあり、男性がひとり感染すると何人もの女性が感染してしまう危険が高まります。また、男性よりも教育を受ける機会が少ない女性の中には、HIVから身を守る方法を知らない人もいます。たとえ正しい知識を持っていても、男性にHIV感染の予防対策をとるように女性側から言うのは簡単なことではありません。男性に意見を言うことで、暴力を受けることがあるからです。

© UNICEF/UGDA00580/Shehzad Noorani

HIVは赤ちゃんがうまれる前やうまれた直後に、お母さんから子どもに感染することもあります。2006年だけでもおよそ53万人の子どもたちがHIVに感染しました。そして、毎日、15歳未満の子ども1400人が、エイズに関係のある病気で命を失っています。子どもへの感染を防ぐ方法があるにも関わらず、HIVに感染しているお母さんの90%以上が治療を受けていません。ユニセフは、2005年10月25日、「Unite for Children. Unite Against AIDS: 子どもたちのために、エイズとたたかおう」をスローガンに、「子どもとエイズ」世界キャンペーンをスタート。HIVに関する正しい知識を広め、HIV/エイズによって被害を受けている子どもたちや女性への理解と支援を求めています。

リリーさんは貧しかったため、ヨーロッパの先進国から支援を受けて大学まで出ました。非常に優秀で、熱意のあるリリーさんは現在国際連合の機関の援助を受けてアメリカで勉強を続けています。

研究で忙しい毎日にも関わらず、リリーさんは故郷から遠く離れても、色々な国際的学会でケニアの現状について訴えています。さらに、募金活動も積極的に行ってHIVによって苦しめられている女性や子どもに届けています。今年の春には、ケニアに残っている友人と協力して、親がエイズで亡くなってしまった子どものためにNGO活動も始めました。

リリーさんは、大学院を卒業したらユニセフなどの国際機関で女性や子どもたちのために働きたいと今日も机に向かっています。私は、そんなすばらしい友人に出会えたことをほこりに思います。そして、彼女のような女性になれるようにがんばりたいと思います。

(文:日本ユニセフ協会 広報室インターン 佐藤)

※本文の写真は、直接リリーさんのお話に関係ありません

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