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■モンゴルってどんな国?
 モンゴル出身の横綱、朝青龍関の大活躍で「モンゴル」と国名がよく聞かれるようになりましたが、皆さんは「モンゴル」がどのような国が知っていますか?
 北はロシア、南は中国という大きな国に囲まれていて、日本の4倍の国土に約256万人の人びとが住んでいます。首都はウランバートル。国民の約半分はウランバートルに住んでいると言われるほど、人口が集中しています。モンゴルは広々とした平原の国、というイメージですが、北は森林、西は山岳、東は平原、南は砂漠と、変化に富んだ地形が広がっています。
 90年のソ連邦の崩壊により、社会主義から市場経済主義に移行しました。それまでの社会のシステムが麻痺してしまう混乱がおさまって以降、国内には市場経済がもたらした貧富の格差が広がり、新たな問題の原因となっています。
 モンゴルの雄大な自然はそのまま生活する環境のきびしさ、問題改善のための取り組みむずかしさです。よりよい仕事や、現金収入を得られる仕事を求めて首都のウランバートルに集中する人口は、都会のさまざまな問題の原因となっています。
 今年、7月24日(土)〜31日(土)に実施された学校事業部のモンゴルスタディツアーで視察したポイントをご紹介します。

■ストリートチルドレンを守ろう、減らそう
 学校事業部の指定募金では、モンゴルの「都会のストリートチルドレンを守ろう、減らそう」という活動を支援しています。市場経済主義に移行して以来、貧富の格差が生まれ、生活のきびしさから子どもが働かなくてはならなかったり、家出をしてストリートチルドレンになったりする問題が増えているからです。生活環境がきびしいストリートチルドレンは、犯罪に巻き込まれたり、みずから罪を犯してしまう可能性も高くなります。
 ユニセフでは、都会のストリートチルドレンを守る活動とともに、地方からやってきて都会に住む人々の支援活動、そしてストリートチルドレンを発生させないように地方に住む子どもを守るため、家族に力をつける活動を行っています。

■ゲル地区の生活改善活動—安全な水の提供
斜面に建てられているゲル。手前のレンガづくりの建物が給水所。
 バヤンガル地区はウランバートル郊外の高台に広がる地域で、地方からやってきた人が急激に増えている地域です。ここでは、ユニセフが支援して、都会の基礎サービスを改善する活動が行われています。
 高台の斜面には、板で囲いをしてゲル(モンゴルの伝統的な家)がたくさんつくられています。不安定な場所に建てるため、大雨が降ると、土砂崩れをおこして子どもが流され犠牲になることもあります。
 この地域では小高い丘をこえ、1キロも離れたところに来る給水車までいかなくては水を手に入れることができませんでした。水運びは子どもの仕事。5〜7歳くらいの小さな子どもは5キロのタンクを高台まで運びます。12歳くらいの男の子は20〜30キロもあるタンクを運びます。大変な重労働です。こうした子どもの重労働を改善するために、この地域に「給水所」がつくられ、家のすぐ近くで安全な水をくめるようになりました。子どもたちは水運びの危険な重労働がら開放されたのです。

■住所身元確認センター
 「住所身元確認センター」は、学校事業部の指定募金で支援しているストリートチルドレンを保護するセンターです。ここに来る子どもの多くは、家を失った子どもや家庭の事情で家族と一緒に暮らせなくなった子どもで、栄養不良の状態です。自分の名前を知らない子どももいます。
 このセンターは24時間あいており、犯罪を起こさないように子どもを迅速に保護し、住所身元を確認し、家庭に戻す活動をするとともに、保護された子どもに食事や安心して眠る場所、医療ケアを提供しています。
 すぐに住所や身元が確認できる子どももいれば、何日も確認できない子どももいます。身元確認ができない場合は、テレビや新聞にお知らせを出すこともあります。それでも確認できない子どもは、保護施設に収容されます。

■家族が学び、自ら生活を改善する力をつける活動
 見渡す限りの地平線に、見事なグラデーションを描く青空の下でウツィーバーさん一家は暮らしています。馬やラクダ、羊、山羊など100頭余りの家畜を有する、モンゴルでは平均的な遊牧民の一家です。
 ウツィーバーさんの家族はユニセフの支援で実施されている「家族が学び、自ら生活を改善する力をつける活動(Family Empowerment Programme)」に参加しています。通年を通して、ボランティアが家庭を訪問し、家庭教育の仕方を伝えています。お母さんは、活動の中で記録した子どもたちの成長記録や、子どもたちの工作の作品などを見せてくれました。そして「子どもたちには健康に育ってほしいし、教育を受けてほしいと思っています」と話してくれました。
 二人の小さな子どもたちは夏季幼稚園に参加中でした。

■夏季幼稚園
ドルノゴビ アイマク(Dornogobi Aimag)はモンゴル南東部に位置し、中国との国境ポイントをもつ地域です。首都ウランバートルから列車で約10時間の地域の中心地サインシャンドから、さらに、道なき道を車で3時間走ってエルデン スーム(Erdene Soum)という地区の夏季幼稚園を訪問しました。
 この夏季幼稚園はボランティアの家庭訪問活動の補完として夏休み期間中に、10日〜2週間の日程で合宿をして行われるものです。17人の子どもたちが参加していました。ウツィーバーさんの二人の子どもたちもいます。普段、家族としか過ごすことのない子どもたちにとって、夏季幼稚園は親元を離れ、同年代の子どもたちと触れ合い、就学前教育を受け、社会性と自立の気持を育てる貴重な機会になっています。

 モンゴルでは、都会のストリートチルドレンを守るためにさまざまな活動が行われていますが、都会の問題を解決するためには、問題の発生源である地方の子どもの生活をまもることも必要です。
 都会の子どもも、地方の子どもも権利が守られ、元気に成長できるように、今後ともユニセフのモンゴルの子どもたちへの支援をよろしくお願いいたします。

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財団法人 日本ユニセフ協会