小学校でサッカー部だったというモニさん。高校に進学して学生生活を楽しんでいる。
- 面積 : 14万7千平方キロメートル(日本の約4割)
- 首都 : ダッカ
- 人口 : 約1億6365万人
- 5歳未満児死亡率 : 30%/1000出生あたり(2018))
- 低体重児の割合 : 68%
- 小学校修了率 : 69%(男子)、79%(女子)
- 中学校修了率 : 53%(男子)、55%(女子)
- 高校修了率 : 31%(男子)、26%(女子)
バングラデシュではおよそ620万人(4人に1人以上)の就学年齢の子どもたちが学校に通えていません。
子どもたちが学校に通えない理由は、学費は無償でも制服や給食、文房具などのお金が払えないから、自然災害によって学校が遠くなってしまったから、障がいのある子どもたちへのサポートがないから、子どもが働かなくてはならないなど、様々です。特に、首都ダッカでは児童労働の割合が非常に高いと言われています。
また、学校に途中で行かなくなってしまうケースも目立ちます。その大きな要因のひとつが、教育の“質”です。資格のない先生が多かったり、学校の設備が整っていなかったり、栄養不足で衛生的でない給食が出されたり、子どもたちを受け入れる学校側の体制も、子どもたちの学びに影響を与えています。女の子たちへのハラスメントや性被害も多く報告されており、バングラデシュの女の子たちにとって、学校は必ずしも安全な場所ではありません。
ユニセフは全ての子どもたちが教育を受けられるよう、バングラデシュ政府に働きかけています。さらに、災害も多いバングラデシュにおいて「緊急時のための教育枠組み」も進めています。この枠組みには、先生のための防災訓練トレーニングツールなど、緊急時以外から備えておくべき内容も含まれています。
バングラデシュでは、2017年以降、隣国ミャンマーで激化した暴動によって難民となったたくさんのロヒンギャ(民族)が世界最大と言われる難民キャンプに暮らします。言葉も教育カリキュラムも異なる中、ユニセフはバングラデシュ政府と協力して、ミャンマーの教育カリキュラムを導入し、多くのロヒンギャ難民の子どもたちに教育を届けようとしています。現在では、およそ315,000人の子どもや青少年たちが3,200以上の教育センターで勉強しています。
バングラデシュでは、5歳未満の子どもたちの36%が発達が遅れる“発育阻害”の状態にあります。十分な栄養を得られない結果、子どもたちは平均よりも身長が低く、体格だけでなく、脳の発達も遅れてしまいます。また、発育阻害は、短期的だけでなく長期的にも、大きな影響を及ぼします。体力がなかったり、脳の発達が不十分だと、思考能力や学ぶ力が十分に足りず、学校の授業にもついていけません。
特に、スラム街に住む子どもたちは栄養不良に陥るリスクが高く、その理由のひとつとして、安全な水が手に入りにくいことも挙げられます。水によってお腹をこわしたり、病気になると、栄養が体に吸収されないからです。バングラデシュは気候変動によって自然災害を受けることが多い地域のため、洪水や台風などによって安全な水が手に入りにくくなるなど、ますます子どもたちの健康は危険にさらされています。
ユニセフはバングラデシュ政府の栄養状況改善のための国家計画を支援し、例えば生後1,000日(2歳)になる前の子どもの発育阻害率を減らすためにデータに基づいた計画の作成や、妊娠中の女性に向けた体重と栄養のある食事の管理と監修など、さまざまな支援を行っています。また、都市部の自治体とも連携し、スラムに住む人々が安全な水を手に入れられるよう、働きかけています。
バングラデシュでは、子どもたちへの身体的暴力、体罰、性的暴力、精神的暴力、育児放棄などが広く見られますが、子どもたちを守るための法整備は未だ十分ではありません。古くから社会に根付いている子どもたちに対する保守的な考え方も、子どもへの暴力がなくならない理由のひとつとも考えられています。
児童労働、児童婚、性的暴力などが蔓延している背景には、貧困問題が大きく関わっています。バングラデシュでは児童労働の問題はとても深刻で、170万人もの子ども―特に男の子たち―が働いています。女の子の多くは家事労働をさせられていますが、その実態は見えてきません。また、バングラデシュは、世界一、15歳未満の女の子の児童婚が多い国でもあります。児童労働や児童婚は、子どもたちを教育から遠ざける要因にもなってしまいます。
子どもたちを守るための法律やその仕組みを強化することは、「子どもたちへのあらゆる暴力や搾取、ネグレクトは許されることではない」という強いメッセージを発信することにつながります。ユニセフは、法体制強化の働きかけをバングラデシュ政府にするとともに、それが実施されるよう、サポートをしています。児童労働を減らすために、まずは学校教育の改善をして、子どもたちが学校をやめないようにする取り組みや、子どもたち自身が暴力を専門家に相談できるヘルプラインの設置などを行っています。そして、障がいのある子どもたちや、少数民族や、宗教が異なる子どもたち、難民を受け入れている地域、災害多発地など、目の届きにくい層に対しては、特に注視していかなくてはなりません。