“海の資源を守り、大切に使おう”
私たちが使っているペットボトルやビニール袋などの
プラスチックゴミが年間900万~1400万トン(2016年時点)、海に流れ出ています。
出典:UNEPホームページ “Our planet is choking on plastic”
私たちが使うペットボトルやビニール袋などのプラスチックごみが年間900万~1400万トン※も海に流れ出ています。
1950年代から1970年代にかけては、プラスチックはわずかな量しか生産されていなかったので、プラスチックごみも適切に処理ができる程度でした。しかし、1970年代から1990年代の20年間で、プラスチックの生産量も、プラスチックごみも3倍に増えました。そして、2000年代に入ってからの10年間だけで、20世紀で出た以上の量のプラスチックごみが排出されました。
※2016年時点
今日、私たちは毎年4億トンものプラスチックごみを生み出しています。もし、人類がこのままのペースでプラスチック製品を作り、使い、捨て続けると、海に流れ出るプラスチックごみは、2040年には2016年の約3倍、2300万~3700万トンへ増えると推定されています。
出典:ムービー 国連YouTubeチャンネル
UNEPホームページ “Our planet is choking on plastic”、国連広報 ブログ「海の豊かさを守るためにわたしたちにできること」
「14-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています
「14-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています
14-1
2025年までに、海洋ごみや富栄養化※など、特に陸上の人間の活動によるものをふくめ、あらゆる海の汚染をふせぎ、大きく減らす。
※富栄養化:水の中に、プランクトンなどの生物にとって栄養となる成分(リンやちっ素など)が増えすぎてしまうこと。赤潮の原因になるなど、生態系に影響を与えるといわれている。
14-2
2020年までに、海と沿岸の生態系に重大な悪い影響がでないように、回復力を高めることなどによって、持続的な管理や保護をおこなう。健全で生産的な海を実現できるように、海と沿岸の生態系を回復させるための取り組みをおこなう。
14-3
あらゆるレベルでの科学的な協力をすすめるなどして、海洋酸性化※の影響が最小限になるようにし、対策をとる。
※海洋酸性化:人間の活動によって大気中に放出された二酸化炭素を海が吸収し、海水がより酸性になること。これによってたとえばサンゴが育たなくなると、サンゴをすみかにしているさまざまな生き物も影響をうけるなど、海の生態系に大きな影響をおよぼすといわれている。
14-4
魚介類など水産資源を、種ごとの特ちょうを考えながら、少なくともその種の全体の数を減らさずに漁ができる最大のレベルにまで、できるだけ早く回復できるようにする。そのために、2020年までに、魚をとる量を効果的に制限し、魚のとりすぎ、法に反した漁業や破壊的な漁業などをなくし、科学的な管理計画を実施する。
14-5
国内法や国際法を守りながら、手に入るもっともよい科学的な情報に基づいて、2020年までに、少なくとも世界中の沿岸域(海岸線をはさんだ陸と海からなる区域)や海域の10%を保全する。
14-6
2020年までに、必要以上の量の魚をとる能力や、魚のとりすぎを助長するような漁業への補助金を禁止し、法に反した、または報告や規制のない漁業につながるような漁業補助金をなくし、そのような補助金を新たに作らないようにする。その際、開発途上国やもっとも開発が遅れている国ぐにに対する適切で効果的な、特別な先進国と異なる扱いが、世界貿易機関(WTO)の漁業補助金についての交渉の重要な点であることを認識する。
14-7
漁業や水産物の養殖、観光を持続的に管理できるようにし、2030年までに、開発途上の小さい島国や、もっとも開発が遅れている国ぐにが、海洋資源を持続的に利用することで、より大きな経済的利益を得られるようにする。
14-a
より健全な海をつくり、開発途上国、特に開発途上の小さい島国や、もっとも開発が遅れている国ぐににおいて、海洋生物の多様性がその国の開発により貢献できるように、ユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを考えに入れながら、科学的知識を増やしたり、研究能力を向上させたり、海洋技術が開発途上国で使えるようにしたりする。
14-b
小規模で漁業をおこなう漁師たちが、海洋資源や市場を利用できるようにする。
14-c
「私たちが望む未来」※で言及されたように、海と海洋資源の保全と持続可能な利用のための法的な枠組みを定めた国際法(国連海洋法条約)を実施して、海と海洋資源の保護、持続可能な利用を強化する。
※「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」で採択された文書。158段落目で国連海洋法条約や海洋保全の大切さを述べている。
以下は、2012年6月に開催された「国連持続可能な開発会議」(「リオ+20」)で示された、海洋汚染に関わるデータです。
世界の海洋汚染の約80%は、陸の活動で発生した汚染(農業活動による流出物、栄養素や農薬の排出、プラスチックを含む未処理の下水など)によるもの。処理されることなく排出される農業排水、沿岸の観光、港湾の開発、河川のせき止め、都市開発と建設、鉱業、漁業、養殖業、および製造は、沿岸および海洋にくらす生き物の生態を脅かす海洋汚染の原因となっています。
下水や農業排水に含まれる過剰な栄養素が海に流出することで、ほとんどの海洋生物が生存できなくなる「デッドゾーン」と呼ばれる低酸素(貧酸素)地域の数が増えています。現在、世界中で500近くのデッドゾーンが確認されており、その面積は24万5000km²以上に及び、イギリスの国土の広さとほぼ同じくらいです。
毎年2億2000万トンを超えるプラスチックが生産されています。プラスチックは、非常に便利なものです。とても軽いので、様々なもののパッケージに利用されるほか、電話、コンピューター、医療機器などにも欠かせません。しかし、適切な廃棄方法が検討されていないことがよくあります。
国連環境計画は2006年に海の1平方マイルごとに4万6000個の浮遊プラスチックが含まれていると推定しました。廃棄されると、プラスチックは風化し、マイクロプラスチックと呼ばれる非常に小さな破片になります。これらは、プラスチック製のペレットとともに、世界中のほとんどの海岸ですでに見られます。プラスチックの破片により、毎年100万羽以上の海鳥と10万以上の海洋哺乳類が死んでいます。
世界の下水処理の現状
高所得国では、平均して、生活排水や産業排水の約70%を浄水処理してから排出しています。しかしその比率は、中所得国の中でも上位の国では38%、中所得国の中でも下位の国では28%にまで低下します。そして、低所得国では、わずか8%しか浄水処理がされていません。世界全体で見てみると、家庭からの排水や産業排水の約80%が未処理のまま、川や海に垂れ流しになっていることになります。高所得国では、環境を守るため、そして水不足の時には浄水した水を再利用できるようにするために、高度な浄水処理を整えています。しかし、そうしたインフラを整える資金や技術がなかったり、排水を規制する法律や制度がなかったりする開発途上国では、生活排水や産業排水を未処理のまま川や海に垂れ流すことは、一般的な慣行であり続けています。
世界220の沿岸地域の水質を得点で表すと?
(0点=汚染がひどい⇔100点=水がきれい!)
出典:2017 UN World Water Development Report, Wastewater: The Untapped Resource, UNESCO WWAP, 2017、UNESCOホームページ“Facts and Figures on Marine Pollution"、国連ホームページ "SDGs Report 2019 -Goal14"
海は私たちの生活にとってなくてはならない存在です。海から得られる食料は世界最大のタンパク質源であり、30億人以上が体に必要なタンパク質を海の恵みに頼っています。そして、30億人以上の人びとが海洋および沿岸の生物多様性を頼りにして生計を立てています※1。
海は、魚介類などの食べものをえる場というだけでなく、私たちが暮らす環境も守ってくれています。地球の表面の4分の3を占める海。その海水の量は、地球上の水の実に97%にあたります。この海洋が、人間が生産する二酸化炭素の約30%を吸収し、大気中の二酸化炭素濃度を調整し、熱の吸収などを行うことで地球温暖化の影響を緩和しています。
しかし、今日、人間の活動によって大気中に出される二酸化炭素が増加し、海が以前より多くの二酸化炭素を水中に取り込むことで、海水の成分が酸性化する「海洋酸性化」が進んでいます。
海洋酸性化によって、たとえば、サンゴが死んだり、育たなくなったりすると、サンゴをすみかにしていたさまざまな別の生き物も影響をうけ、めぐりめぐって、多くの海洋生物が命の危険にさらされることになります。
酸性化はすでに海の生態系に大きな影響をおよぼしていますが、この海洋酸性化は、大気へ排出される二酸化炭素の量が増えれば、それに応じてこれからも進むと言われています※2。
世界の漁船漁業の国別漁獲量の推移※1
1960年から1990年にかけて、世界の漁獲量は急激に増加しました(赤い矢印)。しかし、1990年以降、その増加は頭打ちになっています(青い矢印)。なぜでしょう?
魚やエビ、貝などの海洋資源は生き物です。生き物ですから、卵を産み、繁殖することで、その数を増やしたり、保ったりしています。しかし、魚やエビ、貝などの海の生き物を人間がとりすぎてしまうと、海の生き物は繁殖するチャンスを失って、個体数が減ってしまいます。そうなると、人間がいくらがんばって漁をしても、網にかかる生き物は減っていくのです。現在では、絶滅が心配されるような魚介類まで出てくるようになってしまいました。
生き物が繁殖していくスピードや個体数の把握など科学的な知識を生かし、とりすぎないように管理していけば、海の恵みは「持続可能」な資源になります。しかし、世界の国々が協力して上手に管理できず、奪い合うように海の生き物をとると、海の恵み(海洋資源)はいつか「枯渇」してしまうかもしれません。そうなると、海の恵み(海洋資源)をいただく私たちも、海で漁をして生計を立てている人たちも大変困ることになります。そして、残念なことに、生物学的に「持続可能」な水準にある魚類資源の割合は1974年の90%から、2015年には67%へと減少してしまっています※2。
海の恵み(海洋資源)を守るために、漁獲量を管理し、調整することが大切ですが、一国だけが漁獲量を調整しても、他の国がその魚を乱獲しては、いずれその魚が海から消えてしまうかもしれません。世界は海でつながっているので、海洋資源を守るためには国際社会で協力していくことが必要不可欠です。
© UNICEF/UN0161724/Diarassouba、© UNICEF/UN0206072/Sokhin、© UNICEF/UN0206141/Sokhin、© UNICEF/UNI125857/Asselin、© UNICEF/UNI314996// Frank Dejongh