世界子供白書2023 すべての子どもに予防接種を世界子供白書2023 すべての子どもに予防接種を

ユニセフの基幹報告書「世界子供白書2023」は、「すべての子どもに 予防接種を」がテーマです。

天然痘ワクチンが開発されて以来、2世紀以上にわたって、さまざまなワクチンが人々の健康を支えてきました。ポリオ、はしか、肺炎、エボラ出血熱など、現在20以上の病気に対して、ワクチンは感染や重症化を防ぐことに役立っています。 予防接種はユニセフの活動の中で、最も成果をあげてきた取り組みの一つです。1990年には年間1,250万人だった世界の5歳未満児の死亡数は、2021年には500万人まで減少しました。その前進には、ジフテリア、破傷風、ポリオ、はしかなどのワクチンの普及が大きく貢献しています。

予防接種がもたらすもの

予防接種は子どもの健やかな成長を助け、家族や養護者を支え、コミュニティ全体の健康に貢献します。

  • 予防接種を受けることで、子どもたちは病気から守られる。その結果、学校を休まずに済み、学習成果を向上させることができる。

  • 子どもたちが病気から守られれば、両親や養育者(多くの場合、母親)が、病気の子どもの世話をするために仕事を休む必要がなくなる。

  • 家族が、病気の子どもの世話に関して思い悩んだり、時には非常に高額な医療費に直面する可能性も低くなる。

  • 子どもたちへの予防接種は、集団免疫を促進し、薬剤耐性の広まりを抑制することから、コミュニティ全体の健康をサポートする。

1963 年にワクチンが登場するまでは、はしかによって世界で毎年推定260 万人が死亡しており、そのほとんどが子どもでした。2021 年にはその数は12 万8,000 人にまで減少しており、いまだ多いとはいえ、目覚ましく改善しています。

コロナ禍とワクチン躊躇が、接種率の低下に影響

© UNICEF/UN0517738/Poveda はしかの予防接種を受ける6歳の女の子。(ベネズエラ)

ところが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響などにより、子どもに対する予防接種率は過去30年で初めて大きな後退を見せました。

紛争や避難民の増加、またワクチンに関する不正確な情報が人々に予防接種を躊躇させていることも、その要因の一つです。

ワクチン躊躇(Vaccine Hesitancy)は、WHOによると、公衆衛生上の最大の脅威の一つです。予防接種そのものと同じぐらい古くからあるものですが、今日では、ワクチンを躊躇する気持ちが引き起こす誤情報や偽情報と相まって、世界中で予防接種の普及が後退する大きな一因となっています。

2019 年から2021 年にかけて、6,700 万人の子どもたちが定期的な予防接種を完全に、または部分的に受けられず、そのうち4,800 万人が完全に受けられなかったと、ユニセフは推定しています。命を守るワクチンが受けられない子どもたちは、ポリオやはしかなど予防可能な感染症の危険にさらされてしまいます。

2022年のはしかの発生件数は前年比2倍以上、ポリオによって身体に麻痺を生じた子どもの数は前年比で16%増加しました。2019年から2021年までの3年間をその直前の3年間と比較すると、ポリオによって麻痺を生じた子どもの数は8倍に増加しています。

予防接種は、子どもの権利

子どもへの予防接種が行われないことは、子どもの権利条約第24 条にある「到達可能な最高水準の健康を享受すること並びに病気の治療、および、健康の回復のための便宜を与えられること」という子どもの権利を損なうことになります。

そして、SDGsの達成の見通しも暗くなります。

SDGsの目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」の達成に、予防接種は重要な役割を担っており、またその他の13 の目標とも関係しています。例えば、子どもたちの認知機能の発達や教育的達成を支援することで、目標4 の「質の高い教育の実現」を促進することができます。その意味で、予防接種は、すべての人にとってより良い、より持続可能な未来を実現するための共同コミットメントの中核をなすものなのです。

すべての子どもにワクチンを

ユニセフは各国政府に対し、次のことを求めています:

  • すべての子ども、特にコロナ禍の中で予防接種を受けられなかった子どもを早急に特定し、予防接種を受けさせる
  • ワクチン信頼度を高めるための施策などを通じ、ワクチンに対する需要を拡大する
  • 予防接種とプライマリ・ヘルスケアに優先的に資金を投入する
  • 女性の医療従事者への投資、技術革新、医薬品や医療資材等の現地生産を通じ、コロナ禍のような危機的状況でも弾力的に対応できる保健・医療体制を構築する

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べています。

「予防接種は、何百万人もの命を守り、致命的な病気の発生から地域社会を守ってきました。コロナ禍を経て我々は皆、病気の広がりは国境で止まらないことをよく理解しています。

定期的な予防接種の実施と強固な保健・医療体制の確立は、将来のパンデミック、そして不必要な死と苦しみを防ぐための最善の方法です。新型コロナウイルス感染症対策のために確保された資金がまだ残っている今こそ、その資金を予防接種の強化に振り分け、すべての子どもたちのための持続可能なシステムの構築に投資する時なのです」

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