2000年9月、国連ミレニアム・サミットに参加した189の国によって採択された「国連ミレニアム宣言」。これをもとに2015年までに達成すべき国際社会共通の目標としてまとめられたのがミレニアム開発目標(MDGs)です。
ミレニアム開発目標(MDGs)に向けた国際社会の15年間の取り組みの結果、世界全体で多くの成果がみられました。しかしその一方で、国や地域によって目標の達成に差があること、さらには、国内においても地域や性別、年齢等による格差が生じており、MDGsの恩恵を受けられていない人々の存在が明らかになりました。
MDGsの各目標ごとに、その成果と残る格差を見てみましょう。
(★は各目標の主なターゲット。いずれも1990年代と比較して2015年までに達成すべきとして)
1.極度の貧困と飢餓の撲滅
- ★ 1日1.25米ドル未満で生活する人口の割合を半減させる
- ★ 飢餓に苦しむ人口の割合を半減させる
2015年最終報告書における成果
- ・極度の貧困(1日1.25米ドル未満で生活)で暮らす人の数は、19億人(1990年)から8億3,600万人(2015年)と、半数以下に減少
- ・途上国や地域における栄養不良の人々の割合は23.3%(1990-92年)から12.9%(2014-16年)と、ほぼ半減の見込み
- ・5歳未満児のうち低体重の子どもの割合は、1990年から2015年の間にほぼ半減
残る格差・課題
- ・極度の貧困にいる人々の約80%が、南アジアもしくはサハラ以南アフリカで暮らしている
- ・女性は男性と比べて、有給の仕事を手に入れ難く、より賃金が低く、土地などの資産の入手が限られていることから、貧困に陥りやすい
- ・低体重児の90%近くが、南アジアもしくはサハラ以南アフリカで暮らす子どもたち
2.普遍的初等教育の達成
- ★ すべての子どもたちが、男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする
2015年最終報告書における成果
- ・途上国の初等教育純就学率は80%(1990年)から91%(2015年)に増加
- ・学校に通っていない初等教育学齢期の子どもの数は、1億人(2000年)から5,700万人(2015年)に減少
- ・若者(15〜24歳)の識字率は、83%(1990年)から91%(2015年)に向上
残る格差・課題
- ・小学校に通っていない5,700万人のうち、3,300万人がサハラ以南のアフリカで暮らしている。また、全体の半数以上を占める55%が女の子。
- ・途上国では、最貧層世帯(下記20%)の子どもは、最富裕層世帯(上位20%)の子どもに比べて、初等教育課程を修了していない割合が5倍以上
2015年最終報告書における成果
- ・途上国の3分の2以上で、初等教育の就学率において男女の格差が解消
残る格差・課題
- ・初等教育の就学率に関する男女の格差が解消していない途上国のうち、56%がサハラ以南アフリカの国々
2015年最終報告書における成果
- ・5歳未満児年間死亡数は1,270万人(1990年)から590万人(2015年)と、53%減少
残る格差・課題
- ・毎日1万6,000人の5歳未満児が命を落としており、その大半は予防可能な病気が原因
- ・年間の5歳未満児死亡数(2015年)を地域別に見ると、サハラ以南アフリカ地域が最多の300万人、次いで南アジアが180万人
2015年最終報告書における成果
- ・妊産婦死亡は、10万人あたり380人(1990年)から210人(2013年)に減少(死亡率は45%減少)
- ・熟練した医療従事者の立会いの下での出産は、59%(1990年)から71%(2014年)に増加
残る格差・課題
- ・妊産婦死亡はサハラ以南アフリカと南アジアに集中しており、2013年における世界全体の数の86%を占める
- ・熟練した医療従事者の立会いによる出産は地域格差が大きく、東アジアの100%に比べ、サハラ以南アフリカと南アジアは52%に留まる
6.HIV/エイズ、マラリアその他の
疾病の蔓延防止
- ★ HIV/エイズの蔓延を阻止し、その後減少させる
- ★ マラリアおよびその他の主要な疾病の発生を阻止し、その後発生率を下げる
2015年最終報告書における成果
- ・HIVの新たな感染は、推定350万人(2000年)から210万人(2013年)と、約40%減少
- ・2000年〜2015年の間に推定620万人以上の命がマラリアから、2000〜2013年の間に推定3,700万人の命が結核から守られた
残る格差・課題
- ・新規にHIVに感染した若者(15〜19歳)のうち、3分の2は女性
- ・15〜24歳の男女が有する、HIVに関する正しい知識は、経済状況や地域によって格差があり、経済的に貧しく、また農村部で暮らす若者のほうが、正しい知識を得にくい状況にある
7.環境の持続可能性の確保
- ★ 安全な飲料水と衛生設備を継続的に利用できない人々の割合を半減する
2015年最終報告書における成果
- ・改善された水源から安全な飲料水を入手できる人の割合は、76%(1990年)から91%(2015年)に向上。1990年以降、26億人が新たに利用できるようになった
- ・2015年、世界の人口の68%が改善された衛生設備を利用している。1990年以降、21億人が新たに利用できるようになった
残る格差・課題
- ・地表水を使う人の90%が農村部で暮らしている
- ・貧富の差がトイレの利用率の差と関連しており、辺地に暮らす人や社会から疎外されている人ほど、トイレが利用できない
8.開発のためのグローバル・
パートナーシップの推進
- ★ 民間部門と協力し、特に情報・通信分野の新技術による利益が得られるようにする。
2015年最終報告書における成果
- ・インターネットの普及率は、世界の人口のわずか6%余(2000年)から43%(2015年)まで増加。新たに32億人がインターネットの情報網につながることができた
- ・2015年、世界の人口の95%が、携帯電話の通話可能域で暮らしている
残る格差・課題
- ・インターネットの普及にも格差が生じており、先進国の82%に対し、途上国では人口の3分の1にとどまる。
ミレニアム開発目標(MDGs)は、特に途上国の人々が直面していた多くの問題を解決する原動力となりました。具体的な目標値を掲げ、15年間の年月をかけて世界が一丸となって取り組んだ結果、多くの命が守られ、人々の生活環境が改善されたのです。
その一方で、MDGsの達成状況を国・地域・性別・年齢・経済状況などから見てみると、様々な格差が浮き彫りとなり、"取り残された人々"の存在が明らかとなりました。
MDGs最終年の2015年、ポスト2015年開発アジェンダとなる世界の17の目標を定めた『持続可能な開発目標(SDGs)』が、9月25日の国連総会で採決されました。SDGsは2030年までの開発の指針として、格差をなくす(=”誰ひとり取り残さない”)ことを重要な柱とし、MDGsの取り組みをさらに強化するとともに、新たに浮き彫りになった課題も加えられた包括的な目標です。
持続可能な開発目標(SDGs)
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