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ネパール大地震緊急募金 第23報
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© UNICEF/PFPG2015-3137/Sokol |
被災した9歳の双子の姉妹。※本文との直接の関係はありません。 |
ネパールで4月に発生した最初の大地震から約2カ月。ユニセフ(国連児童基金)は、これまでに少なくとも245人の子どもが、人身売買の被害に遭いかけたり、不必要あるいは違法な形で児童養護施設に収容されようとしていたと発表しました。
ユニセフは、ネパールの女性・子ども社会福祉省や中央児童福祉委員会、内務省、警察、入国管理局と協力し、政策や直接的な対応を通じて、子どもの人身売買のリスクを軽減する活動を行っています。
「ユニセフは2度の大地震の後、人身売買の事例が急増することを危惧していました」と、ユニセフ・ネパール事務所代表の穂積智夫は話します。「生活の糧を失い、生活環境が悪化していく状況下で、親たちは、子どもが今よりもよい生活ができるとの人身売買業者の言葉を容易に信じ、子どもを手放すように説得されてしまいます。人身売買業者は、子どもたちへの教育や食事、そしてよりよい将来を約束します。しかし現実には、多くの子どもが過酷な搾取や虐待に遭ってしまうのです」
人身売買は4月25日の地震以前からネパールに広がっており、2001年に実施されたILO(国際労働機関)の調査によると、毎年1万2,000人のネパールの子どもたちがインドに売られているとみられています。買売春業に就くことがなかった女の子たちも、インドをはじめ他国の家庭で奴隷のように働かされたり、男の子は強制労働をさせられたりしています。地震のような災害の後には、こうした人身売買が横行する危険が高まります。
またネパールでは内戦以降、安全や教育を約束してくれるカトマンズやポカラの児童養護施設に、簡単に子どもを預けてしまう傾向がありました。大地震が起こる前の時点で既に1万5,000人の子どもたちが施設で暮らしており、そうした子どもたちは、規制が不十分な養子縁組、搾取、虐待の被害に遭いやすい状況にいます。施設で生活する子どもの85%に、少なくとも片方の親が生存していることが分かっています。
© UNICEF/NYHQ2015-1081/Karki |
ユニセフが支援する「子どもにやさしい空間」で遊ぶ子どもたち。守られた環境で安心して過ごすことができるこの空間で、子どもたちはスポーツをしたり、遊んだり、絵を描いたりできる。 |
ユニセフはネパール政府やパートナー団体と共に、子どもの人身売買を防ぐ取り組みを早急に行っています。
ユニセフは養子縁組や児童養護施設への訪問を通じてネパールの子どもを助けたいとする“児童養護施設ボランツーリズム”に対しても、懸念を抱いています。
「ときには、子どもたちが故意に家族から引き離されて児童養護施設に入れられ、養子を望む家庭やボランティア、寄付者を引き込むために利用されていることもあります。多くのボランティアは善意でやってきますが、彼ら自身がそうと気づかずに、子どもたちを傷つけていることもあるのです。さらに、ボランティアの素性調査はされないこともあり、こうした体制は子どもの搾取や虐待を増加させる危険があります」(穂積代表)
“児童養護施設ボランツーリズム”の結果生じるマイナスの側面について周知するために、ユニセフは旅行業界やボランティアの分野の人々と緊密に連携しながら活動しています。ネパール国内外に40ほどある、児童養護施設へのボランティアを募っている代理店を特定し、こうしたボランティアプログラムを中止するよう働きかけています。そのうち8つの代理店では、すでにネパールでのボランティアプログラムを一時中止にしました。
「被災したコミュニティを建て直し、家族が一緒に暮らせるようにすることが、ネパールの子どもたちの震災からの回復を支える最善の道なのです」と穂積代表は話しました。
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