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公益財団法人日本ユニセフ協会
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東日本大震災復興支援 第260報
「子どもにやさしい空間」(CFS)
災害支援のスタンダードに
東北で初のCFS研修

【2015年8月26日 盛岡・石巻発】

8月19日。盛岡での研修会には、県内各地から、子ども支援に関わる方々33名が参加。
© 日本ユニセフ協会/2015
8月19日。盛岡での研修会には、県内各地から、子ども支援に関わる方々33名が参加。

4年前、東日本大震災の支援の現場で、多くの子ども支援団体が「子どもにやさしい空間」活動を展開。実際に現場での活動に関わられた専門家からは、いざという時に支援の現場で使える国内の実情に即した標準的な指針の整備を求める声とともに、「大きな災害が頻発する日本でこそ『子どもにやさしい空間』を災害支援のスタンダードに」という声が寄せられました。

震災支援で得た知見を、“今”の課題の解決にも

こうした声に応え、日本ユニセフ協会は、独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)と共同で、ユニセフが2009年に発行した『A Practical Guide for Developing Child Friendly Spaces(子どもにやさしい空間づくりの実践的ガイドブック)』をベースに、2年前、日本版『子どもにやさしい空間ガイドブック』を発行。今年7月の埼玉県さいたま市を皮切りに、子ども支援に関わる方々を対象にした研修会をスタートさせました。

東北初の研修会

8月19日(水)、東北初の研修会会場の盛岡地区合同庁舎8階の講堂には、盛岡市内のみならず陸前高田市や釜石市などの被災地域から、33名もの方々が参集。日ごろ子ども支援や子育て支援に関わっていらっしゃるNPOや市民団体や岩手県ユニセフ協会の方々のみならず、県や児童相談所などの行政関係者や大学関係者も参加されるなど、“子どもの視点”からの防災の取り組みに対する関心の高さが伺えました。

一週間後の26(水)には、宮城県石巻市で開催。台風の影響を受けた大雨ということもあり、当初予定より参加者が限られてしまった研修会でしたが、現在も復興支援に携わっていらっしゃるNPOやNGOの方々が受講。4年半前の震災直後、実際に「子どもにやさしい空間」を運営されたとのことで、今後予定する研修会では、“トレーナー(講師)”としてご参加いただけることになりました。

評価と課題

参加者は、グループワークで、「子どもにやさしい空間」の企画・運営をシミュレーション。
© 日本ユニセフ協会/2015
参加者は、グループワークで、「子どもにやさしい空間」の企画・運営をシミュレーション。

「グループワークが多く、具体的なイメージが掴みやすかった」「被災者、特に子どもに接する時の“心構え”ができた気がします。もう少し早く機会をいただきたかった! 3.11直後にどう接すればよいのか、気後れしてしまった事が思い出されました」「いつこの経験が活かせるかわからないが、次に大規模災害がおこり、自身が避難所に関わることがあったら、“子どもにやさしい空間”を作ろうと思った」。盛岡での研修会後、参加者のみなさまに回答戴いたアンケートには、『ガイドブック』や研修会を評価するコメントが多く寄せられました。また、「被災時に(実際に「子どもにやさしい空間」に関わること)は難しいと思いました(自分のことがままならない時は特に)」「一人では実施にうつせないかもしれないが…」「理論はわかったが、実際になることになったら…」「誰にでも作れる空間かもしれないが、講義の中でも専門家とつながるとあったし、このような研修を受けてもいない方のみでするのは危険かもしれません」といった不安の声や、「実際に避難所を運営していくのは地域の人や避難してきた人たちなので、自治会やPTAなどもっと地元目線の、ハードルの低いものが必要」「ものがなくてもできる、普通の人ができる“子どもにやさしい空間”も必要なのでは?」といった、今後の研修会に参考になるご指摘やご助言も頂戴しました。(アンケートにご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。)

「次の“万が一”にどう備えるか?」。世界的にも自然災害が多い日本では、地域を問わず大変重要な課題です。しかし、今の東北の被災地では、“今”、子どもたちを支える社会的な体制を強化するものとしての“子どもの居場所”づくりが求められています。実際、盛岡の研修会では、参加者の方々から「集団行動が苦手な子どもがいて困っているのだが、どのように対応したら良いか?」、「地域の保護者の方々を巻き込むことは難しい。どのようにしたら良いか?」など、“今”の課題に関する悩みも共有されました。

「子どもにやさしい空間」は、災害が発生した時にしか使えない知識ではありません。この研修会は、今、日本全国で必要とされる子どもの居場所づくりなどのニーズに応える支援にも、様々なヒントを与えてくれるものと考えています。

 

■「子どもにやさしい空間(CFS)」とは?

災害や事故は、子どもたちから一瞬にして「日常」という“心の支え”を奪います。「子どもにやさしい空間」(Child Friendly Space - CFS)は、不安や様々な危険にさらされる子どもたちが安心して安全に過ごせる「居場所」=様々な年齢の子どもに合った「遊び」や「学び」の場を提供する 活動です。ユニセフ(国連児童基金)は、世界の緊急支援の現場で、20年以上にわたりこの活動を展開。“水”や“医療”、“食糧”、“テント(避難所)” 等と同様、最優先で取り組まなくてはならない支援の一つとして位置付けています。

『子どもにやさしい空間ガイドブック』は、こちらのページから無償でダウンロードしていただけます。

■「子どもにやさしい空間(CFS)」研修について

「子どもにやさしい空間」を設置・運営するために必要な実践的な知識や情報を、『子どもにやさしい空間ガイドブック』の内容に沿って学んでいただく参加型の研修プログラムです。 受講資格はありません。PTA、学校の教職員、医療福祉関係者、NPOや地域の子ども・子育て支援者や、自治体職員、学生など、“万が一への備え”を準備されている全ての方に受講していただけます。

<主な内容> 

  • イントロダクション
  • 「子どもにやさしい空間」とは?(講義とディスカッション)
    どんな時に必要なの?/緊急時の子どもたちの状況は?/どうして必要なの?/「子どもにやさしい空間」ってどういうもの?/どう役立つの?/6つの大切なこと
  • 「子どもにやさしい空間」の実践(講義とディスカッション)
    子どもたちの状況を把握しよう/活動内容を組み立てよう/場所や設備を考えよう/
    人員配置を考えよう/活動を振り返り改善しよう
  • 「子どもにやさしい空間」〜実際に作ってみよう(グループワーク)
  • まとめ

■「子どもにやさしい空間」研修に関するお問い合わせ(2016年12月末まで)

国立精神・神経医療研究センター日本ユニセフ協会
災害時こころの情報支援センター(CFS担当)東日本大震災緊急支援本部(CFS担当)
東京都小平市小川東町4-1-1東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
E-mail:saigai_cfs@ncnp.go.jp電話:03-5789-2295

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