タンザニアでの栄養プロジェクトについて

■タンザニアの栄養不良

タンザニアでは、40%近く(240万人)の5歳未満の子どもが発育阻害(年齢に比べて身長が低い)で、22%の子ども(140万人)が年齢に比べて体重が少ない(低体重)状態です。さらに、72%の5歳未満児と48%の女性が貧血状態です。

栄養不良の原因

子どもたちが栄養不良になる原因には2つあります。

(1) 食事に十分な栄養が含まれていない
(2) 健康状態が悪い(子どもが病気になると、感染症と闘い回復するために余分なエネルギーや栄養素を体は必要とするのに、食欲がなくなり、栄養不良の原因となります)
タンザニアの子どもたちは、この2つが同時に起こっていることが多いのです。

なぜ食事が不十分なのか

多くのお母さんはどのように母乳を与えるについて十分なアドバイスやサポートを受けていません。赤ちゃんは、生後6ヶ月間は完全母乳育児で育てられる必要がありますが、知識がないために、お母さんが母乳以外の液体や食事を子どもがあまりに小さい時から与えてしまうことがあります。

また、家庭で食物を育てたり、栄養ある食事を買う資金がなかったり、適切な食事を準備する時間や知識が不足していることも原因のひとつです。

■栄養不良がもたらすもの

栄養不良は子どもや女性の命を脅かし、経済成長や発展の妨げとなります。

栄養不良は子どもの高い死亡率の原因です:

栄養不良はタンザニアで唯一の最も大きい死亡原因の一つです。栄養不良は体の免疫力を弱め、薬の効果や安全性を弱めるなど、5歳未満児の子どもの死亡の半数以上に関係しています。深刻な低体重の子どもは、健康な子どもに比べて8.4倍も死亡する確率が高く、栄養不良の後生き延びることができても、その後の健康や成長、発達に長期的な影響を与えます。

栄養不良は学習成果にも影響を与えます:

栄養不良の子どもは学校に通い始めるのが遅く、学校での成績も悪く、学校を途中でやめてしまう確率も高くなります。おなかがすいて貧血状態の子どもが授業に集中できないのは当然です。


■栄養不良の子どもの命を守る活動

急性栄養不良とは

消耗症と呼ばれる急性栄養不良は、栄養不良の中でももっとも危険な状態です。消耗症とは、身長に対して体重が著しく少ない状態のことで、適切な治療を受けないと最大50%が死に至ります。2005年、タンザニアでは推定で25,000人が急性栄養不良でした。

急性栄養不良のあたらしい治療法

かつては、病院などでの入院治療が必要でしたが、現在は合併症がなければ入院しないでも治療を行う方法があります。

急性栄養不良の患者さんには、すぐに食べられる栄養治療食(プランピーナッツ)と投薬による治療を行います。プランピーナッツは、ピーナッツバターのようなもので、水に溶かす必要がなく、パッケージを空けたらそのままなめて食べることができます。従来は、粉ミルクを清潔な水を適切な分量で溶かし、適切なタイミングで与える必要があったため、医者や保健師などの監視を必要としていましたが、プランピーナッツは家で簡単に与えることができます。

急性栄養不良の子どもは、週に一回保健施設に行き、ヘルスチェック、体重と腕囲の測定を行い、1週間分の栄養治療食(プランピーナッツ)をもらいます。体重が15%増えたら治療が完了です。


家で治療を行えるようになったことで、コミュニティで急性栄養不良の子どもを発見し、すぐに治療を行いやすくなります。また、保護者は長期間入院している子どもに付き添う必要がなく、負担が減ります。これまでは、親が他の子どもの面倒や仕事のために病院に連れて来られないことも多かったので、家で治療できれば、子どもたちが治療を受ける機会も増えます。また、院内感染のリスクも減ります。