東ティモールの農村部では、これまで屋外で用を足すことが普通のことでした。排泄物に含まれる病原菌が人の手、川、はえ、地面などを介して人の口に入り、下痢や寄生虫病、かぜなどの病気をひきおこしてきました。
ユニセフは、東ティモールの人々が「トイレのある」生活をおくれるようにし、衛生的な生活が病気を減らし、健康につながることを経験的に理解してもらうことから始めました。
ユニセフやパートナーNGOの支援により、トイレができた村の住民は「家のすぐそばにトイレがあるため、夜暗いなか遠くまで用をたしにいく必要もなくなった」「腹痛や下痢にかからなくなった」と言います。「家にトイレがあることは自慢だ」と、トイレは村の人の誇りにもなりました。
東ティモールの農村部では、2001年にはたった10%の人しか衛生的なトイレを使っていませんでしたが、2007年には35.2%まで向上しました。しかし、国連ミレニアム開発目標を達成するには、2015年までに農村部で衛生的なトイレを使う人の割合を55%にする必要があり、目標達成にはもっと多くの人がトイレを使用できる環境を整えなければいけません。
これまでの活動で農村部で広がってきた衛生的な生活を、限られた資金で、持続的に、より多くの人たちに広げるため、ユニセフは、村レベルで衛生に関する総合的な啓発活動を行い、住民による自主的なトイレ作りを支援する、新しい取り組みを東ティモールで始めました。
支援対象に選ばれた村では、指導役となるパートナーNGOと住民が一緒に、住民がどこで用を足しているかといった現状を把握することから始まります。
排泄物にまじったばい菌が人の手を通して口に入り、さまざまな病気を引き起こすこと、病気を防ぐためには屋外での排泄をやめ、家庭に衛生的なトイレを作ることが大切だということを知ってもらいます。
このように、住民自身が「健康的な生活を送るためにトイレを作りたい」と思うようなきっかけ作りを行います。
「トイレを作ろう」と決めた住民に、パートナーNGOは衛生的なトイレのつくり方を指導します。手に入る資材や予算に応じ、住民自身がどのようなトイレを作るかを決め、木や竹、砂や石などの建設資材を自分達で集めます。穴掘りも自分達で行い、トイレの囲いとなる建物もすべて住民自身の手作りです。
村の人全員が屋外での排泄をやめ、衛生的なトイレで用を足すようになれば、村の目標の達成です。
村の人たちの協力を促進するために、目標を達成した村へ自治体を通じて補助金を支給したり、お祝いセレモニーが行われます。
また、「きれいな村」コンテストを実施し、「きれいな村」であることを誇りに思えるような環境づくりを行います。
病気の予防には、トイレの建設だけでなく、作られたトイレをきれいに使い、食事の前やトイレの後に石けんによる手洗いを行ったり、ごみを決められた場所に捨てたり、動物の糞や下水を適切に処理したりなど、さまざまな衛生習慣を定着させる必要があります。
トイレを使うことの大切さだけでなく、村を衛生的な環境にし、病気を予防するために必要な衛生習慣を総合的に普及することがプロジェクトの目標です。