フィリピンにおける子どもポルノの増加要因としては貧困、セックスツーリズム、グローバル化などが挙げられ、これは特定の地域や国境を越えた世界的な問題となっています。
特に近年では、インターネットの普及に伴い、ウェブカメラの前で性的な容姿をさらす、「サイバーセックス」が問題となっており、これまでに20万以上のフィリピン女性、男性、そして子どもが被害にあったと推測されています。
また、子どもを性的な対象とした有害なDVDも氾濫しており、2007年にはおよそ30万の海賊版DVDがマニラ市内のいくつかの店から押収されました。子どもポルノは、少しの投資で莫大な利益を得ることが可能なことから、フィリピンでも市場が拡大し、そのたびに子どもたちが虐待の被害を受け続けています。
- 性産業で働く子ども
性産業で働く女の子は、マニラにあるバーで日本人観光客に声をかけられました。その日本人男性は女の子に2500フィリピンペソ(約7000円)を渡して、カメラ付携帯で女の子の胸を撮影しました。女の子は、顔を写さないのであれば、胸の写真を撮影してもよいと承諾しましたが、本当に顔が写っていないという証拠はどこにもありません。
- ビデオカメラによる撮影
過去に性産業で働いていた女性(Aさん)は16歳のとき、他の数人の女の子と共に売春斡旋業者によって、隣町からやってきた市長の元に送られました。女の子たちがホテルに到着すると、市長は好みの女の子を選び出し、Aさんもまたその中の一人でした。Aさんは市長のボディーガードと性的関係を持つように指示され、その様子は市長と他のボディーガードたちが終始見守り、ビデオカメラにも撮影されました。
- サイバーセックス
性産業で働く15歳の女の子は、彼女の叔母から、家政婦としての働き口を紹介してもらうはずでしたが、実際に紹介されたのは、サイバーセックスワーカーとして働くことでした。彼女は他の2人の女の子と共に、それぞれコンピュータが割り当てられ、ウェブカメラの前で性的な行動をすることを求められました。客の多くはアメリカ人やイギリス人で、15分で約30米ドルを支払います。
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ユニセフ・フィリピン事務所では、都市や農村地域から子どもと親を集め、「子どもポルノ」に関する聞き取り調査を実施。そして、どのようなことが原因となって子どもたちが被害者となってしまうのか、また、子どもたちを守るためにはどのようなことが必要であるのかを報告しました。
- 全体的に見て、「一般的なおとなのポルノ」と「子どもポルノ」が混同して捉えられており、子どもを性的な対象として扱うポルノは子どもの性的虐待であり、子どもの権利を侵害しているという意識が低い。
- 「子どもポルノ」という概念が全体的に理解されていない背景には言葉の壁があり、特に、性産業に関わっている子どもや、学校に通っていない子どもは英語が理解できないため、実態を把握していない。
- 学校に通っている子どもは、「子どもポルノ」について比較的よく理解しており、友人やメディアから知り得た実例を挙げることもできた。
- 子どもを守るために最も責任のある立場にいる親や保護者が「子どもポルノ」についてあまり理解していない。
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- 一般的には低所得層の子どもが被害に遭いやすいが、近年のIT技術の発達に伴い、すべての子どもたちが被害者となる可能性が高まっている。
- 低所得層の子どもたちがペドファイル(小児性愛者)やセックスツーリズムの被害にあいやすいのに対し、中産階級や富裕層の子どもは、インターネットやウェブカメラにアクセスしやすいことからサイバーセックスの被害にあう可能性が高い。
- ストリートチルドレンなどの親や家族によって守られない子どもや、正確な情報を入手できない子どもも被害者となりやすい。
- 子どもや若者自身の性や新たなものに対する好奇心、さらに適切な保護を必要とする子どもたちへの体制不足も被害者の増加に影響している。
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ユニセフ・フィリピン事務所は、今回の調査を通し、子ども自身や親がこの問題に対する正しい知識をもつこと、さらに子どもが必要な保護を受けられる環境にあることで、子どもたちが被害者となる可能性を未然に防ぐことができることを明らかにしました。
また、今後の活動目標として大きく3つのことを掲げています。
- フィリピンにおける「子どもポルノ」の定義の明確化や法整備。
- チラシ、パンフレット、SMS(携帯電話のショート・メッセージ・サービス)、漫画、テレビ、ラジオ、e-mail、Tシャツ、ウェブサイトなど多様なメディアを介したキャンペーンを実施し、電気機器へのアクセスを持たない人々を含めた、より多くの人々に情報提供を行う。
- インターネット・サービス・プロバイダーやクレジットカード会社、インターネット・カフェ経営者との協力を強化し、子どもたちの有害なサイトへのアクセスや、サイバーセックス利用者からの金銭の受け取りを未然に阻止する。
ユニセフ・フィリピン事務所では、子どもポルノ被害の撲滅に向けた取り組みを積極的に展開していますが、
まだまだ解決しなくてはならない課題が数多く残されています。
また、こうした課題はフィリピンのみならず、日本を含む世界中の子どもたちの脅威となっており、緊急かつ抜本的な解決が求められています。
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