1クラス100人、机も、教科書も、トイレもない学校で・・・


私が活動している東部・南部アフリカ地域の20カ国では、ここ数年で初等教育の無料化が一気に進みました。 それ自体は喜ばしいことですが、入学者の殺到に学校側が対応しきれず、以前から低かった教育の質が さらに悪化しています。机も教科書もない教室に100人近くが詰め込まれ、適切な訓練を受けていない教師が、 子どもたちの言語でない授業を行っていたりします。女子トイレがなかったり….。 そんな学校が多いため、毎年大勢の子どもたち、特に女子が通学を断念してしまいます。 学校をやめた女子は水くみや家事などに追われるうち、将来を考える余裕もなく婚期を迎えます。

“子どもに優しくない学校“に子どもたちの足は向かない

私が活動している20カ国では、一様に小学校就学率は8割で、決して悪くはありません。 問題は、途中で学校をやめてしまう子どもたちがあまりにも多いのということです。小学校に入学した子どもたちの 半数が学校に行かなくなってしまうのです。もともと8割程度の就学率がさらに半分に減るので、 結局4割くらいの子どもしか小学校を卒業することができません。 なぜ、それほど多くの子どもたちが、途中でドロップアウトしてしまうのか…。 それは「学校が子どもに優しくない!」の一言に尽きます。

まず、多くの子どもたちにとって学校があまりにも遠いのです。 学校まで5キロ〜10キロという 長い道のりを歩かなければならず、女の子は通学路で性的暴力のターゲットになってしまうこともしばしばです。

男女別トイレがないのも女子にとっては致命的。 小学校中学年以上になった女子に生理が始まると、 トイレがないため毎月1週間学校を休むことになり、すると勉強が遅れてやがてドロップアウトしてしまいます。 しかし、トイレがあればよいという話でもありません。トイレをどこに作るかも重要なのです。 たとえばソマリアでは、女の子がトイレに向かうところを見られるだけでもタブーです。 たとえ男女別のきれいなトイレを設置しても、教室から見える場所だったりすれば、女の子はトイレを 使わないのです。

また、教育の質の問題もあります。子どもたちががんばって何時間も歩いてようやく学校に辿りついても 子どもたちを待っているのは、母国語でない言語,での、訓練を受けていない、 やる気のない教師たちによる役に立たない授業です。 教師による体罰や性的虐待もしばしばあります。

こんなにも居心地の悪い学校で、頑張って小学校を出たところで、子どもたちに何が残るというのでしょうか。 これでは親が学校を信用しません。1人目の子どもを学校に入れて何もメリットがなかったら、 2人目、3人目は学校に通わせるのをやめよう、と考えるのは極めて合理的な判断なのです。 子どもたちは良い環境さえあれば勉強したいと思っています。親たちだって子どもたちに教育を 受けてもらいたいと思っています。 問題は学校の質にあります。だら私たちは、「子どもに優しい学校」を作るために もっと頑張らなくてはならないのです。

お手本となる女性をもっと多く

ユニセフは、教育の質を少しでも良くするため、教材の提供や先生への研修などを行っています。同時に村の集会所などで、 子どもたちが家事をしながらでも通える1日3時間程度の非正規学校を支援しています。女子が通いやすいよう、先生には 現地の女性を抜てきします。コミュニティ内で比較的高い教育を受けている女性に即席でトレーニングを施し、先生になって もらうのです。女性を先生に起用すると女子が学校に通いやすくなります。 また、ほとんどの女の子にとって、社会で活躍する女性を目にするはじめての機会となります。 学校に通いだした女子が「先生になりたい」と言うのを聞くたび、チャンスを広げてあげることの大切さを痛感します。

教育が生死を分ける

下痢性の病気やHIV/エイズなど、情報があれば防げる死因で多くの命が失われているアフリカ。教育の生むは命に かかわります。女の子たちが学校に通って大切な知識を身につけ、自ら選びとった人生の中でその知識を広めて いけるように願っています。







先頭に戻る