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すべての子どもに“いのちを守る方法”を

最も厳しく不利な条件におかれた子どもたちを重点的に支援するー
ユニセフが行った調査結果によると、この、エクイティー(公平性)に焦点をあてた支援活動で、約60%も多くの命を守ることができます。
最も困難な状況におかれている子どもたち、国、そして地域に光を当て、より遠くに、より奥地に支援を届けるユニセフの取り組みに、力をお貸しください。

今、なぜ、エクイティー(公平性)? 理由は死亡率の格差の是正です。

5歳未満児死亡率が低下した多くの国で、格差が拡大している

子どもの死亡数削減について大きな前進が見られてはいるものの、幼い子どもの死が、最も貧しい国々の最も厳しい環境で生きる子どもたちに集中するという、傾向が明らかになってきています。

資料:各年の人工保険調査(DHS)

  • 人口保健調査(DHS)のデータを分析した結果、5歳未満児死亡率が低下した国の多くで、世帯の経済状態による5歳未満児死亡率の格差が拡大しているか、もしくは変化していないことが分った。
  • 5歳未満児死亡率が10%以上低下した開発途上国26カ国のうち18カ国において、最も豊かな世帯と最も貧しい世帯との間の5歳未満児死亡率の格差が拡大したか、もしくは変化がなかった。
  • さらにこれらの国のうち、10カ国では、格差が10%以上拡大した。

最も不利な状況におかれている子どもたちへの現実

辺境の村で社会の底辺で… 一番助けを必要としている貧困層の子どもたちが、ひっそりといのちを落としています。

“いのちを守る方法”に出会うことなく…

アフリカ・ニジェール。どこまでも続く砂漠の道なき道を、赤ちゃんを背負ったお母さんが急ぎ足で歩いています。
赤ちゃんの名前はナナ。深刻な栄養不良のためやせ細り、苦しそうに小さな息をしています。隣村まで行けば診療所のある町へ行くトラックが出ていると聞きました。そこから診療所まで更に6時間かかります。それまでナナの身体が持ちこたえられるかどうか・・・衰弱しきったいのちの灯は、今にも消えてしまいそうです。

エチオピアとソマリアの国境近く、荒涼とした辺境の村で、2歳の女の子、ナガトが熱を出したのは、今年の初めのことです。もう何日間も高熱にうなされていますが、村には医者がいないうえ、診療所に行くための交通手段もありません。家族7人が1日1回食べていくのが精一杯というナガトの家では、子どもたちはみな栄養が足りず、身体の抵抗力が落ちています。
近くに井戸がなく、飲み水や手洗い用の水が足りないことも、病気になりやすい原因のひとつです。やがてナガトの顔に麻疹特有の発疹が出始めました。
支援センターから遠く離れた村で、また1人、いのちを守る方法に出会えなかった子どもが静かに息を引き取りました。

深まる不公平性

5歳まで生きることができずに命を落とす子どもたちの8割以上は、ナナと同じサハラ以南のアフリカ、あるいは南アジアの貧しい国々で生まれています。
子どもたちの多くは、交通手段のない辺境の村々や、人目につきにくい都市周辺のスラムなど、支援の手がきわめて届きにくい場所で、人知れずいのちを落としています。

  • 今、開発途上国の最貧層の子どもが5歳までにいのちを落とす可能性は、同じ国の最富裕層の子どもの2倍以上。
  • 低体重や発育障害に陥る可能性も、最富裕層の子どもの2倍を超えています。
  • また、安全な水が手に入らない人の8割以上が農村部に住むなど、都市と農村の間の格差も広がっています。

エクイティー(公平性)とユニセフの新たな挑戦

「エクイティー(公平性)戦略」とは

最も厳しく不利な状況におかれた子どもたちに、より一層、より深く支援を進めていくユニセフの取り組み。それが「エクイティー(公平性)戦略」です。

ユニセフが、26の開発途上国を対象として行った調査の結果、「最も貧しい地域や最も取り残された地域などに暮らす、最も貧しく不利な状況におかれた子どもたちに重点をおいて支援を行うと、従来より、60%も多くの命を守ることができる」ことが明らかになりました。同時に、「どんな時にも、弱い立場におかれた子どもたちを最優先する」というユニセフの理念が、合理性においても優れたものであることが立証されました。

「エクイティー(公平性)戦略」に基づいた取り組みは、さまざまな国や地域で成果を上げています。

「いのちを守る方法」を、ひとりでも多くの子どもたちへ!

ミレニアム開発目標4:2015年までに5歳児未満の年間死亡を1990年当時の1/3に削減する

ユニセフの新たな挑戦が始まっています。

1人の子どもも取り残さない・・・ その決意を胸に、ユニセフは今、より遠く、より困難な状況で生きる子どもたちに支援を届けようとしています。どんな遠くても、すべての子どもにワクチンを。どんなに貧しくても、すべての子どもに栄養を。どんなにきびしい環境でも、すべての子どもに希望ある未来を!あなたのご支援は「いのちを守る方法」となって、世界中の子どもたちのもとへと届きます。

エクイティー(公平性)戦略とその成果

途上国の国の中でも最貧層のコミュニティー、もっとも弱い立場の子どもたちに重点的に支援を行うことで、子どもと母親の開発に関する主要分野において顕著な改善が見られた例を紹介します。

  • ブラジル/メキシコ

    最も貧しい人々に焦点を当てることにより、保健における公平性を向上させたラテンアメリカにおける最近の成功については良く知られています。ブラジルメキシコは、保健ケアの利用料の引き下げ、または撤廃し、最も貧しく最も疎外された特定のコミュニティーや地域に向けた保健サービスの提供を拡大しました。また、条件付きで現金を給付するなど包括的なアプローチを通じて、不公平の是正に向けて大きな成功を遂げました。成功の背景には、社会経済的な格差と地域的格差の是正に向けた持続的な政府の強い意志がありました。

  • ヨルダン

    天然資源が不足しているヨルダンは、1946年の独立以後、基礎教育を、特に農村部に重点を置いて拡充することにより知識集約型産業を築くという決定をくだしました。現在、同国の初頭学校就学率は男女ともに実質99%であり、男女とも85%以上が中等教育に進んでいます。

  • ガーナ

    ガーナは、1990年代の初めに導入された全面的な水改革プログラムによって、改善された水源へのアクセスにおける都市部と農村部との間の格差を縮小しました。このプログラムは地方の村を対象としたもので、コミュニティーと地元政府の協力関係により水源が管理されています。

  • スリランカ

    スリランカの事例は最も説得力のあるもののうちの一つです。1948年に独立を勝ち取って以来、歴代の政府は特に農村部の母子保健ケアに重点を置き、基礎的サービスの無償での提供と、コミュニティーを基盤とした制度を支援し続けました。公平性に重点をおいたアプローチへの投資により、子どもと母親の保健や基礎的な保健ケアへのアクセスに関して、スリランカは南アジアで最高の指標を記録したのです。

  • トルクメニスタン

    トルクメニスタンでは、1990年代に開始された一連の改革により、女子のためのより良い保健習慣が推進され、妊娠期間中と出産後最長1年間の産科サービスが無料で提供されるようになりました。この改革によって、この国のほぼすべての女性が出産前ケアや専門家による分娩時のケアが利用できるようになり、産科サービスへのアクセスにおける格差を実質的に解消することができました。

すべての子どもに“いのちを守る方法”を届けるために、ユニセフは最も貧しい地域や最も取り残された地域、また支援の届きにくい地に向けた活動を最優先させます。

子どもたちの“いのちを守る方法”があります。

あなたとユニセフで守る、幼いいのち…

ユニセフ募金は、世界中すべての子どものいのちと権利を守るために活用されます。たとえば2009年は、こんな活動に活かされています。

  • 2009年度、ユニセフの支出29億4300万ドルのうち、47%にあたる約13億9200万ドルが乳幼児ケア関連の活動に活かされました。
  • 世界中の子どものために、約30億回分の予防接種用ワクチン、2億6000万錠の虫下し78万人分の抗HIV薬を調達することができました。
  • モザンビークでは、出生の届け出のない子どもたちを探して村々をまわった結果19の地域で100万人以上の子どもの出生登録が実現しました。

空を飛び、海を越えて、島にワクチンが届いた日

インドネシアから

島の船着き場に待望のワクチンが届きました。今日はハラタイ村の予防接種デー。西ジャワから空路・陸路・水路を駆使して届いたワクチンは、ここからさらにバイクで山道を1時間走り、子どもたちが待つ村の集会所へと運ばれます。集会所での予防接種が終わったら、保健員が家々を一軒一軒訪ね、未接種の子どもがいないか確かめてまわります。大小1万以上の島々からなるインドネシアでは、医療サービスの届かない多くの村で、ユニセフの予防接種が子どもたちのいのちを支えています。3,000円のご支援が、141人分のはしかワクチンに変わります。

「命の守り方」イラストカードは保健員の必携アイテム

マリから

「母乳は2 歳まであげ続けてね、病気の予防にもなるから」「下痢には塩と砂糖をまぜた水を飲ませてね」モプティの町はずれで保健員の説明に熱心に耳を傾けているのは、この間まで遊牧生活を送っていたお母さんです。アフリカでは今、干ばつなどで家畜や畑を失った人々が都市部のスラムなどに流入し、多くの子どもたちがきびしい暮らしを強いられています。5,100円のご支援で、保健員が使う「命の守り方」カード(60枚組)2セットを調達できます。ユニセフはこうした活動を行う保健員や助産師を育てるほか、地域の診療所も支援しています。

世界に広がるユニセフの活動

現地で活躍する日本人スタッフからの報告 一人でも多くの子どもを守りたい。 その方法をいつも考えています。

スワジランド事務所 社会政策担当官 今井 久美子(いまい くみこ)さん

平均寿命40歳、親をなくした子どもたちは

アフリカ南部にあるスワジランドは、日本の四国ほどの面積に約100万人が暮らす国です。この国の子どもたちを取り巻く状況はとても深刻です。ここ十数年でHIV/エイズが急速にまん延したことにより、国民の平均寿命は40歳にまで落ち込んでいます。
親を失った子どもは10万人以上にのぼり、さらに近年のたび重なる干ばつで食糧事情が悪化、幼い子どもの約4割が慢性的な栄養不良に苦しんでいます。

空腹と寂しさに押しつぶされ…

私は昨年、スタッフと一緒に各地の村や町を訪れ、現地に寝泊まりしながら子どもたちの家を訪問してまわりました。そこで目にしたのは、親を亡くし、きょうだいだけで生活している子どもたちでした。大人のいない、荒れはてた家に足を踏み入れると、幼い子どもたちがうす暗い部屋で身を寄せ合っていました。収入を得るすべがないため食べ物が買えず、栄養不良から病気にかかりやすくなっています。
訪問中に病気の子どもを見つけ、診療所に連れて行くことが何度もありました。最初に訪問した時には笑顔で迎えてくれた子どもが、次に訪ねると高熱にうなされていたこともあります。

3週間の家庭訪問で約500人の子どもに会い、支援の基盤を築くことができました。でも、はるかに多くの子どもたちが、支援の届かない場所で死と隣り合わせの毎日を送っています。

子どもを守る地域の人たちに勇気をもらって

スワジランドに来て感動したことのひとつに、地域の人々の助け合いの精神があります。みな生活は苦しいのですが、貧しい家庭の子どもを支えるために村に畑を作ったり、身寄りのない子どもたちに食事を食べさせたりしています。

こうした地域の人たちに勇気をもらって、私たちも、一人でも多くの子どもたちを守ろうと日々がんばっています。なかでも力を入れているのが、最も弱い立場におかれた子どもたちを守るケアセンターです。そこでは、食事の提供や予防接種、虐待を受けた子どもの保護や心のケアなど、子どもたちが一日一日を生き延びるために欠かせない支援を行っています。

センターの数はここ数年で少しずつ増えてきましたが、将来的には、全国の貧窮地区に住むすべての子どもが歩いて行ける距離に1軒ずつまで増やそうとしています。病気の子どもをいち早く見つけ、応急処置のできる保健員も、もっとたくさん育てていきたいです。