●おなかをすかせ、支援を求めて歩き続けるこどもたち
ソマリアでは今、干ばつによる食料難が深刻化しています。もともと食べ物が手に入りにくい半砂漠地帯で、子どもたちは、わずかな米と家畜の乳程度しか口にできずにいました。子どもたちの大半は栄養不良で身体が小さく、抵抗力も弱く、病気がちです。この数ヶ月ですでに数万人の命が失われました。わが子を飢えから守るため、支援を求めて都市部の避難民キャンプなどに押し寄せる子ども連れは、数十万人にのぼっています。
●栄養センターは人々の希望
ユニセフは、首都モガディッシュをはじめ国内500箇所以上に栄養センターを開設。 次々と運び込まれる子どもたちのため、昼夜を問わず救命活動を続けています。子どもたちの多くは、極度の栄養不良で髪が黄色く変色し、骨が浮き出るほどやせ細っています。こうした子どもは特別な栄養補助食で治療します。こうした状況下で必要なのは、最大多数の命を救える効果の高い援助を効率よく行うことです。特に栄養治療とともに、死亡原因である下痢症、肺炎、はしか、マラリアなどの治療・予防に効果の高い、経口補水塩、亜鉛、ビタミンAの投与、予防接種、蚊帳の配布などをパッケージにして届けることです。ひとり100円程度のパッケージで救える命もたくさんあるのです。ひん死の子どもが2週間ほどで元気になっていく姿は、過酷な日々を送る現地の人々にとって希望の象徴となっています。それを見ている私もとても嬉しくなります。これまでに15万人以上の子どもに治療を行い、尊い命を守ることができました。
しかし、状況はまだまだ深刻です。キャンプはどこも過密状態で、衛生環境が悪化して下痢性の病気も流行しています。 栄養不良の子どもは病気で命を落とす確率が12倍にも跳ね上がります。私はもともと医師ですが、子どもたちの命を守るために、治療を行うだけでなく、栄養不良の改善、予防接種、保健員の育成など総合的な支援が欠かせないと痛感しています。 これからも子どもたちのすぐそばで、一人でも多くの命を守っていきたいです。
ソマリアは日本からすれば遠い国かもしれませんが、東日本大震災では地球の反対側にある南アフリカ共和国はじめ多くの国々が救助・医療チームを派遣し、さまざまな支援を日本に送ってくれました。私自身、大震災の発生時はアフリカにいましたが、「いつも助けてくれている日本が、今はお前を必要としている」と、ソマリアのユニセフのスタッフや現地の仕事仲間は私を日本の緊急支援に快く送り出してくれました。
家族を失ったときの悲しみ、飢えた時の苦しさ、病気になった時のつらさは万国共通です。日本もさまざまな意味で苦しい時期ではありますが、そんな時だからこそ、内向き、下向き、後ろ向きにばかりならず、外を向いて世界に横たわる同じ苦しみを理解し、上を向いて、私たちに何ができるのかを考え、前を向いて行動していただけることを願ってやみません。
心と身体の基礎がつくられる乳幼児期は、人生の中で最も大切な時期。
しかし、世界には、そのかけがえのない時期に十分な栄養がとれないために、命さえ失う子どもが年間250万人もいます。
60年間で最悪の干ばつが食糧難を引き起こし、数万人の幼い命が奪われているアフリカ東部地域。ほかにも世界各地で大勢の子どもたちが飢餓に直面し、 命にかかわる重度の栄養不良に苦しんでいます。
1日1回しか食べられない、イモや米しか食べていないなど、ふだんから栄養が不足している開発途上国の子どもたち。身体の抵抗力が弱いため、下痢や風邪などをこじらせて 命を落としています。
母親のおなかの中から2歳までは、身体の基礎がつくられる大切な時。この時期に栄養が足りないと、低体重で産まれたり、身体や知能の発達に取り返しのつかない悪影響が生じ、 未来が閉ざされてしまいます。
衰弱しきった子どもの命をつなぎとめるには、栄養補助食による集中治療を行います。 ユニセフは、東部アフリカだけでも1000ヶ所以上の栄養センターで救命活動を続けています。
目に見えにくい栄養不良は、定期的に発育観察を行うことで食い止めます。 ユニセフは、母親たちと一緒に地元の作物を使った栄養補助食を作るなど、栄養の知識も広めています。
子どもが元気に生まれ、健やかに成長できるように、 ユニセフは母体への栄養補給、免疫力を高める母乳育児の推進、病気を予防するビタミンAの投与などに力を入れています。