ユニセフでの私の仕事は、セネガルを拠点に西・中央アフリカ24ヵ国で予防接種のニーズを調べ、子どもの命を一人でも多く守るため、地域と保健行政をつなげていくことです。
この地域は乳幼児の死亡率が世界で最も高く、7人中1人が5歳まで生きることができません。なかでも、2012年に大干ばつが襲ったサヘル地域では、日頃から栄養不良で病気にかかりやすくなっていた子どもたちが、コレラやはしか、肺炎などで命を奪われています。西・中央アフリカ地域では他にも、洪水や紛争など20以上の緊急事態が起きていて、感染症が子どもたちの命を脅かしています。しかも、医者の数は住民30万人に1人というような状況で、病気になっても治療を受けられる子どもはごくわずかです。
医療の行き届かない地域で、子どもたちの命綱となっているのが、ユニセフの予防接種です。パートナー機関と協力して、各町や村、避難民キャンプなどにいる乳幼児の数を調べてワクチンを用意し、保冷箱に詰めて子どもたちのもとへ向かいます。接種が終わった子どもの小指には紫色のインクを付け、指に色のない子どもを探していきます。2012年に入って、サヘル地域だけでも160万人以上にはしかの予防接種を実施、病気への抵抗力をつけるビタミンAも投与しました。
数百もの民族が暮らすこの地域では、予防接種を知らせるポスターも複数の言語で作ります。文字を読めない人が多いため、ラジオも使って呼びかけます。それでもすべての人に伝えるには十分ではありません。ギニアのスラム街で予防接種を行なった際、通りがかった子ども連れの母親に「無料で予防接種をしていますよ」と声をかけると、知らなかった、と急いで会場へと走って行きました。その姿を見て、「知ってさえいれば、子どもを連れてくる母親はもっといる。助けられる命がもっとある」と感じ、これまで以上に地域の人たちと話し合い、子どもたちを守っていこうと決意を新たにしました。
ワクチンの調達や政府への働きかけなど、ここアフリカでの毎日の活動が、世界中すべての子どもの命が等しく守られる日につながることを信じて、今日も全力で活動しています。