私の仕事は、東南アフリカ21ヵ国で、子どもの命を守る栄養支援のしくみをつくることです。現在は主にジンバブエ、モザンビーク、マラウィでの活動に携わっていますが、そのなかで日々実感しているのは、アフリカで生きることの厳しさ、そして、すべての子どもに支援を届けることの大切さです。
子どもたちの栄養状況を調べる際は、ジープを何時間も走らせて砂漠や山岳地帯の村々を訪れます。村に入ると、髪の色が赤く変色したり、足が腫れた子どもたちが目につきます。どちらも深刻な栄養不良の症状で、米やトウモロコシなど偏った栄養しかとれないことが原因です。母親たちは、子どもの不調に気づいていても相談できる人がいなくて、栄養不良で抵抗力の落ちた子どもたちは、やがて下痢や肺炎、マラリアなどで死に至ってしまいます。栄養不良は、幼い子どもの死の1/3にかかわる深刻な問題です。
この春私は、ブルンジの子どもたちの栄養不良を改善するため、パートナー機関とともに現地を訪れました。アフリカの村々は家族や地域の結びつきが強いため、地域に入る際には必ず最初に長老などのリーダーを探し、子どもを守る活動への理解と協力を取り付けます。 その後、村の人々に集まってもらい、子どもたちの現状を話し合います。なかでも特に意欲的なお母さんたちとは、さらに意見を出し合って、広場などで一緒に栄養教室を開きます。 そして、集まった近所のお母さんたちに、栄養不良の症状、母乳や衛生の大切さを説明したり、地元で手に入る食材で栄養食をつくったりします。こうした活動によって良くなるのは、子どもたちの栄養状況だけではありません。お母さんたちの知識が増えた村では、子どもの病気も減り、乳幼児の生存率が着実に改善してきています。
私はブラジルで生まれ育ったこともあり、幼い頃から貧富の差を目の当たりにする機会が多くありました。幼心になんとかしたいと願った体験が、私を今の仕事へと進ませたのだと思います。栄養不良をなくす取り組みは、緊急時の救命活動のように目の前の命を今すぐ救うものではないかもしれませんが、アフリカの未来を担うすべての子どもたちの命を支える重要な活動です。その意義を忘れることなく、これからも精一杯力を尽くしていきます。