肺炎、下痢、マラリア。先進国なら助かるはずのこの3つの病気が、世界の5歳未満児の死因の1/3を占めています。このうち、肺炎と下痢で命を落とす子どもの実に99%がアフリカや南アジアなどの貧しい地域に集中し、マラリアによる死亡の9割以上がアフリカ諸国で起きています。
医療施設から遠く離れたソロモン諸島の村で、2歳のジェニーが肺炎による呼吸困難に苦しんでいます。風邪に似た症状のため見過ごされ、手遅れになってしまうことの多い肺炎は、幼い子どもの命を最も多く奪っている病気です。
パキスタン南部の村で、汚れた水を飲んで下痢になってしまった3歳のシマ。下痢という、先進国ではまず死に結びつくことのない理由で、毎日1,500人以上の幼い子どもたちが命を落としています。
生後10ヵ月のダリヤが、マラウイの診療所でマラリアの治療を受けています。何時間も続いた高熱のため意識が薄れ、泣く力も失って生死をさまよっています。今も1分に1人、幼い命がマラリアにより失われています。
肺炎は、兆候を見逃さないことが肝心です。研修を受けた保健員が呼吸数を測り、抗生物質で治療します。近年では、肺炎を予防するワクチンも普及しつつあります。
大人より体内の水分率が高い乳幼児は、下痢により身体の水分が失われると、短時間でひん死に陥ってしまいます。ただちにORS(経口補水塩)で水分を補給する必要があります。
マラリアは、発症後24時間以内に抗マラリア薬をのませて回復をはかります。また、マラリア蚊を撃退する殺虫処理済みの蚊帳を配付して、感染を防ぎます。
肺炎に苦しむ子どもを治療する
抗生物質147人分に変わります。
地域保健員に子どもの病気への
対処法の研修を1日実施できます。
身体の抵抗力を高めて病気を防ぐ
ビタミンA(1年間分)5,000人分に変わります。
下痢による脱水症状を和らげて命を守るORS(経口補水塩)3,750袋に変わります。
マラリア蚊から子どもたちを守る
殺虫処理済みの蚊帳154張りに変わります。
生後2ヶ月のモーゲスは、ここ数日咳が止まらず、胸からは時おり苦しそうな音も聞こえます。母親は意を決してわが子を背負い、ノースショア県にある診療所に向かいました。診断の結果は恐れていた肺炎でしたが、発見が早かったため、抗生物質で治療を開始することができました。肺炎は、この国の幼児の死因の2割近くを占める深刻な問題です。ユニセフと政府は、特に抵抗力の弱い赤ちゃんを対象とした治療・予防対策を急ピッチで進めています。
パキスタン北部にある保健センターで、地元の女性たちがユニセフの保健研修を受けています。6週間にわたる研修で学ぶのは、病気やけがの治し方、ワクチンや薬の投与法、新生児ケアなど、地域の子どもを守る上で欠かせないことばかり。研修後は1人当たり100世帯を担当し、家々を訪問しながら、手洗いや蚊帳の張り方など病気を予防する習慣も広めていきます。
5歳未満で命を落とす子どもの数は、1,270万人(1990年)から630万人(2013年)に減少、肺炎、下痢、マラリアによる死亡数も2000年と比べて40%以上減少しました。
既に効果の実証されている予防と治療法を、最も貧しい地域に重点的に広げていくことができれば、さらに多くの命を守ることができます。
診察を受ける子ども
私が活動するタンザニアは、災害や紛争の多いアフリカの中では比較的安定した国です。しかし、日本の2.5倍の広大な国土に、日本の半数にも満たない人口が散在しているため、診療所や保健センターなど命を支える施設の多くが、子どもたちの居住地域から遠く離れています。また、国民の半数近くが、飲み水を手に入れるために30分以上も歩かなければならず、手洗いなどにまわす水が不足するなか、不衛生な環境から病気にかかった子どもたちが、医療施設にたどり着けず手遅れになってしまうケースが後を絶ちません。
こうして、下痢や肺炎、マラリアなど治るはずの病気で、毎年何万人もの乳幼児が亡くなっています。
私の仕事は、このような子どもたちを一人でも多く守るために、農村部の医療施設をまわって現場のスタッフをサポートし、現地のニーズを国や県につなげることです。遠隔地の子どもたちを守る上で重要な役割を担っているのが、毎月一回の移動診療所です。これは、各診療所が支援の届きにくい村々を訪問し、予防接種や母子の健康診断を行なうものです。毎月の実施を目指していますが、人材不足などのため実現は容易ではありません。医療施設でも子どもの病気に対処できる人材は4割程度しかいないのです。ユニセフは、薬や器材の提供に加え、今年中に1,000人以上の医療者の研修を行なうなど、施設と地域で人材育成を支援しています。
遠隔地の村の親子
母と子が一緒にいられるように
ユニセフで働くことは私の小学生の頃からの夢でした。幼い時期に母を病気で亡くしたことから、母と子、そして家族が一緒にいられることの幸せを痛感したためです。母子の命を守る助産師の道へ進み、念願だったアフリカで働く機会に恵まれました。現場は厳しいですが、現地の人々や子どもたちの笑顔に支えられ、今後も精一杯活動を続けていきます。
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、乳幼児期から青年期までの子どもたちの命と健やかな成長のために、現在150以上の国と地域で活動しています。保健、栄養、水と衛生、教育、暴力や搾取からの保護、HIV/エイズ、緊急支援、アドボカシーなどの支援活動を実施し、その活動資金は、すべて個人や企業・団体・各国政府からの募金や任意拠出金でまかなわれています。
ユニセフは、世界36カ国・地域にユニセフ国内委員会を置き、募金、広報、アドボカシー(政策提言)活動を行っています。1955年に設立された日本ユニセフ協会は、ユニセフ本部との協力協定に基づく日本におけるユニセフ支援の公式機関です。日本の民間部門におけるユニセフ募金・広報・アドボカシー活動は、日本ユニセフ協会が窓口を担っています。
世界中で、命にかかわる栄養不良の子ども190万人に栄養治療を行なったほか、予防接種用のワクチン28億回分、下痢による脱水症を改善するORS(経口補水塩)3,430万袋、マラリア予防用の蚊帳2,900万張り、マラリアを治療するACT抗マラリア薬2,430万回分を調達しました。
紛争下のシリアでは、100万枚の毛布を含む200万人分の冬用物資を届け、巨大台風に見舞われたフィリピンでは、災害発生から1週間以内に20万人に安全な水を届けるなど、世界83ヵ国で289の緊急事態に対応しました。
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