財団法人日本ユニセフ協会



ソマリア:避難民キャンプからの報告

【2006年12月21日、ソマリア、アラレ避難民キャンプ発】

© UNICEF ESARO/2006/Lone
ユニセフが支援しているソマリアのアラレ避難民キャンプで生活するワキタ・マハドさんとその子ども達。

激しい雨とそれによって引き起こされた洪水がソマリアに与えた影響は想像を絶しています。シャベレ川とジュバ川が決壊したために、10万ヘクタールもの肥沃な土地が水に浸かり、50万人近い人々が家を失いました。多くの人命が失われ、洪水を生き延びた人たちも所持品、農作物や家畜を失い、村は水浸しの状態です。

人がはっきり見える位近くに行くと、被害はさらに深刻であることがわかります。背丈の低い子ども達の目には、水に浸かった村のこのひどい光景はさらに恐ろしいものに映ることでしょう。

飛行機、ヘリコプター、4WD車を乗り継いだ後、ジュバ川を手漕ぎボートでわたる約6時間の長旅を経て到着したのはアラレ避難民キャンプです。この避難民キャンプはここ1ヵ月半の間に形成され、現在140家族、約1,400人が生活しています。アラレ避難民キャンプは、ジャマメという小さな町からジュバ川をはさんで対岸にある堤防上の狭い道に沿って拡がっています。

支援物資の輸送を阻む泥

平野部は水に浸かり、ジュバ川にかかる橋ももう何年も前に破壊されている上に、道路は水没しになっているか、洪水が運んできた泥で埋まっています。支援物資の輸送トラック70台以上が道路に堆積した泥のせいで立ち往生しています。このあたりに洪水を避けることの出来る高台がごくわずかしかないことも、支援物資の輸送を非常に難航させています。

アラレ避難民キャンプには、葦(あし)で骨組みを組み、ユニセフから支援された防水シートをかけただけの仮住まいが、キャンプの中心を通る道に沿って並んでいます。女性と子どもは仮住まいの近くで腰を落とし、料理や洗濯、おしゃべりに時間を費やしています。

ワキタ・マハドさんと彼女の11人の子どもたちはアラレ避難民キャンプで1ヶ月間生活しています。30歳のワキタさんは最近生まれたばかりの子どもを胸に抱き、歩き始めたばかりの2人の子どもは彼女のスカートにしがみついています。他の子ども達もワキタさんの傍にぴったり寄り添っています。

増水した川が道路のすぐそばを流れており、仮住まいや避難民キャンプの狭い空間で子どもたちが出来ることはそう多くありません。遊び場も限られており、水溜りに飛び込んで泳いだりする子どももいます。ここには、乾いた土地はほとんど残っておらず、見渡す限り泥に埋め尽くされています。

不衛生な水を介して伝染する病気との闘い

ワキタさんの子どもたちは下痢に苦しんでいます。ワキタさんによれば、泥を含んだ河の水を飲み水や調理、洗濯、体を洗うための水として利用しているために、キャンプで生活する子ども達の間で下痢が流行しています。浄水剤は提供されているものの、不衛生な生活環境、トイレの不足、清潔な水が手に入らないことが原因となり、下痢などの感染症との闘いは続いています。

ユニセフ、WHO、ムスリム・エイドの3者は、避難民キャンプ内の診療所で治療を行っています。それに加えて、洪水の後はマラリアの発生・流行が懸念されることから、ユニセフは蚊帳を提供しています。訪れた仮住まいには蚊帳がありました。

16年間も内戦が続き、その上厳しい干ばつの後のひどい洪水によって人々の生活も国土も荒れ果ててしまったソマリアですが、この国にはまだこの最悪の状況から立ち直る力が残っています。しかし、激しい雨を降らせる雨雲に並んで立ち上る爆撃の煙をみると、この先ソマリアの子どもたちや人々を待ち受ける苦難はどれほどのものだろうかと考えずにはいられません。

雨を降らせないようにすることは誰にもできません。しかし、戦争を続けるか平和を取り戻すかの選択は、まだ私たち人間の手に任されているのです。

ユニセフの支援

ユニセフは、洪水の被害をうけたソマリア、エチオピア、ケニアの3カ国で緊急支援物資の提供の他、保健・栄養・水と衛生・教育・子どもの保護の分野で支援活動を行っています。ユニセフは3カ国での3ヶ月間(2006年11月〜2007年2月)までの活動資金として3,043万ドル(約36億円)の支援を国際社会に求めています。