【2016年3月14日 アンマン(ヨルダン)/ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)は本日、紛争から5年が経過するシリア危機の情勢に関する報告書を発表しました。
© UNICEF/UN013175/Al-Issa |
報告書『No Place for Children』では、シリアの子どもの3人に1人に相当する推定370万人が、5年前の紛争開始以降に生まれ、暴力や恐怖、避難による影響を受けていることが明らかになりました。その子どもたちのうち、30万6,000人以上は難民として生まれました。
紛争の影響を受けているシリアの子どもたちは、シリアの子ども人口の80%以上にあたる約840万人に上るとユニセフは推計しています。そして、シリア国内、あるいは周辺国で難民として暮らしています。
「シリアでは、暴力が日常的に蔓延しており、家庭や学校、病院、診療所、公園、遊び場、礼拝所にまで広がっています」とユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表のピーター・サラマは述べています。「700万人近くの子どもたちが貧困状態で暮らしており、子ども時代を失い、そして奪われたまま、生きているのです」
ユニセフは報告書の中で、子どもに対する重大な暴力が2015年に1,500件近く発生したことを明らかにしています。それらの暴力により、子ども400人以上が殺害され、500人近くが負傷したことが確認されていますが、その大半は、人口が集中する地域で使用された爆発物によるものです。また殺害された子どもたちのうち150人以上が、学校にいる間または登下校の際に殺害されています。
周辺国における難民の数は、2012年に比べ10倍近く増加しています。すべての難民の半数が子どもたちです。2011年の紛争勃発以来、1万5,000人以上の子どもたちが、保護者を伴わない、あるいは保護者と離れ離れの状態で、シリアの国境を越えています。
「シリア危機から5年が経過しています。紛争がさらに続くなか、数百万人の子どもたちは、おとなの争いに巻き込まれて戦いに参加し、学校に通い続けることができず、多くは労働を強いられ、また女の子は幼くして結婚しているのです」(サラマ代表)
© UNICEF/UN013170/Halldorsson |
紛争勃発から数年のうちは、軍や武装勢力に徴用される子どもたちの大半は15歳から17歳の男の子で、戦闘地域から離れたところで主に後方支援を担うために使 われていました。しかし2014年以降はあらゆる紛争当事者が、7歳の幼い子どもを含む、より低年齢の子どもたちを徴用するようになり、多くの場合、 それは保護者の同意なしに行われました。
ユニセフが確認した事例では、徴用された子どものうち、15歳未満は2014年には20パーセント未満だったのに対し、2015年には半数以上に上っています。子どもたちは、軍事訓練を受けて戦闘に参加したり、武器の運搬や点検、検問所への配置、戦闘による負傷者の治療や退避など、戦闘地域で命を脅かす危険な役割を担っています。紛争に関わる勢力は、死刑執行人や狙撃手など人を殺害する役割に、子どもたちを使用しているのです。
© UNICEF/UN013173/Saker |
紛争における最も重要な課題の一つが、子どもたちに学習機会を提供することです。シリア国内の学校への出席率は最低水準に落ち込んでいます。ユニセフの推定では、シリア国内の210万人以上の子どもたちと、周辺国の70万人の子どもたちが学校に通えていません。それに対応するため、ユニセフはパートナーとともに、子どもたちに学習の再開を支援し、さまざまな機会を提供することを目的とした「失われた世代にしないために(No Lost Generation)」イニシアティブを開始しました。
「シリアの子どもたちにとって遅すぎることはありません。子どもたちは尊厳と可能性のある人生に対して希望を持ち続けています。平和への夢を抱き、その夢を実現する可能性を持っているのです」とサラマ代表は言います。
本報告書では、重要な子ども世代を守るために重要な5つの取り組みを、国際社会に求めています。
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*アクセス困難な地域で暮らす人々:460万人(内、包囲地域内で暮らす人々は48万6,700人)
© UNICEF/UNI198148/Soulieman |
2015年だけで、ユニセフは現地および国際的な関係機関との大規模なネットワークと協力し、シリア国内および周辺国で援助を必要とする数百万人の子どもたちに支援を提供することができました。
13万9,000人以上の子どもたちに越冬支援の物資(毛布、衣類、防寒具、現金や引換券など)を提供。
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