福井県大野市
日本のまちが東ティモールの水環境を変える
〜Carrying Water Project〜
Carrying Water Projectのポスター
四方を山々に囲まれた福井県東部の大野市。霊峰白山に連なる大自然に育まれた地下水が豊かに湧き、北陸の小京都として栄えた昔から人々の暮らしと文化を支えてきました。しかし「名水のまち」もやはり人口減少の課題を抱えています。市は新しい地方創生の取り組みとして、アイデンティティである「水」に立ち返り、未来を担う「子ども」に焦点を当てた「水への恩返し〜Carrying Water Project(キャリングウォータープロジェクト)〜」をスタートさせました。「水で未来を拓くまち」がスローガン。大野の豊かな「水の恵み」を国内外へ広く発信するとともに、市民の誇りとして次世代へつなげる----- こんな想いから2016年1月、「水への恩返し財団」を設立。日本ユニセフ協会とパートナーシップを締結し、「水への恩返し」として、アジアでもっとも水環境が厳しい国、東ティモールへの支援を約束しました。2017年1月から3年間、ユニセフの現地事務所が進める水に関する事業への支援を通じ、子どもたちが清潔で安全な水へアクセスできることを目指します。自治体がこのような「地域と使途を明確にした支援」を行うのは全国初のことです。大野では今、東ティモールへの支援をアピールする活動が盛り上がっています。市内のあちこちに募金箱が設置され、東ティモール産のコーヒーを提供するカフェや飲食店がある他、自主的に売り上げの一部を寄付するお店も。市主催の「越前大野名水マラソン」では各ランナーが1キロ走る毎に10円が寄付されるユニークな取り組みが話題を呼びました。
2016年10月には副市長と市職員が東ティモールを視察。ユニセフの支援で水環境が改善したエルメラ県ポエテテ村のギギマラ集落を訪れました。
大野市の支援は水設備建設だけでなく、村人の能力開発にも活かされます
きれいな水が手に入る。そんな環境ができたことで、生活の質が良くなっただけでなく、水環境を維持していこうという意識が村民の間で育まれていました。
村には水管理委員会が設置され、村人により効果的に運用されています。「タンク係」の人は、タンクの水を配水したり、あふれないように毎日見張ったりしているのだそう。 支援を受けるだけでなく、「自分たちでシステムを守る」という気持ちで村の人々が頑張っていることが伝わってきました。
詳しくはCarrying Water Projectサイトへ
大野市が今回支援するのは「重力式給水システム」の設置事業です。これは標高の高い場所にある水源(泉や湧水)と、ふもとのコミュニティを水道管で結び、文字通り重力を利用して水を供給する仕組み。斜面が多い山岳地帯の東ティモールに適しており、費用対効果も高く二酸化炭素を排出しない環境にやさしいシステムです。
今後3年間でエルメラ県とアイナロ県の僻地の村々に合計6基を設置予定。3300人以上の子どもと周辺地域の人々が安全で持続可能な水へアクセスできるようになります。視察時に訪れた支援予定地のひとつ、ウラホー村は、水道施設が整っておらず、村民は朝夕山の上の小さな湧水まで歩いていました。今この村で、重力式給水システムの建設が始まりました。近い将来、大野市の支援で水汲みの重労働から解放されるウラホー村の子どもたちは、今よりずっと友達と遊んだり勉強したりする時間がもてるようになるでしょう。