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日本ユニセフ協会
 



東日本大震災復興支援 第223報
「まちの未来をデザイン」
未来の七郷まちづくり 宮城県仙台市から

【2014年1月28日 仙台】

© 日本ユニセフ協会
4・5年生も参加した披露会では、4つの「未来のまち」が模型で登場。

宮城県仙台市若林区は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた地域の一つですが、市立七郷小学校の周辺は、すぐそばに建つ仙台東部道路が津波をせき止め、大きな被害を免れました。そして今、学校の周辺では、沿岸部で被災した方々が新たに定住する場所の造成や地下鉄の新駅の建設など、まちの表情が大きく変わろうとしています。

そんな中、「子どもたちに『まちの未来』を考える機会を与えたい」との思いから、七郷小学校では、2012年から総合的な学習の時間を使った取り組みを実施し、日本ユニセフ協会も、その活動を応援してきました。

その活動の第2回目として、6年生152人を対象に昨年12月に実施されたのが、「未来の七郷まちづくり」をテーマとした「まちの模型づくりワークショップ」。先月1月28日には、その完成模型披露会が、保護者や地元・市の関係者を招待し開催されました。

今を知り、未来を考える

模型作りワークショップを実施する前、子どもたちは、宅地造成のためまもなく地面の下の“暗渠”(※)になってしまう用水路や、学校の目の前にある、地下鉄新駅設置などに伴う区画整理が進められている工事現場などに足を運びました。子どもたちは、普段から目にしていた光景を、改めて「まちづくり」という視点で見つめ直し、カメラにおさめ、自分たちの住んでいるふるさとを再発見したのです。

さらに子どもたちは、「まちづくり」に関する基本的な考え方を学ぶため、日本ユニセフ協会の「子どもにやさしい復興計画」支援活動アドバイザーで、住環境・まちづくり学習等の分野で活躍する山形大学の佐藤教授の授業を受けました。そこでは、「人(ユニバーサル・デザイン)」「環境(サスティナブル・デザイン)」「防災(セーフティ・デザイン)」という3つの視点を教わりました。

残したいものと変えたいもの

© 日本ユニセフ協会
2畳ほどのスペースに、未来のまちが作られた

そしていよいよ模型作り。学校周辺のまちを、 ①住宅地 ②地下鉄の新駅設置予定の住宅地 ③“イグネ”(東北地方に典型的な「田んぼに囲まれた農家の背後にある樹林」)の残る地区 ④土地区画整理地区の4つの“区”にわけ、グループに分かれて、残したいものと変えたいもの、形を変えて残したいものを考え、クラスの代表(市長)とグループの代表(区長)が全体のバランスを調整。クラス単位で、模型作りに取り組みました。

6年1組が選んだテーマは、「人と時がつながったハーモニーシティ七郷」。2組は、「緑と太陽を生かしたまち七郷」。3組は、「絆が深い美しいガーデンシティ七郷」。4組は、「おもてなしの心あふれる七郷タウン」。2畳ほどの大きさのスペースに、学校周辺のまちがデザインされてゆきます。

ソーラーパネルがついた住宅。風力、ソーラー、水力を組み合わせた発電。自動車の振動で発電するしくみ。災害時はかまどとして使えるベンチ。エアバッグにヒントを得た、クッションと空気でできたガードレール。事故が多い場所への信号機設置。ビルの屋上の市民農園。人が通ると光る歩道。景観を守るために電線を地下に埋めたまち。災害時に住民が避難できるようまちのどこからも目立つ七郷タワー。震災の経験や日常の生活の中から考えられたアイディアが、模型に表現されました。「地震の時、明かりが無くなったまちから見上げた星空がとてもきれいだった」と、星空が見える場所をまちの中につくったクラスもありました。

今回、ワークショップに参加したのは6年生だけでしたが、披露会には4年生や5年生も参加。「風力発電がありますが、騒音被害は出ませんか?そんなに風が吹きますか?」「ソーラーパネルが北側についていますが南側の方がいいのではないですか?」「この地区には何人くらいが住みますか?」「この市場にはどんな野菜が売られますか?」「この地区はあまり家がないですがどうしてですか?」など、鋭い質問が出されていました。

「視点」を学ぶ

披露会には、実際に七郷小学校周辺のまちづくりを進めている仙台市荒井東土地区画整理組合の方々も出席。「みなさんが未来の七郷について一生懸命考えていて感心しました。今日みなさんからたくさんのアイディアを教えていただいたので、私たちも今一生懸命まちづくりを考えていきます。まちづくりには、おもしろいアイディアだけでなく、その実現にどのくらいのお金がかかるかということも考えなくてはなりません。これからぜひそういう視点でも、未来のまちを考えてみてください。」と話されました。

「佐藤先生のお話はちょっと難しかったけれど、いろいろ勉強しながら未来のまちを考えた」「一つのものをみんなで協力して作れたことが、大変だったけど楽しかった」。今回ワークショップに参加した子どもたちからは、こんな声が聞かれました。日本ユニセフ協会では、七郷小学校での取り組みをはじめ、岩手、宮城、福島各県で、震災復興に向けたまちづくりに子どもたちの声が反映される機会、そして、そのプロセスの中で、子どもたち自身が、自らと地域の未来を考える「視点」や「考え方」を学べる機会づくりを応援しています。

(※) 暗渠(あんきょ) -- 地中に埋設された河川や水路のこと。反対に、地上部に造られ、蓋掛け(ふたかけ)などされていない状態の水路を開渠(かいきょ)といいます

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