1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。
18歳未満の児童(子ども)を権利をもつ主体と位置づけ、おとなと同様にひとりの人間としての人権を認めています。また同時に、おとなへと成長する過程において、子どもには年齢に応じた保護や配慮が必要な面もあるため、子どもならではの権利も定めています。
子どもの権利を包括的に明示したこの条約は前文と本文54条からなり、子どもの生存・発達・保護・参加などに関わるさまざまな権利を具体的に定めています。
「子どもの権利条約」4つの原則
子どもの権利を尊重し実践していく上では、常に忘れてはならない「子どもの権利条約」の4つの原則があります。
この4つの原則は、それぞれ条文に書かれた権利であると同時に、条約で定められているあらゆる権利を考える際に、常に合わせて考えることが大切です。
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生命、生存および発達に対する権利
(命を守られ成長できること)すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障される。
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子どもの意見の尊重
(意見を表明し参加できること)子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、おとなはその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮する。
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子どもの最善の利益
(子どもにとって最もよいこと)子どもに関することが決められ、行われる時は、「その子どもにとって最もよいことは何であるか」を第一に考える。
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差別の禁止(差別のないこと)
すべての子どもは、子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などいかなる理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障される。
そもそも人権って? ~権利の“ABCDE”~
「子どもの権利条約」では、18歳未満の子どものもつ権利を定めていますが、18歳をこえると、権利が守られなくなるわけではありません。 人はみな生まれながらに基本的人権をもっています。子どもの権利を考えるとき、普遍的な権利の本質を忘れないことも大切です。
Rights are for ALL human beings: | すべての人が権利をもっています |
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Rights are there at BIRTH : | みな生まれながらに権利をもっています |
Rights CANNOT be taken away : | 権利を奪いとることはできません |
Rights DO NOT have to be earnt : | 権利は無条件にあるものです |
All rights are EQUALLY important : | すべての権利が同じように大切です |
子どもの権利が守られる社会
日本政府は「子どもの権利条約」を 1994 年に批准しました。国が条約を批准することは大きな第一歩です。しかし、批准しただけでは子どもの権利は守られるようにはなりません。 この条約は子どもの権利を包括的に記すだけでなく、国や社会に子どもの権利を守るどのような義務があるかを明示し、その責任も定めています。司法や行政だけでなく、先生方や保護者など、子どもに関わるすべての人が、条約に記された権利が実現されるように取り組むことが求められています。 また、子どもたち自身が自らのもつ権利について知り、権利を尊重する態度を育むことも大切です。
「子どもの権利条約」の原則が守られ、子どももおとなも互いに尊重しあえる環境の中で、子どもたちが安心して日々を過ごしながら、健やかに成長し、その可能性や能力を十分に伸ばすことのできる社会。それがユニセフの提唱する「子どもの権利が守られる社会」の姿です。
人権のアーチ
子どもだからこそ必要な土台
「権利の保有者」と「義務の担い手」の
均衡と支えあいで人権が実現する
アーチは、古くはヨーロッパの水道橋や鉄道橋の建築に使われ、また建物も支えることができる強固な建造物です。しかし、左右が均衡を保ち互いに支えあっていないと、崩れてしまい機能しません。このアーチの構造のように、人権の実現のためには「権利の保有者」と「義務の担い手」の間の尊重と支えあいが欠かせません。「人権のアーチ」は、この相互の均衡と尊重の上に人権が実現されていくことを、一つのモデルとして表しています。子どもの権利を考えるとき、子どもたちは「権利の保有者」であり、国や社会、そして子どもに関わるおとなたちが「義務の担い手」となります。国やおとなが「子どもの権利」を守り、子どもたちが自らの権利を享受できる社会、そして、おとなも子どももともに尊重しあえる社会を、このアーチは描いています。
成長途上にあり、おとなに比べ弱い立場にある子どもたち。「人権のアーチ」に加えて、子どもの権利を実現するためには欠かすことのできない、「子どもの権利条約」のいくつかの条項があります。右の図に描かれている台の上の子どもたちがしっかりと立っていられること、つまり、子どもの命が守られ、健やかに成長できるためには、子どもたちを支える土台がしっかりしていなければなりません。