インドのくつ工場 〜働く子どもたち〜

くつをつくる子どもたち。

コルカタ(カルカッタ)から車でだいたい40分くらい走ったところにある村々に、たくさんの子どもたちが働く、くつ工場がいくつもあります。工場の見た目はふつうの家です。でも、道路から見えないようにくふうされているところで、朝からばんまで、彼らはくつ、それも、自分たちと同じくらいの年の子のためのくつを作り続けています。

工場の中はとても暗く、空気はこもっていてむしむししています。中にいるだけで、全身汗びっしょりです。水をたくさん飲まないと、たおれてしまいそう!くつを作る材料の皮や、いろんな薬から出るにおいが立ちこめていて、私ははじめて行ったときに5分で頭がいたくなってしまいました。くさった卵のような、とっても気持ちの悪いにおいでした。少しだけ、あせのにおいも感じることができました。工場の中はとてもうるさいです。インドの車はしょっちゅうクラクションを鳴らしますが、道路から聞こえるその音とミシンの音、ハンマーのキーンキーンっていう音がごちゃ混ぜになっています。頭がいたいのにそれにくわえてこのそう音ですから、体全体がだるくなります。

休むひまなく作業をしています。

インドの子どもたちはカメラが大好き!私が写真をとろうとすると、街の子も村の子も、ヒンドゥー教の子もイスラム教の子も、みんなみんなカメラにうつりたがります。そして、とびっきりの笑顔をむけてくれるのです。でも、くつ工場で働く子たちは違いました。カメラを向けても、いっしゅんだけチラリとこちらを見て、またすぐに手を動かします。笑おうともしません。後で知ったのですが、もしも作るくつの数が少ないと、彼らのお給料が少なくなってしまうのだそうです。もっとひどい場合、工場のおとなにぶたれてしまいます。つまり、手を休めてるひまなどないのです。

工場で子どもたちと話しました。でも、働く時間をうばってしまうので、1人につき2つほどしか質問できませんでした。しかも、こうした工場で子どもたちから本当のことを聞き出すのはとてもむずかしいことなのです。工場長やおとなたちがいる目の前で、だれが本当のことなど言えるでしょうか?

くつ工場のたてもの。普通の家みたいで、まさかここが工場で、子どもが働いてるとは思えないですよね。

たとえば、何人かの子どもに「トマ・ボヤッシュ・コト?(年はいくつ?)」と聞いてみました。ベンガル語です。そうすると、みんな「チョド(14)」とか「パナロ(15)」と答えるのです。どう見ても、10さいそこそこにしか見えない子までがそう言うのです!こういう工場でずっと働いているから、体がきちんと育たなくて、じっさいのねんれいよりもひくく見えるということはじゅうぶんに考えられます。でも、みんながみんな14とか15と答えるのは、少しおかしいと思いませんか?インドのほうりつは、14さいみまんの子どもが働くことをきんししています。「14さいみまん」ということは、14さいよりも年が上であれば、働いてもだいじょうぶ、ということになりますね。子どもをやとっていることがばれたら、工場は大変なことになってしまいます。それをおそれている工場長が、「外からだれかが来るときは、かならず14さい、15さいと答えなさい」と、うらで子どもたちに言っているのでしょうか。

工場のゴミが山になっています。

年れいだけではありません。お給料や、働く時間など、どれも本当なのかうたがいたくなってしまうような答えばかりでした。働く時間は、シーズンによって変わります。これはいっぱんてきに言われていることですが、1日8時間から多いときで14、15時間ほど、子どもたちは働いているそうです。工場に入ってから一人前になるまでの間、2、3年ほどのトレーニング期間があります。こうした工場から助けられた子どもたちはみんな、トレーニング期間中はお給料をもらえなかったと言っています。しかし、私がじっさいに出会った子どもたちは、どこの工場の子も、トレーニング期間中はお金をもらえていた、と言っていました。これも、言わされているのでしょうか。

トレーニング期間を終えたある少年は、今の自分のお給料を「月に200ルピー(約516円)」と答えていました。インドのコカコーラは1缶15ルピーですから、コーラ8本分が1月のお給料という計算になりますね。

決して終わることのないくつの山。それらに囲まれて、彼らはいったい何を考えながら、同じような作業をずっとしているのでしょうか?毎日毎日おんなじことのくりかえし。

 

工場主の家の部屋のようす。テレビもあります。

隣の建物では、工場長が昼間からゴロゴロしてテレビを見ているのに、工場長の息子たちは学校に行って、ちゃんと遊ぶ時間もあるのに、働く子どもたちは、それを横目に、なにを思っているのでしょうか?くつを作る以外の世界を知らないんですよ。そんな子どもたちに、「しょうらいのゆめは何?」なんて、そんな質問できないですよね。だって、ゆめっていう言葉すら知らないような子たちなんですもの。

現在、インド国内だけで10万人の子どもたちが、このようにくつ工場で働いているといわれています。みんなの住んでいるちいきには、どれだけの人が住んでいますか?10万人って、どれくらいの数なのでしょうか。

子ども時代から働いた人がおとなになったときにどうなるのか。おとなになると、くつ工場でもえらい立場になれます。そうすると、今度はそういう人たちが、新たに子どもを働かせるようになります。自分が働いていたから、しかもまわりの子も働いていたから、子どもが働くことは当たり前だと思ってしまうのです。こうして、児童労働は続いていきます。

こうして働く子どもたちも、ほとんどはかつて学校に行っていたようです。でも、2年生とか3年生でやめてしまいます。インドでは5さいが1年生ですから、日本でいうと、小学校の1、2年生の年れいになります。なぜそのときは学校に行っていたのに今は働いているかというと、理由はたくさんあります。まず第一に、そのくらいの年れいだと小さすぎて働けないこと。第二に、学校に通いはじめても、とちゅうで学校に行く意味がないと思ってしまうこと(インドの、特にいなかの学校では、先生1人につき生徒が60人であることもめずらしいことではありません。そんな中で学校に行ったところで、何を学べるというのでしょうか・・・)。そして第三に、お父さんやお母さんが死んでしまって、子どもが働かなくては家族みんなが困ってしまうこと。

くつやさんに行ったときに、たまたま、私が工場で売られているのと同じくつが売られているのを見ました。それを買おうとしている子どもたちのうれしそうな顔…。みんな同じ子どもなのに、どうしてこんなことになってしまうのでしょうか?私はワケが分からなくなってしまいました。くつのねだんを聞いて、もっとびっくりしました。35ルピー。コーラ2缶分、たったそれだけです。

子どもたちは文句を言わないからあつかいやすいし、おとなみたいにたくさんのお金をはらうひつようはありません。だから、工場長は子どもを働かせようとするのです。

みなさんは、どう思いましたか?ちょっと長かったけど、こうして最後まで読んでくれたあなたのような人なら、きっとこういう子どもたちのために何かできると思います。これから、もっと多くのインドの人々の生活について、子どもネットのみなさんに知らせていこうと思います。

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