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公益財団法人日本ユニセフ協会

ユニセフ『子どもたちのための人道支援報告書−2015年』発表
71カ国の緊急人道支援に、史上最多の31億米ドルを要請
2014年、日本は緊急人道支援を支えた主要ドナー国

【2015年1月29日 ジュネーブ発】

ユニセフは本日、『子どもたちのための人道支援報告書−2015年(原題:Humanitarian Action for Children 2015)』 を発表。そのなかで、国際社会に31億米ドル(約3,642億円※)の資金を要請しました。この資金は、自然災害や紛争、急速な伝染病の流行、その他の危機に晒されている世界71カ国の9,800万人(うち、およそ3分の2を占める6,200万人が子ども)への支援に用いられ、緊急人道支援要請額としては過去最大となります。※1米ドル=117.5円で換算、以下同

31億米ドルの資金を要請

本報告書ではまた、2014年、日本がユニセフの緊急人道支援に大きく貢献したことが明らかになりました。(官民合計:計1億1,798万8,911米ドル/約139億円※) 

ユニセフ緊急支援本部 部長のアフシャン・カーンは「子どもたちは、新世代の人道危機に直面しています。たとえ報道で目にすることなくとも、社会崩壊や気候変動、病気の蔓延が引き金となって生じる緊急事態が、これまでにない形で子どもたちに忍び寄っています」と述べています。

エボラ出血熱で孤児となった子どもたち。(シエラレオネ)
© UNICEF/PFPG2014-1167/Bindra
エボラ出血熱で孤児となった子どもたち。(シエラレオネ)

激化し複雑化する紛争、自然災害、エボラ出血熱の流行などの緊急事態に直面している子どもの数は、増え続けています。これらの子どもたちは、暴力、飢餓、病気、虐待の危険に晒されており、さらなる支援を必要としています。

世界では2億3,000万人、つまり、子ども10人にひとり以上が、武力紛争の影響を受けている国や地域で暮らしています。

すべての子どもたちへ明るい未来を

「4年間も続く危機下にあるシリアでは、子どもたちは日常的に暴力的行為や死を目撃しています。人生における基本的なものや機会さえも、手にすることができていないのです。この支援要請は、シリアだけでなく、人道危機下にいる世界中のすべての子どもに、明るい未来をもたらすことは確実です。生まれたところや生活する場所によって、子どもの運命が決められるべきではありません。わたしたちは、子どもたちが今切実に必要としている、命を守るための支援やケアを提供しなければなりません」(緊急支援本部 カーン部長)

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2015年の人道支援計画

避難所の学校に登校する、シリア難民の子どもたち。(ヨルダン)
© UNICEF/NYHQ2013-1390/Noorani
避難所の学校に登校する、シリア難民の子どもたち。(ヨルダン)

『子どもたちのための人道支援報告書−2015年(原題:Humanitarian Action for Children 2015)』は、人道危機下にある子どもたちが日々直面する困難と子どもたちが健やかに育つために必要な支援、また最も厳しい環境下であっても可能となる支援の成果に焦点を絞っています。

  • 支援対象:(アルファベット順)
    アフガニスタン、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、コロンビア、ジブチ、北朝鮮、コンゴ民主共和国、エボラ流行国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、エリトリア、エチオピア、ハイチ、イラク国内避難民、ケニア、マラウイ、マリ、ミャンマー、ニジェール、ナイジェリア、フィリピン、ソマリア、南スーダン、パレスチナ、スーダン、シリア、シリア周辺国(エジプト、イラク、ヨルダン、レバノン、トルコ)に避難しているシリア難民、ウガンダ、ウクライナ、イエメンほか、各ユニセフ地域事務所の管轄国、計71カ国
  • 必要額上位国
    シリア周辺国の難民(6億2,426米ドル)、エボラ出血熱(5億743万米ドル)、イラク国内避難民(3億1,951万米ドル)、シリア(2億7,920万米ドル)、南スーダン(1億6,562万米ドル)、スーダン(1億1,692万米ドル)、ソマリア(1億1,170万米ドル)
  • 分野別の資金使用用途
    水と衛生21%、栄養14%、教育20%、保健18%、子どもの保護9%、その他(18%)
  • 危機下の子どもたち
    子どもやその家族に影響を及ぼしている主な人道危機は、下記のとおりです。
  • シリア及びシリア周辺地域の難民:
    支援要請額のうち、全体の約30%(9億347万米ドル)と最も多い割合を占める。危機に直面している子どもの保護や予防接種、水と衛生などの命を守る支援、そして教育支援などを実施している。
  • エボラ出血熱:
    エボラ出血熱流行国では、コミュニティを中心とした支援を強化している。支援要請額5億米ドルは、エボラ感染者の迅速な隔離や治療ケア、将来的な流行防止対策のため。2015年は感染例をゼロにすることを目標としており、エボラ流行により打撃を被った基本的な社会サービスの再建に向けて支援を実施する。
  • ナイジェリア:
    2014年の武装グループによる襲撃の激化により、100万人以上が北東部から避難している。ユニセフは、2,650万米ドルの緊急人道支援資金を要請。
  • ウクライナ:
    武力衝突発生から1年が経過するなか、戦闘の影響下にある地域で暮らす人は520万人に達し、国内で避難する人は60万人、影響をうけている子どもたちは約170万人にのぼる。この人道危機への対応として、ユニセフは3,245万米ドルの資金を要請。
避難所で、幼い男の子にすぐ口にできる栄養治療食を食べさせてあげる少年。(南スーダン)
© UNICEF/NYHQ2014-0887/Peru
避難所で、幼い男の子にすぐ口にできる栄養治療食を食べさせてあげる少年。(南スーダン)

また、アフガニスタンやパレスチナ、ニジェールでは、人道支援に必要な額に対し、資金が大幅に不足しています。2014年、活動に必要な資金に対する不足分は、アフガニスタンで65%、パレスチナで67%、ニジェールで65%に及びました。2015年の資金要請はこれらの国に対する資金要請も含まれています。

本報告書による支援要請で調達される資金で、ユニセフとパートナー団体は、喫急の人道危機に対応する支援活動を実施するだけではなく、国の事前対応システムの強化やコミュニティや子どもたちのレジリエンス(回復力)の育成によって、コミュニティに今後起こりうる紛争や自然災害への対応力を強化する支援活動を行います。

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2014年の実績 

2014年、ユニセフは世界中から寄せられた活動資金をもとに、緊急人道支援を実施。栄養、保健、水と衛生、子どもの保護、教育の分野で何百万人もの子どもたちに人道支援を届けることができました。1,600万人の子どもにはしかの予防接種を、180万人の栄養不良の子どもに治療ケアを、200万人近くの子どもたちに心のケアを、1,300万人に安全な水へのアクセスを、そして200万人に教育の機会を提供しました。

2014年、日本は主要ドナー(民間としては世界一)

イラクに届けられたユニセフの支援物資の前で笑顔を見せる男の子。(イラク)
© UNICEF/NYHQ2014-0819/Khuzaie
イラクに届けられたユニセフの支援物資の前で笑顔を見せる男の子。(イラク)

ユニセフの収入のうち、使途分野が特定される「その他の予算」は、5つの重点分野(子どもの生存と発達、基礎教育とジェンダー格差の是正、HIV/エイズと子ども、子どもの保護、子どもの権利のための政策提言とパートナーシップ)と緊急人道支援の分野から構成されます。本報告書では、2014年に各国政府・民間から緊急人道支援の分野に使途を向けて支援された任意拠出額の実績が公開されました。政府/組織間協力からの人道支援基金では、日本政府が9,944万米ドルを拠出、民間部門では日本ユニセフ協会を通じた日本の民間の皆さまからの緊急募金が1,854万米ドル*と最大でした。官民あわせて、日本が大きな貢献(計1億1,798万米ドル)をしたことが明らかになりました。

*エボラ出血熱、パレスチナ、南スーダン、中央アフリカ共和国、ハイチ、シリア、フィリピンに対する緊急募金からの拠出額合計

<政府/機関間協力 主要ドナー5位>
1. 米国政府 3億4,107万米ドル
2. OCHA 2億0,048万米ドル
3. 英国政府 1億6,520万米ドル
4. EU 1億2,224万米ドル
5. 日本政府 9,944万米ドル
<民間部門 主要ドナー5位>
1. 日本ユニセフ協会 1,854万米ドル*
2. 英国ユニセフ協会 1,563万米ドル
3. 独国ユニセフ協会 1,423万米ドル
4. 米国ユニセフ協会 1,251万米ドル
5. スペイン・ユニセフ協会 1,026万米ドル

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【参考】
武力衝突に関わる関係者に対し、子どもたちを暴力行為から守ることを求めた、ユニセフによる声明

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